喪ったものは飼い犬ではなく妻であり、現在は飼い犬のことを妻であると思い込んでいる。完全に狂気に落ちているわけではなく、自分でも薄らと現実は理解しているため襤褸を出さないような立ち回りが上手い。
妻がバロールであったためバロールのエフェクトしかコピーしない。ウロボロスのエフェクトを行使した際は妻がエフェクトを使用したことになっている。
妻の名前は雪花。犬の元の名前はミント。

10年前のレネゲイド災害において失ったものは飼い犬ではない。
波左間肇という男は生来は非オーヴァードであり、代々法曹の世界に携わる家系に生まれた。家業に誇りを抱いていられたのは家族に恵まれたからであり、その在り方を支えてくれる人がいたからだ。
雪花・フロラキス。半分異国の血を引く彼女は人とは違う不思議な力を持っていた。
学生時代に出会った彼女のその秘密を知ってしまったのは全くの偶然によるものだった。クラスでは大人しい印象であった彼女が重力を操り敵を倒す──まるで少年漫画のような活躍に、目を奪われた。
その時は言及はしなかったものの、彼女は迂闊な性質であったのかそういったことが何度かあった。やがて二人は秘密を共有し、波左間は非オーヴァードながら人払いなどで彼女の活動に協力するようになる。同じ時間を過ごすごとに彼女のことを知り、知るごとに惹かれていった。
UGNに所属する彼女には身寄りがなく、いわば身分違いの恋というものだった。結婚するにあたって家族に紹介した際も家族に快い顔はされなかった。しかし、一緒になることを許されはした。これからもそうやって過ごしていく……はずだった。

異変が起こったのは結婚式当日、指輪の交換をする時だった。何か奇妙だと感じた。当時レネゲイドのことを深くは知らなかった波左間には何が起こったのかわからなかったが……それでも、会場が妙に静かだということはわかる。目の前の彼女も。
そして、臨界は一瞬で訪れた。レネゲイド災害。誰も知らぬ間にその場の全員のレネゲイドは励起され、非オーヴァードの覚醒とジャーム化が連鎖的に多発する。狂騒の中、彼女の手が伸ばされ──意識が落ちた。

その後、UGNによって保護され状況説明を受けるものの意識は虚ろだった。曰く、現場のジャームはほとんど波左間自身が制圧していたこと。対抗種というレネゲイドを喰らうレネゲイドを有していたことから災害への耐性があったかもしれないということ。何故か左薬指だけが再生しないこと。全てがどうでもよかった。
治療と事情聴取を終えやっとの思いで家に帰る。家族になった彼女二人で過ごすはずだった家。玄関の扉を開けもう一匹……一人の家族に迎えられた時、嵌ってはいけないピースが歪に嵌った音がした。そう、喪ってなどいない。『家族』はまだここにいる。
彼女はまだここにいる。

オーヴァードになったことで波左間はUGNエージェントになり、裁判官の仕事を辞めた。その来歴から所属先はレネゲイド災害緊急対応班を推薦され、本人もそれを希望した。覚醒時の出来事が『覚醒直後にレネゲイド災害を一人で鎮圧した』ことを主に優れた人物として噂が広まっていたためか隊長になるまではそう時間がかかったわけではなかった。
コードネームは黒い河が全てを押し流す戦闘スタイルと犬に首輪がついていないことから。他者からの名付けであるため波左間は後者の意味には気付いていない。気付いたとしても彼女に首輪をつけるはずもないと首を傾げるだろう。

それなりに人望があり部下にも分け隔てなく接するが、その実善悪の天秤はレネゲイド災害によって大きく傾いている。レネゲイドは罪である。オーヴァードは罰である。故に、すべてのオーヴァードは非オーヴァードのために死ぬべきである。過剰な自己犠牲の精神を他者にも押し付ける人物。幸い所属が文字通り非オーヴァードのために命を賭さなければならない場所であるためその思想は良くも働いている。摂食障害と睡眠障害を抱えているため常に苦しみながら生きている。

セツカさん　◎純愛/罪悪感　最愛の家族にして頼りになる隊員ですよ
波左間雪花　◎純愛/悔悟　隱ｰ繧医ｊ諢帙＠縺ｦ縺?◆
遺産“エレウシスの秘儀”　◎執着/憎悪　この世から消し去りますね
神薙杏香　◎連帯感/嫌悪　ご協力お願いいたします