恩義に対しては彼なりの誠意を持って返す。
ただし根本が人間不信であるため、常に裏切られる・裏切られたという認知を持っており、あらゆる全てを憎悪している。
そのため明確に好意や善意を表すことはほとんどなく、ある種偽悪的な態度を取り続けるめんどくさいおじさん。
もちろん害意のある行動や不遜な態度が全て偽装というわけではなく、普通に性格が悪いので素でやってるだけのときもある。

自分を大きく見せようとするタイプの虚言癖がある。
自己顕示欲からでもあるし、人間不信による虚栄心からでもある。
会話の内容がどうでもよくてでまかせ言ってるだけのときもある。

中華圏の権力者の出自。本来の名は｜庫石金冬師《クーシーキントンシィ》。
20近くまで中華圏にいたため中国語が話せるが、表には出さない。

彼の属していた庫石金一族は非道な人体実験を繰り返していた家系。冬師も実験を受けてきた。
オッドアイはそのときの影響で魔眼は関係がない。
春暁という親戚がおり、家柄で言えば冬師の一族のほうが格上であったが、研究者としてはあちらが上。

過酷な実験は、春暁の｜覚醒《ぼうそう》で終わりを告げる。
ひとりのオーヴァードの覚醒に呼応するように、次々と覚醒する実験体たち。冬師もこの中のひとりである。
湧き上がる憎悪。ああ、憎い。全てが憎い。
己に実験を施す｜研究者《おや》が、同じように耐えるしかなかった｜実験体《かぞく》が、｜目の前に映るすべて《おまえ》が憎い！
己を突き動かしたのは、その感情だったような気がする。

——気づけば、冬師は親戚だという男に連れられていた。
それまでの経緯はよく覚えていない。資産家の家に生まれて、事故に巻き込まれて、……？
記憶がない、と自覚はある。だがそれだけだ。
男は、ゆっくり思い出せばいいと言った。金ならある。きみを養ってあげよう。そんなことも言っていたか。
こうして知らぬ間に、庫石金冬師は倉敷冬師になったのだ。

雛守幸知に対しては彼なりに信頼の心はあった。だからこそ己の手で屠ろうとしたのだろう。
子供たちに対しても、何も思わないわけではない。

くだらない。サンタを信じるガキも、信じないガキも。貰えるモンならもらっておけばいいだろうが。
……少しだけ、孤児院の子供たちを思い出した。感傷とは違う。ただただ思い出しただけ。ただ、それだけだ。
もしかしたら、孤児院の跡地かその近くに何か供えられたかもしれない。