あなたはこの春から毘売島高校に編入してくる1年生だ。
しかし元々はこの島を管理する家の子息だった。10年前に島を襲った大津波の影響で、あなたは家族を失った。
他の親戚が全員本島暮らしだったため、叔父叔母家族に引き取られる形で島を離れることになった。

本島へ移住した後、
ウズガミの遣いと言った自分自身の影に追われ、殺されかける悪夢を見るようになっていた。

ウズガミ様そのものによる影響なのか、家族を失った心の傷がこの悪夢を引き起こしているのかはわからないが、
神奈が歳を重ねるにつれ、悪夢を見る頻度は高くなっていった。

とある日、まだ眠りについていないのに、悪夢と出会った。
眼前に現れた自分そっくりの影は神奈へ襲いかかり、家も飛び出し街中を逃げ惑った。

ついに追い詰められると、影は巨大な波の塊となり、神奈を飲み込んでしまった。
これは現実なのか、悪夢の最中なのか。

途切れそうになる意識の中、波に飲み込まれる感覚によって、
考えないようにしていた10年前のあの日のことが無理やり思い出されていた。

あのとき確実に荒波へと放り出されたはずなのに、なぜ僕だけが助かったのだろう。
『ウズガミ様によって生かされた』とは何なのか。
僕が島では特殊な家系だったことに関係あるのか。
あの日はぐれてしまったお父さんとお母さんに会えたら、全てわかるのだろうか。

知りたい。何故僕だけが生きて、辛く苦しまなければならないのか。
この悪夢を今すぐ消し去って、あの島へと戻る必要がある！

そう渇望すると、左手の甲が痛み、みるみる十字の文様が浮かび上がり、光った。
飲み込まれた影の中で右手を天に掲げると、凍てつく霜の球体が出現し、神奈を包んだ。
神奈を運ぶゆりかごのようにふわりと浮かび、影の波から抜け出す。

もう一度左手を掲げると、再び霜の球体は影をすべて飲み込むように包みこみ、
神奈の合図に合わせて一気に収斂して影は消え失せてしまった。

この出来事をきっかけとして、毘売島とウズガミ様の謎、両親の死の謎を追うため、
毘売島へと舞い戻ることを決意した。

★シナリオロイス：「“ウズガミ”」　P:執着　N：敵愾心、不快感、猜疑心
10年前、あなたとその家族は島を襲った大津波に巻き込まれた。
荒れる海に放り出され、死の淵に立った時、あなたの身体は強い力に引き上げられたことを覚えている。
しかし奇妙なことに、無傷で生き残ったのはあなただけだった。
両親を失ったあなたは、本島に住む叔父叔母家族に引き取られることになった。

そして島を離れる前日の夜、あなたは見てしまう。夜の闇に紛れて、明かりのない両親の仏壇の前で佇む存在。
ゆっくりとあなたの方に向き直ったそれは、自分と全く同じ見た目をした自分自身であった。
その存在は自身のことを『我はウズガミの遣いだ』と言った。
ウズガミとは、毘売島に伝わる島の守り神だと聞いたことがあった。

『このものたちの命は、ウズガミへと捧げられた。ただ一つ、逃れた命があったようだ。』

あなたはその闇の中に、怪しく光る二つの赤い瞳を見た。あなたは直感的に死を感じ、後ずさる。
その姿を見たかの存在は、あなたを嘲笑った。

『滑稽だな。気に入った。お前は生かしてやる。ウズガミの慈悲だ。しかし、努努忘れるな。
　お前の家族の命はウズガミへの献上品となった。しかし、お前のその命もまた、ウズガミによって生かされたのだ。
　恐れて、呪って、怯えながらこの島を出ていくといい。それがお前に与えられた役割だ』

その言葉を最後に、その存在は闇に溶けて消えた。

――あなたが島を出てから10年。あなたは高校生になった。
　　そして桜舞う春、毘売島へ向かうフェリーに乗り込んだ。

※あなたはオーヴァードとして覚醒している。
　しかしそれは島を出てから、あるいは覚醒こそ上記のタイミングでしていたかもしれないが、
　力を自覚したのは島を離れてからだった。
　その能力の発現と合わせて、体の一部に小さな十字の痣が浮かび上がった。

※この力を使えば、あの島の謎、両親の死の謎、
　そしてあの自分と瓜二つの存在の行方を掴むことができるかもしれないと考えている。
　対ジャーム、オーヴァードとの戦闘経験は無いが、この力を理解し操ることができる。