上記は彼が意識的に『そういう性格』を演じた結果の表面上の彼であり、本来は自罰的で臆病な性格で、『自分は楽しく生きる資格がない（そう生きてはいけない）』『自分は責任を持って良い人生を送って行かなければならない』という背反した二つの観念に苛まれている。そして、いずれにしても本来の自分は曝け出してはいけないという強迫観念に似たものを抱いており、故に『なんら特別ではない鶯巣 晴』を作り出し、周りにそういう人間であるように見せている。
　その内面は、家族や気の知れた友人、仲間にさえ見せることはない。
　昔は演じずとも感情豊かで元気な少年だったのだが、『事故』の全ては自分に責任があると考えた事から内面ががらっと変わってしまい、ありのままの自分や素直な喜怒哀楽を上手に他人に見せることが出来なくなってしまった。
　加えて、自分よりもよっぽど辛い経験をしてきた人たちが多い中で自分がずっと立ち止まっていることに対し、焦燥感と劣等感を抱えている。
　図星を突かれた時、状況が悪い時など、笑えない時ほど笑って誤魔化す癖がある。

　同じ年、同じ日に同じ病院で生まれた幼馴染。家もお隣さんであり、ずっと一緒に育ってきた少女。
　家族ぐるみの付き合いでお隣さんだったので遠出もしょっちゅうしていたし、学校も同じで、習い事も同じ。周りからは「付き合ってるの？」のような話が出ていたが、二人の関係はそういうものではなく、いわば片割れのような……どちらが欠けることも考えられないような関係だった。
　が、13歳のある日。いつものように行ったハイキングの先で、躓きよろけた晴が春とぶつかり落下防止柵に激突。老朽化と二人分の体重に耐えられなかった柵が壊れてそのまま崖下に落下し、春は晴の下敷きになった事で致命傷に近い怪我を、晴自身も重傷を負った。
　自分のせいで春が死ぬかも知れないという責任感とどうにかして助けたいという渇望からオーヴァードに覚醒するも、春は結局命を落としてしまった。
　生と死の境目を行き来しながら、春が晴に（晴の気を紛らわせるように、自分はきっと生きるよ、という意味で）放った「晴って『桜の主』好きじゃん」「いつか二人でさ、花見をしようね」という言葉は、今も晴の中でずっと残っている。

　昔から興味を持っていたものであり、春との約束の樹でもある。『桜の主』を咲かせ、春を改めて弔う事が今の晴にとっての大きな目標である。
　といっても、公園の樹であるため好き勝手することは出来ず、観察して状態を確認したりだとか、後は勉強の一環として大学を通して少し樹に触らせてもらうとか、その程度なのだが。
　やろうと思えば《成長促進》を使うことも出来なくは無いのだが、『桜の主』に負担がかかる可能性も踏まえて実行には移していない。
　春との約束と弔いの事は皆には内緒にしている。

　13歳の時、野中家と共にハイキングに出かけた際に自分の不注意で野中春と共に崖下に落下し遭難。重傷を負った春を救いたいという渇望から覚醒した。
　人を救いうるソラリスシンドロームに覚醒しながらも春を救う手段は得られず、ほぼ致命傷であったために結局彼女はそのまま亡くなってしまった。
　春が亡くなってから発見されるまで約一週間、ほぼ飲まず食わずで彼女を背負って山中を徘徊し、最終的に『誰かに見つけてほしい』という思いから無意識に展開したワーディングがきっかけでUGNのエージェントに発見された。
　自分の因子を春に埋め込み、ソラリスの能力を用いて遺体に保護を施していた事で、彼女の遺体はほぼ亡くなった時そのままだったと言う。

　自身は攻撃を行わず、他人を支援し戦況を有利に運ばせる戦法を取る。
　元々シンドロームの傾向に反して『物質を内面から破壊する』『毒物を散布する』『夢を混ぜて取り出した恐怖を相手に植え付ける』などの攻撃性の高い能力を持っていたが、晴の強い願望と血のにじむような努力により支援方向へとシフトした。ただしどれだけ努力を重ねても「他人を治癒する」能力は開花せず、それについては今も特訓、研究中。

　具体的な支援方法としては、自身のレネゲイドとソラリス能力によって生成した活性化物質をハヌマーンの力で伝播、増幅させることによって味方を強化したり、領域を直接操作することで他者の攻撃に干渉したり……など。自身の本来の能力から無理やり捻じ曲げて得た戦法であるが故に、複雑な使い方は出来ない模様。

　FHやその他敵対存在と因縁のない彼はイリーガルとして活動する意味は特にないのだが、自罰的な性格から『その力を持って善を助ける』事を贖罪のひとつとしている。理由を聞かれると、「なんとなく？」だとか、「んー。ヒーローとか男子のあこがれじゃん？ だからかなあ」とかそう言う答えが返って来る。

挨拶：「鶯巣 晴。この苗字、書きにくいよね。わかる」
会話１：「贈り物の事とか、気分転換になるような場所とかなら聞いてくれたら力になれると思うよ」
会話２：「好きな花？ う～ん、どれも大体好きだけど……あ、サンカヨウとかきれいだよ。水に触れると透明になるんだ」
会話３：「なんで『桜の主』をそんなに気に掛けてるのか、かぁ。馴染み深いし、たくさん話を聞いてきたし……あとは夢で結構咲いてるのを見るからさ。いつか実際にこの目で見てみたいんだ。まぁ、どうしたらいいのかは絶賛考え中なんだけどね。はは……」

好きな事（物）：「自然観察かな。植物も動物も、どっちも。」
嫌いな事（物）：「いや～。高いところはどうもちょっと……。自然を見るのが好きなのに高いところはダメってなんか面白いよね」

ライフパスダイス事故の被害者。