元は両脚の存在した普通の少女であったが、双子の兄である[豊嶋 晃(としま あきら)]の実験中に起こった暴走事故によって、両足を喪失し、現在の年齢になる15歳まで義足を約10年間扱い続けている少女である。

　晃と紗耶未自体はUGNが保護した棄児であり、発見当初からレネゲイドウイルスの発症が確認され、生まれつきのオーヴァードである事が判明し、以降はUGNの養護施設にて育ち、今までUGNの為に努力を続けていた。能力行使や戦闘によって高い適性を示しているのは生来もあるが、当時の訓練の賜物。生まれつきオーヴァードで兄妹にとっては大した事ではなかった。

　双子の兄は特に頭角を示し、訓練やエージェント前の試験任務の功績から使用されていないゾディアックウェポンの一つ"獅子座"を授与され、兄の功績はこれからのUGNの優秀なエージェントとして期待され、兄とその喜びを享受していた。

　しかし、チルドレンとしての活動直前。参加を願われた作戦にて、事故は起こったのだ。

　実験名は"レネゲイド・シンクロ"と呼ばれ、あらゆる武装を自身の生体組織の一つとして扱い、縦横無尽に扱っていた兄の特性を利用し、[それぞれの優秀なエージェントに見合った特殊レネゲイド武装の作成]をコンセプトとした兵器開発実験に参加する運びとなった。

　そして、特殊レネゲイド武装の触媒となる特殊な力を殆ど持たぬ微量なEXレネゲイドの力を持つ武器と、兄である晃との融合を行い、ある程度の指向性を誘導する事で製造しようとしたのだが、互いのレネゲイドの共鳴現象の発生中に、予想異常の共鳴によって惹かれ合ったレネゲイドが晃の身体を暴走させ、巨大な肉塊となって硬質化した触手を周囲に展開する事によって、研究所自体を破壊すると言う事故が発生。

　この際、見学していた紗耶未は事故の際の肉塊の触手による傷と落下した瓦礫によって、両脚を失い、気絶。本来のオーヴァードなら再生しそうな傷も肉塊のレネゲイド阻害によって足部分の自己治癒を阻害し、二度と両脚が戻らない身体になってしまった。そして両脚を喪失したショックか、兄の変貌を目の当たりにした精神的トラウマなのか、昏睡状態となってしまった。

　しかし、この実験の責任者であり、数少ない生存者であった[ニコラ・ド・オドンネル]が事件後に、専用に開発した特殊レネゲイド武装義足[エルドリッチ]を装着してから間もなく紗耶未は目覚めた。バイタルも安定し、精神的にも異常は見られない彼女であったが、一つだけ、以前との大きな変化があった。それは兄である晃に対する全ての記憶だった。

　以後、UGNのデータベースや情報によって兄の事は勿論既知しているが、事故の事だけは伏せられ、彼女も未だ知らない。

　彼女が装備する特殊レネゲイド武装義足[エルドリッチ]は彼女の能力の向上と補助を行いながら、生体機能を安定化させる役目を持つ豊嶋 紗耶未専用の武装である。

　エルドリッチは内部に魔眼を生成し、義足自体を魔眼と置換する事で、自身の耐久性の向上や能力行使の隠密性を確保し、同時にブラックドックによる生体電流と斥力の合わせ技にて、あらゆる場面においての戦闘を可能とする全地形対応型の汎用武装として機能している。

　このエルドリッチは豊嶋 晃の暴走後の肉体の組織を生体素子として利用しており、これが彼女の阻害されたオーヴァードの再生能力を再現している元となっている。この事実は彼女すら知らず、開発者であるニコラ・ド・オドンネルと一部のUGN上役しか知られてない秘匿情報となっている。