「『大人』って何なんだろうな、麗」

「さあ？支部長さんや椎橋さんみたいな人の事を指すんじゃないの？私たちにとっての一番身近な『大人』でしょ」

「…まあ、そうだけど。八神やお前、そして…“ティーチャー”。いろんな奴と対峙してきてさ、思うんだ。アイツらの言うことも間違ってないんだろうなって」

「…」

「確かに、俺らは選択肢を狭ませられて、縛られて自由を失ってる。その側面があるのは間違いない。UGNだけじゃない。学校の中だって、外の普通の社会だってそうだ。…でも、俺はチュンさんや奏さん、UGNの皆に守られてる。子供は背を押されても、大きい翼を貰っても、独りじゃ飛び方を知らないんだ」

「…結局何が言いたいのよ？」

「…いつか俺は、俺たちは大人になる。その時、それこそ椿さんみたいな大人になれたらって思うんだ。でも、心を支配されていたとしてもあの瞬間、奴らにとっての『大人』は“ティーチャー”だった。何が正しくて、何が間違ってるんだろうなって」

「なーに？そんなことで悩んでたの？それなら、今言ったことが答えじゃない」

「…」

「悠。あんたも分かってるんでしょ？その問いに対し万人の答えが一致することなんてないのよ。誰もが違う理想を抱き、自由を求めてる。そしてそれはエゴとして時にぶつかり合う。一番大事なのは悠自身の気持ちよ」

「そう…か。いや、そうだな。本当に俺は出会いに恵まれているよ」

「何よ気持ち悪いわね。さっさと明日人の所に行くわよ」




「なあ、“ティーチャー”。あん時は芯のある回答を出来なかったけど、今度こそ、胸を張って言える『夢』を見つけたぜ」

「俺の力は人を護る力じゃない。人を傷つける、否定する刃だ。でも俺はこの力を、俺が護りたいと思った人たちのために揮う。そんな『大人』になる。それが俺の『夢』だ。お前に頼らずとも、自分自身でその運命を掴み取ってやるさ」

「だから、あの世で目かっ開いて見ておけ。出来損ないの意地ってやつをな」