彼の『真実』を唯一信じてくれていたのは「銀 六錵」ただひとりだった。

教団、カダスに所属する信徒の1人。人には何かしら原罪があり、自分も例にもれずそのうちの1人だと語る。母親は不明、父親は詐欺師グループのリーダーだった。荒れた生活の果てに、友人と廃屋となった屋敷を金目の物目当てに捜索。そこで正体不明の黒い刀身の妖刀を見つけ手に取ってしまう。しかし、その物々しい妖刀に怖気づいた周囲から『廃屋には一人で行ったこと』にされ、孤立。人の心の醜さ、人を信じた浅ましさ、自身の薄汚い出生、この世の全てへの怒りと憎悪に妖刀は共鳴した。
気が付けば、少年は剣を振るうための「化け物」と為る。その後、裏の世界でFHと邂逅したことで主に用心棒の仕事を請け負う中、銀家との接点を持ち実力を飼われて銀家の令嬢の用心棒として雇われ、彼女と心を通わせていく。

無論、その幸せは銀家の令嬢の病死と言う形で世界の不平等によって壊されることになってしまうのだが。

手にした妖刀「夜刀光（ダズル）」を振るう、単純明快な戦闘スタイル。真っ黒な刀身の剣は光を通さぬ闇と虚無で形作られたようだが、それが閃くとき、人の予想を超えた剣筋と速度で急所を確実に狙う。もはや、持ち手が剣に踊らされているのか剣と共に踊っているのかも分からない。この剣を振るうのに値する反射神経を得るために目には見えないが、帷裏は脳や神経に強化手術を施しており、AIDAプログラムが彼の身体をナビゲートし動かしている。代償としてか、強い光がやや苦手でいつも身に着けているサングラスには細工と共に光避けとしての役割もある。

彼に施されたAIDAの強化手術とRBの自我を応用した脳の適応は、後の「銀 六錵」という人工生命を創る際に参考にされたという。

話をしている限りは飄々とした穏やかな青年。概ね他人に対しては友好的なのでしれっと他人の中に潜り込み馴染む話術を持っている。しかし、その実、人には気を許さずに常に懐疑的で皮肉屋。人は善性を持っていると同時に、その善性とは他者を裏切る悪性の裏にあると考えている。片面しかないものは信じがたく、両面があることが正しい。自らのような者が生きる為に全てが化け物であればいいのに、と願っているが同時にそんな世の中が訪れなければいいのに、とも願っている。ゆえに、世界に汚されぬ者は美しく悍ましく、この世の汚れを知る者は誠実で不実、……といった具合でひどく矛盾した考えを持っている破綻者。この精神性は、何度もFHによる無茶な強化手術を受けた影響が出ている結果でもある。