「アルカニア・グラセオール。長いから、”アルク”とでも呼んでくれたまえよ。気に入らなければ他の呼び方でも構わない。名前というのは、単に個体を識別するための記号に過ぎないからね。」

「今の私は、彼の、UGNの一協力者に過ぎない。君もUGNの一員ならば、私を好きなように使ってもらって構わないよ？私を構成するのは、この”好奇心”……世界という未知、人間という縹渺に対する飽くなき探究心だけだ。それを損なわない限り、私は君の望む限りを尽くすと約束しよう。」

「いやはや、彼も中々強情というか、意固地というか……やれやれ、まぁ、連れ出してくれた借りもある。少しばかりの横暴は許容するさ。それに、彼の手腕には瞠目するものがある。友人の好だ……一肌脱ぐのも吝かではない、ということさ。」

半ばから青く染めた銀髪と吸い込まれそうな蒼い目を持った、背の高い女性。

女性の過去に探りを入れようなんて、迂拙だとは思わないかい？

「何を研究しているのかって？それはまあ……色々さ。人類、動物、レネゲイドウィルス、考古学……私の興味を惹くものは、この世界には山ほどもある。」

「ふむ、もうこんな時間か。私は本来眠る必要も無いが、眠ることで分かることもある。記憶の整理や疲労の回復、そういった利点もあるが……模倣からくる理解も、勿論存在することだしね。」

「君の意見は素晴らしい物だが、賛同はし兼ねるね。理論の欠陥、正当性の欠如、理由はいくらでも羅列出来るが───端的に換言するなら、”私の趣味では無い”。」