境遇が境遇なだけに3年前に比べて笑顔が減った。このことについては茂君は気にかけてくれている。
それでも二人にいらぬ心配をかけないよう二人の前では以前と同じ振る舞いをするよう心掛けている。

非オーヴァードだった頃は周りの親しい人達が何かと手を貸してくれて大きな苦労をする事なく暮らしてきたため、覚醒して間もない頃は極度のストレス下におかれるだけで頭の中がぐちゃぐちゃになり、レネゲイドを制御できず振り回されていた。
しかし1話の出来事やセルの任務をこなす約3年間、否が応でも弱肉強食なオーヴァードの世界をその身で知ることとなり、覚醒前は無縁だった強い負の感情を抱く機会が多くなった結果、自分の中の悪感情を徐々に自覚していく事となった。

以前までの純粋無垢な自分に戻れないと自覚するという事は、幼馴染2人と新しい友人のいるこのセルに強い執着心を持つ事に繋がり、牽いてはその居場所を護るために訓練に励む事へと繋がる。
その甲斐あって感情とレネゲイドの制御も上達し、以前ほど暴走する事なく自らの力として行使する事が出来るようになった。
この過酷な環境で、以前のように二人に守られてばかりで負担を強いるワケにはいかないという思いをバネにして。

二人のためならどんな事でもやるという覚悟を持ってはいるものの、まだ人の命を奪う事に躊躇がある。
任務で敵を殺せとアズールに強要されても、緋音君がマリーの及び知らない所で良い感じに処理してくれてるかもしれない。
（そして緋音君がその手を血に染めていることも知らないかもしれない）

今でこそ幼馴染との繋がりに縋っているが、もし両親を生き返らせる代わりに二人を手にかけろと言われたら。
もし幼馴染がジャーム化してしまい、自ら手にかけざるを得ない状況になってしまったら。

そんな残酷な選択がオーヴァードの世界には平然と存在する事を、マリーはまだ知らない。
そういう意味ではマリーはまだ本当の意味で覚悟が出来ているとは言えないのかもしれない。

青葉ちゃんがやろうとした事を本当に止めてよかったのだろうか？自分もあの日常に戻れるなら戻りたいと思ってはいる。
しかし、それは罪のない人を犠牲にしてまでやるべき事なのだろうか？パパとママはそれで喜ぶのだろうか？
そんな事ばかり頭を過っていた。
事ここに至るまで、マリーは自分の意思で物事を判断しきれずにいた。

そんな事を考えつつ、二か月間は療養しながらもよりレネゲイドコントロールを精密に正確に行えるよう精神面を鍛えていた。
戦闘中に雑念を振り払う技術も学んだ。

　・緋音くん：ピーターパン（ピーターパン）
　・茂くん　：ブリキ？（オズの魔法使い）
　・青葉ちゃん　：白雪姫（白雪姫）
　・アズール　：シンデレラの継母（シンデレラ）
　・ヴェノメノン　：アリスのお姉さん（不思議の国のアリス）
　・ヤマトナデシコ　：ウサギ（さるかに合戦）
　・ワンダーマム　：マレフィセント（眠れる森の美女）
　・ソルエレジー　：ヘンゼル（ヘンゼルとグレーテル）
　・ルナスケルツォ　：グレーテル（ヘンゼルとグレーテル）