容姿・経歴・その他メモ

ボサボサの髪に汚れた靴としわだらけの服を着ている小柄の少年。
肌は少し荒れている。噛み痕とはがれた痕がついた色の悪い深爪で、指先は皮膚が剥がれて肉が露出しており、爪溝あたりは噛んだ痕と深爪による出血の痕が見られる。

名前があったような気がする。でも、いらないから捨てた。ただ、強くなるために。
誰もが疑わしいから、誰でも殺せるようにならなきゃ―――。
誰も、信じられない。

　10にも満たないという幼い年齢にしてマスターエージェントになり、その中でも旧きマスターレイスとして都築に指名された少年。一見すれば、身だしなみに興味はなく、おどおどして自信が無さげ、しかし従順ないい子というFHではせいぜい捨て駒あたりに命じられそうな、弱弱しそうな子供。

　父親は分からず、母親は幼かった彼を懸命に愛そうとしたが、生まれの原因から結局憎しみしか生まれず、虐待にまで発展、最終的には近隣住民の通報によって母親と離れることとなった。虐待されている時、彼自身は自分が悪い子だからこのようになっていると思い、ひたすらいい子であろうと努力し続けた。後に孤児院に預けられることになるがそこはFHのフロントであり、精神的ショックを受け続けたこともあって幼くして覚醒した彼は即座にFHチルドレンとして、社会から隔離されることになった。

　FHチルドレンになった後、止まない虐待や過酷な訓練によって性格が豹変、このような目にあうのは自分が悪い子だからではなく、世界が残酷であり、自分が弱いからだと悟った。その結果、力を貪欲なまでに求め続けるようになる。強くなれそうであれば実験に自ら志願した。訓練成績は常にトップをキープできるようにした。休みなど一切取らなかった。任務ではだれでも殺した。
　そうした生活を続けているうちに、彼に残ったのは剣の名前、大量の同族を殺害したという過去、そしてマスターレイスの称号だけだった。

　外から見た性格は良い子そのもの。困っている人を助け、人の言う事はよく聞く素直な子。その一方で極度の人間不信、世界に対しても不信感を持つ。己以外のいない静かな世界を夢見ており、自身の邪魔や加害をしようとするものはたとえFH内の人間でも容赦なく、そして惨く殺害をしてきた。無論、咎める者もいるが、そういった人間には任務で高いパフォーマンスを出すことで有用性を証明し、黙認させてきた。

　いい子という性格のルーツは、親に虐待をされているのは自分が悪い子だから、という罪の意識から。もうその気持ちはなく今は都合いいからその性格を演じているだけである。強烈なストレスがかかると爪や指をむしるクセがあり、たまにナイフなどを使って爪を薄く剥ぐこともある。

都築からオールドレイスに指名された理由は、彼の異常とも言える世界と人に対する不信感と敵意、そこから来る静寂に対する凄まじい欲望、10にも満たない年齢でありながら、マスターエージェントとほぼ同格の強さがあったことから。人間であるにも関わらず、人と世界を強く拒み、内心は孤独だとしても他者に対し負の絆でつながり、ジャームにならず藻掻く彼の生き方を都築は興味深そうに観察していたそうな。

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