赤月恋がまだ7歳の頃、ごく普通の家庭・日々を送っていた。
そんな何でもない日のこと、"当たり前”は一瞬で消え去った。
第三の王が永劫の王笏に「平等」を願った影響による大災害にて人口は激減した。
その数、実に1/4。赤羽は災害により父：赤月哲郎（35）、母：赤月京香（30）、妹：赤月愛華（5）を失った。
そう、赤月恋は1/4に選ばれたのであった。

天変地異と言うに相応しい光景が目の前に広がる。
災害全てを詰め込んだかのような箱庭は人々の悲鳴と赤色で満ち溢れていた。
クランケによる仕業か、レネゲイドによるいたずらか。
逃げようと試みた頃には既に両親は潰れた家の柱に抱かれて息絶えていた。
そんな両親の最期に後ろ髪を引かれつつも妹の手を取り、出来るだけ遠くへ走った。
走り始めて数十秒後、目視出来ない速度で"質量を持った何か”が当たり赤月恋、赤月愛華は倒れた。
薄れる意識の中で血を流して倒れる妹がやけに愛しく感じ、無意識に彼女の傷口から溢れる液体を口に含んでいた。
実に猟奇的な、それでいて確かな高揚感と共に意識を手放した。

気がつくと辺りは瓦礫が転がる荒れ地となっていた。
自分は死んだと確信を得られるほどの体験をしたにもかかわらず
体は四肢がつながっており、健康状態も問題なく思える程に調子が良かった。
思い出したくない記憶から逃げるように、ただ一人孤独を抱えて彷徨った。

まだ自身がクランケになる前からの付き合いだたった。家が近くてよく遊ぶ仲だった、長谷川事件までは。
あの日、レンが家族を失った一方で廻もまた大切なものを失っていた。「失った」、いや「奪われた」のだ。
それを知ったのは長谷川事件が落ち着き始めてからの避難所での話だった。

アーツを志した廻に、クランケになった自身。
いつか彼を裏切る事になるかもしれないと不安を抱えつつ、彼と一緒に生きていたいとジレンマを今日も抱えて眠りにつく。

ーダブルクロス、それは叛逆の言葉。ー