ずっと一緒に居ると約束し、力を合わせて姉と一緒に生きてきた。
　そんな平凡な日々を送っていたある日、ジャームに襲われる。姉が自分を守って殺されてしまい、その時至近でレネゲイドウイルスに晒されてオーヴァードに覚醒する。姉と一緒に居る、居なければならないという強い想いが影響し、レネゲイドが変異。その力は彼女に完璧な「姉の模造品」を作る力を与えた。

　姉は死んで、蘇ることは二度とない。彼女が日常に戻れる頃には、既に葬式も終わっていて姉の墓もあった。
　しかし、彼女はそれを認めない。きっと潜在意識のどこかで理解しているが、その想いと願いと狂気が最後の堤防となり、心を壊させないために、姉は常に自分の傍で生きていると、そう思い込んで信じ込んで、疑わないでいる。普段から幻覚を見ており、時折、レネゲイドウイルスがその妄想を実体化させているにすぎないというのに。
　娘が襲われ、オーヴァード化したことでレネゲイドウイルスのことを知った彼女の両親は、姉を心の支えにしている彼女がジャームになることを恐れてか、墓参りにも連れて行かず、彼女の姉が生きているかのような言動に対して否定することもない。
　同じ学校の子達も、幼いながらに触れてはいけないことを理解していて、そのことに言及する者はいない。しない限り、彼女は普通の女の子だからだ。
　故に、彼女は周りから肯定されて『双子(Gemini)』として生活している。彼女には、姉が居なければダメなのだ。

　変異したレネゲイドを用いて戦う彼女は、我々の想像を超えた戦い方を披露する。
　《ドッペルゲンガー》で素体を作り出し、《完全演技》で記憶の中の姉を再現した「姉の模造品」と共に戦う。《スプリットアタック》で複製された水鉄砲を両手に持ち、踊るように舞うように、協力して目の前の敵を一掃するのだ。
　《スプリットアタック》が使えないなら、二人で一丁ずつ持って一体に集中して倒すだけ。双子がそろえば無敵だ。
　しかし、彼女の願いに反して、時折「姉の模造品」の生成がうまくいかないことがある。そうなれば、彼女がどうにか一人で戦うしかない。その時の彼女は、「二人」の時と比べてまるで別人に見えるだろう。

　「姉」が居なくなってしまったとき、彼女はどうなってしまうのだろうか？レネゲイドの力は感情によってある程度左右される。故に、彼女が姉の生存を妄信している限りは失われることはないのかもしれない。しかし、現実の非情さはいつも突然なもので、いつ彼女がエフェクトを使いこなせなくなるかもわからない。その時の彼女の精神の安定は、周囲の大人が支えてやらなければならないだろう。

　彼女が覚醒した直後、偶発的に巻き込まれた事件でジャームになりかけるほどにレネゲイド能力を使い続けたが故か？彼女の「ドッペルゲンガー」は、何でもないような日常であっても彼女の傍で「二神茉奈」として実体化し続けるようになっている。しかし、オーヴァードでないものからその姿を認識することはできない。まるで世界から切り離されてしまったかのような姉妹が「いじめられている」としか思えないのは、やはり彼女が逃避しているからだろう。
　──だが、二人が『幸せ』だと思っているのだから、彼女たちが変化を望まない限り、ずっと停滞の中にいるしかない。それを望むことが訪れるのか、訪れるとしていつになるのかは分からないが。