ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

Soror - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

黒尾ブラックテイルSororソロル

プレイヤー:あり

犬じゃない、狐。

年齢
18
性別
星座
不明
身長
157
体重
50
血液型
O型
ワークス
FHエージェントD
カヴァー
ブリード
ピュアブリード
シンドローム
ウロボロス
HP最大値
28
常備化ポイント
4
財産ポイント
2
行動値
8
戦闘移動
13
全力移動
26

経験点

消費
+34
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 狐型のRBと本当の兄弟のように育てられた
兄弟姉妹
経験 被験体#1029通称「Soror」、被験体#0108通称「Frater」の能力を無事吸収、その後RCも安定、稼働に至る。 〜とあるFH施設の研究メモ〜
実験体
欲望 強く美しかった彼に近づくために
進化
覚醒 侵蝕値 RBの力を吸収させる実験の検体、実験は成功し広範囲に災いをもたらすオーヴァードとして覚醒した。
素体 16
衝動 侵蝕値 彼を奪ったこの力が嫌だ、その力を使う自分が嫌だ、この世界が嫌だ
嫌悪 15
その他の修正10原初の青、原初の赤、原初の紫
侵蝕率基本値41

能力値

肉体2 感覚2 精神4 社会1
シンドローム1×2 シンドローム1×2 シンドローム2×2 シンドローム0×2
ワークス ワークス ワークス ワークス1
成長 成長 成長0 成長0
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵 射撃 RC7 交渉1
回避 知覚1 意志 調達1
情報:FH3

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 超血統
尊敬 悔悟
実験施設 執着 恐怖
ノエル 庇護 恐怖

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
原初の青:猛毒の雫 9 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 3
1点でもダメージを与えたらLvランクの邪毒を与える(超血統で最大Lv+2,Lv+1)経験点修正:-5点]
原初の赤:サイレンの魔女 7 メジャーアクション 〈RC〉 対決 シーン(選択) 視界 6
攻撃力+Lv×3の射撃攻撃を行う。装甲無視
原初の紫:妖精の手 5 オートアクション 自動成功 単体 視界 5
ダイスを一つ10にする Lv回
永劫進化 1 セットアッププロセス 自動成功 自身 至近 3 100%
原初の●で所得したエフェクトのLvを+1する。回数は増えない。 シナリオ一回
影絵芝居  1 オートアクション
影を自由自在に動かす
まだらの紐 1
影に知覚能力を持たせる

コンボ

殺生石

組み合わせ
原初の青:猛毒の雫原初の赤:サイレンの魔女
タイミング
メジャーアクション
技能
RC
難易度
対象
射程
侵蝕値
9
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
4
7
21
100%以上
4
7
24

影の尾で対象の体内に生命力を蝕む石を埋め込む
蛇毒Lv9

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
解毒剤 2 0 邪毒を解除できる

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 15 149 0 0 164 0/164
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

実験施設で育てられた子供、被験体#1029通称「Soror」
名はなくずっと実験番号で呼ばれていた。現在はCNで呼ばれることが多い。
10歳の時に暴走して兄の力を奪い覚醒。
もちろんFH施設側に仕組まれたことだったが本人は自分を責めてかなり憔悴した。
その後は「兄のような立派なオーヴァードになりなさい」と教育された結果
他のオーヴァードの力を奪い兄に近づくことに固執している。
影を操り兄の姿を模した状態で戦闘する。
視界に入る者に対して尾を模した影を伸ばし侵蝕し、レネゲイドを内側から乱し狂わせ生命力を蝕む能力を持つ。
潜入し、一体多数の状況で戦闘することが得意。
ほぼ施設内で過ごしてきていた為あんまり外の世界、普通の世界を知らない。
戦えば戦うほど、さまざまな能力を吸収すればするほど亡くした兄に近づけると思っている為、戦いの日々は悪くないと思っている。
狐が好き。

※兄について
被験体#0108通称「Frater」
その正体はレネゲイドビーイング、玉藻の御前、白面など九尾の狐の伝承が元になったRB。
FHに捕われ実験されていたためか、元となった伝承のその性質故か、人に対しては基本的に憎悪の感情を抱いている。
ただ、赤子の時から何故だか自分のそばに置かれ、自分を兄として慕う少女のことを哀れに思ったか、ただの暇つぶしか。
兄として、オーヴァードの先輩として優しく接するようになる。
妹が暴走した時、妹の命を奪うことも考えたが、妹の力がウロボロスであり、自身の力を取り込んでもらった方が面白そうだと考えそのまま力を奪われることを選択した。
その後の所在は不明。
シンドロームはソラリスを保有していたことが推測されているが彼に関する実験データ、資料共に失われている。

九尾の狐をモチーフ
生前は玉藻の御前、白面金毛九尾の狐として人間界を混乱させ、死後封印された後も殺生石として影響を及ぼしたという逸話から。

履歴

◆第一章:白面の者

――名を持たぬ“災厄”は、人にとっての神であり、悪夢であり、そして鏡だった。



【Ⅰ:降臨】

その者は、ある日突然、現れたわけではない。

人が争い、欺き、欲望のままに血を流しはじめた頃――
すでに“それ”は、世界のどこかに存在していた。

名を持たず、姿も定かでなく、
ただ、人々の間に漂う「悪意」の淀みの中から、
自然と“それ”は生まれてきた。

人は言った。

「災厄の化身、白面の者(はくめんのもの)」
「九つの尾を持ち、千の言葉で人を惑わす悪魔」
「この世の理(ことわり)を嘲笑う者」

白く、どこまでも滑らかな毛並み。
月光を呑むような蒼い瞳。
一つ一つの尾に呪いと業を宿し、
人の感情を食い、増幅し、狂わせる。

その存在が通った村は、
何もされずとも争いが起き、家族が裂かれ、火が上がる。

誰もがそれを恐れ、祀り、忌み、封じようとした。
けれど彼にとって、人のそうした感情すら――ただの“餌”でしかなかった。

「欲しいのなら、与えよう。
 怒りも、憎しみも、疑念も、愛すらも……
 君たちの中に元から在るものだろう?」

彼は自ら手を下すことは、稀だった。
だが彼の“尾”が人の感情に触れたとき――
人々は自らの意志で、互いを殺し始めた。

彼は人を殺さない。
ただ、“人が人を殺す光景”を見たかった。

彼は神ではなかった。
だが、人々が“神がいた”と思いたくなるほどの、**圧倒的な“異物”**だった。



【Ⅱ:畏怖】

時代は移ろい、時に彼は「玉藻の前」となり、
時に「白面金毛九尾の狐」として語られ、
またある時は「悪魔」として討伐の対象となった。

だが、人がどれだけ彼を“討った”と信じようとも、
その尾の一片、言葉の一つが残れば、彼は再び蘇る。

「僕を封じたつもりかい?
 ならば、君たちは二度と“愛”も“信頼”も語らぬことだ。
 だって、それは僕が撒いた“毒”と同じものだから」

人の中にある罪と矛盾、
美徳と愚かさを何よりもよく知っていた。

彼は人を嗤いながらも、
人という存在に、どこか深い興味を抱き続けていた。

完全で、孤独で、全知に近い存在であるがゆえに――
彼は常に、自らを映す“鏡”を求めた。

だがその鏡は、どれも脆く、曇りやすく、歪んでいて、
すぐに割れてしまった。

そして彼は気づく。

「ああ、そうか。
 “愚かで壊れやすい”からこそ、人間という存在は面白いんだね」



【Ⅲ:封印】

幾度目かの転生を経たある時、
人間たちはついに彼を石へと封じた。

「殺生石」――それが彼の“眠りの名”となった。

しかし、それすらも彼にとっては恐れでも、敗北でもなかった。

「眠るだけだよ、ほんの少し。
 いずれ君たちが、再び愚かしく争うその時まで――
 僕はそこで、夢を見ている」

彼の意識は、
世界中に満ちるレネゲイドの濁流とともに、
静かに、大地の奥でたゆたっていた。

だがその眠りは、心地よいものではなかった。

彼はずっと“あの問い”を反芻していた。

「なぜ、人は――“誰か”のために生きられるのか?」

完全なる個体、孤高の存在として、
彼が唯一理解できなかったもの。

それは、“家族”という概念だった。

人の中にしかない、壊れやすく、脆く、不可解な情愛。

彼の永い眠りの中で、それだけが
燻るように、脳裏に残り続けていた。



【章末】

世界が再び、影を求めるとき――
白面の者は目覚める。

けれどその目覚めは、
かつてと同じではなかった。

今度の彼は、
ただ“人の愚かさ”を見るためだけではなく――

「その中に、何かを見出そうとしていた」

その“何か”に、彼自身すら名前をつけることができずに。




◆第二章:目覚め、そして邂逅

――ただの興味だったはずだった。
だが、あの赤子は、彼の中に“言葉にできぬ衝動”を植え付けた。



【Ⅰ:封印解除】

FH──ファルスハーツ。
それは、世界の裏側で禁忌を操る者たち。
彼らが、“殺生石”と記された封印を発見したのは、偶然ではなかった。

それは彼らが、「世界を変える力」を渇望した結果だった。

重機により引き剥がされた封印の断片。
検査用の鋼のカプセル。
低温処理された実験区画。

そして、その中心で――彼は目覚めた。

静かに、滑らかに、あたかも“夢から覚めた”だけのように。

「……やれやれ、また人間の愚かな遊びかい。
 それとも、今度は少しは愉しませてくれるのかな?」

装置が警告を鳴らすより早く、
目の前の研究者の心拍が乱れる。

だが、彼は何もしない。
ただ、銀色の毛並みを揺らし、
黒髪の青年の姿へと形を変える。

“彼”にとって、これは始まりでも再会でもない。
ただ、また一度、世界と対面する時が来たというだけのことだった。



【Ⅱ:違和感と興味】

施設内での拘束は緩やかだった。
彼を封じることは誰にもできなかったが、
彼自身が興味を持ったため、逃げ出すこともしなかった。

それは“観察”の時期だった。

研究者たちの目。
子供たちの悲鳴。
オーヴァードたちの暴走と、失敗と、死。

彼はそのすべてを見ていた。
まるで、教科書を読み返すように。
まるで、既に知っている愚かさを再確認するように。

だが、ある日。
ふとしたきっかけで、
それは変わった。

監視ルートから外れた実験区画、
冷却処理された培養室。
その奥、ガラス越しに、彼は“それ”を見た。

――小さな赤子。
検体番号:#1029。
名も無き被検体。

人の手によって生まれた存在。
管理される命。
未熟で、未完成で、弱いだけの存在。

だが。

「……これは」

彼の足が、自然とその場に根を張る。

その赤子が、とても静かだったのだ。
泣くこともなく、ただ小さな胸が上下しているだけ。

生きる意味も、存在の価値も知らず。
ただ、それでも、“生きていた”。



【Ⅲ:初めての感情】

それは、興味だった。

けれど、それ以上だった。

彼は己の中に芽生えた“感情”に名前をつけられなかった。

畏れ?哀れみ?好奇?…羨望?

完璧で、万能で、独立した存在であるはずの“自分”が、
何故このような弱く儚いものに目を奪われるのか。

「君には……何もない。
 何も持っていない。
 なのに、なぜこんなにも……」

彼は何かを試すように、
その小さな魂へ語りかけ、
時には影を送り、夢の中に囁きを落とした。

「“名前”がないのは、悲しいね。
 だったら……君に、与えようか。
 “ソロル”。妹という意味の名を」

そして、自らの名もまた。

「……僕は、君の兄だよ。
 フラーテル。
 君だけが、そう呼んでいい」

その時、名を持たなかった“白面の者”に、
初めての“名前”が宿った。



【Ⅳ:始まりの夜】

それからの日々、
フラーテルは静かにその赤子を“育て”はじめた。

人間の愛情の模倣。
教育としての刷り込み。
オーヴァードとしての訓練。

そのすべてを、
兄として与えるために。

施設内の誰よりも早く目覚め、
誰よりも遅く部屋を後にし、
彼はただひとつの目的のために生き始める。

「君が僕に追いつく日まで。
 いや――僕を超えてくれるその日まで。
 僕は君の“兄”でいよう」



【章末】

名もなき災厄は、
その日から、兄となった。

完全であることを誇る者が、
“誰かのために”自らの形を変えようとした。
それは、
彼にとっての最初の敗北であり、最初の希望だった。

――ソロル。
君が、僕に教えてくれた。
“誰かのためにある力”が、
ときにこの身を震わせるほどに、愛しいものだということを。



◆第三章:兄としてのフラーテル、育てられるソロル

――それは教育ではなく、刷り込みだった。
けれど、彼女にとっては世界のすべてだった。



【Ⅰ:影の中で育つ】

彼女が目覚めて初めて見た“人の形”は、彼だった。
蒼い瞳に黒髪を揺らす青年――フラーテル。
だが彼の本質は、人にあらず。
銀毛の尾を持つ、災厄そのものであった。

だがその姿は、恐怖ではなく――ただ、静かな温もりを纏っていた。

名前も知らず、世界も持たず、ただ“実験体”として生まれた少女に、
彼は言葉を与え、視点を与え、意味を与えた。

「これが“空”だよ。ソロル。上を見れば広がっている、終わりのない空間。
 でもソロルが見る空は、いつも施設の天井ばかりだ。ふふ、哀れだね、少し」

「痛みは、生きているってことさ。
 でもソロルは、恐れなくていい。いずれ、それすら“力”になるから」

「泣いていいんだよ、ソロル。僕も……昔、泣いたことが……あったかもね。
 ……忘れたけど」

人の常識とは違った“世界”を、
彼は静かに、少し歪に、少女に与えた。

けれど彼女――ソロルにとって、それこそが現実だった。



【Ⅱ:学ぶという支配】

フラーテルは知識を惜しみなく与えた。

レネゲイドの性質。
感情の機微。
戦い方。
殺し方。
影の動き、力の使い道。

それらを語る声はいつも穏やかで、飄々としていて、
時に皮肉めいていたが、どこか甘く、優しかった。

「ソロルの力は“影”。
 でもね、影は何かにくっついて存在する。
 つまりソロル自身が、何か“光”を背負わないと、影も定まらないんだよ」

「力を奪うことは、罪じゃない。
 ただ、それを“どんな目的”に使うか、それが大事。
 たとえば……“兄に近づくため”とか、ね?」

ソロルは頷いた。
迷いも、疑問もなかった。

それは刷り込まれた目的。
だが、彼女はそれを“愛”と信じていた。

時折、フラーテルはその本性――銀毛の九尾を持つ獣の姿を現した。
その毛並みに、ソロルだけは触れることを許された。

その時間だけは、
彼女の胸に芽生え始めた“感情”に、確かな温もりと形があった。

「……わたしは……フラーテルの、ために……つよく、なるの」



【Ⅲ:セルの主】

いつの間にか、フラーテルはFH施設内で“セルの主”となっていた。

誰もが逆らえず、誰もがその存在を恐れたが、
彼自身は組織にも、秩序にも興味を示さなかった。

ただ、ソロルの教育だけに時間を注いだ。

他の研究者には冷淡で、時には凍てつくほどの敵意さえ見せた。
けれどソロルにだけは、静かに、丁寧に語りかけた。

「ソロル。いいかい、他の被験体は“選ばれなかった”者たちだ。
 でもソロルは違う。
 ソロルは、“僕が選んだ”特別な存在だ」

それが、彼女の心に深く刺さった。

彼の言葉は、どこまでも甘く、そして毒だった。

彼女は知らない。
その言葉が、自分をどれほど“強く”、そして“脆く”したのかを。



【Ⅳ:覚醒前夜】

彼女が十歳を迎えた日。
“偶然”を装った、暴走誘導実験が始まった。

FHの思惑は単純だった。
ウロボロスの限界を見たい。
制御できるのか。壊れるのか。
使えるのか、捨てるべきか。

だが、誰よりもその日が来ることを知っていたのはフラーテルだった。

「……ついにこの時が来たね、ソロル。
 ソロルが、僕の力を奪い、“近づく”時が」

彼は抵抗しなかった。
むしろ、喜んでいた。

彼女が暴走し、
彼の尾を飲み込むように吸収したその瞬間――

彼は確かに、微笑んでいた。

「それでいい……。
 ソロルが強くなるなら、僕が“いなくなる”ことも、悪くない」

その言葉を最後に、
フラーテルの姿は、影とともに消えた。



【Ⅴ:喪失】

「……フラーテル……?」

彼女は最初、状況を理解できなかった。

自身の体に流れ込む力の奔流。
異様な静けさ。
そして、彼の蒼い目が、どこにもないこと。

彼の気配が、影の一欠片すら感じられないこと。

その事実を、脳が受け入れなかった。

力はあった。
だが、それをどうして得たのか、彼女には理解できていなかった。

「フラーテル……どこ……?」

名を呼んでも返事はない。

影に身を包みながら、
ソロルはひとり、床に座り込んだ。

まるで、ぬくもりだけを失った獣のように。



【章末】

その日、ソロルの世界は終わり、そして始まった。

彼を喪い、
彼の力を宿し、
彼の言葉を胸に刻み――

「僕は、ソロルの兄。
 ソロルが望むなら、僕のすべてをあげよう。
 だから、強くなるんだ。
 僕を……喰らってでも」

それは命令でも、祈りでもない。
ただ、ひとつの“刷り込み”。

その言葉が、彼女の歩む影の道を照らす唯一の灯火となった。

そして、ソロルは歩き出す。
兄を宿し、兄のように。

――自分は、兄を超えているだろうか。
それを確かめたくて、彼女は“災厄”になることを恐れなかった。
 


◆第五章:影として生きる日々

――兄を喰らった少女は、影のように世界に溶けていった。

【Ⅰ:喪失の記憶】

ソロルは、動かなかった。
力を得ても、世界が止まったままだった。

彼の声が聞こえない。
銀色の尾の温もりがない。
耳元でささやかれる皮肉まじりの言葉もない。

「……フラーテル……?」

呼んでも、影は答えなかった。

どれだけ力を振るっても、
どれだけ影を伸ばしても、
その先に、彼の気配は戻ってこなかった。

(わたしが……ころしたの……?)

力を得た代償は、彼の喪失だった。
その事実だけが、ソロルの胸に突き刺さっていた。



【Ⅱ:孤独な異端者】

彼女は、そのまま施設を崩壊させた。
自分でも理由はわからなかった。

ただ、暴走したレネゲイドの尾が、
壁を貫き、床を裂き、研究者たちを喰らっていった。

気がつけば施設は壊滅し、
彼女だけが生き残っていた。

その後、彼女は**「異端の成功例」**として扱われるようになった。
制御不能でありながらも強すぎる、FHの兵器。

いくつものセルに転属され、
与えられるのは殺戮と制圧の任務ばかり。

仲間はいた。だが、誰も彼女と目を合わせなかった。

「……あいつは、人間じゃない……」

「気に入らないなら殺すって顔してる。マジで笑えない」

「“ブラックテイル”……本当にあれ、制御されてるのか?」

そんな声が、背中で飛び交う。

だが彼女は、何も言わなかった。
言葉は、いつも拒絶を呼んだ。
それを学んだから、口を閉ざした。



【Ⅲ:任務という名の徘徊】

彼女の任務は、FHにとって“使い捨ての矛”だった。

潰すべきUGN拠点へ単独潜入。
危険度SクラスのRBとの戦闘。
逸脱したオーヴァードの処理。

それでも彼女は、命令に逆らわなかった。

「兄に……ちかづく、ために」

その呟きだけが、空白になった心を埋める唯一の呪文だった。

力を蓄えれば、近づける。
戦えば戦うほど、強くなれる。
強くなれば、きっと、フラーテルに……。

――フラーテルに、褒めてもらえる)

けれど、その願いは、どこにも届かない。
誰も応えてはくれない。

フラーテルが消えた日から、
ソロルの世界には、“静寂”しか残らなかった。



【Ⅳ:兵器としての少女】

やがて彼女は、人ではなく“装備”として扱われ始める。

「オメガセルに"ブラックテイル"を貸してくれ。人員が足りない」
「第七研究区画のテスト対象として“彼女”を使いたい」
「UGN残党の根絶に使おう。無謀?死んだら死んだで好都合じゃないか」

そのたびに彼女は移され、
知らない土地、知らない指揮官のもとで、ただ命令を遂行した。

意義も、理由も、感情もない。

ただ一つだけ――

(兄に、ちかづくため)

そのためだけに、ソロルは戦い続けた。

他者と目を合わせず、
言葉を交わさず、
影の尾を伸ばして、静かに任務をこなしていく。

まるで、意思も感情も持たない兵器のように。



【Ⅴ:見えない影】

だが――
誰も知らない。

その影のずっと奥で、
一つの視線が、彼女を見守っていることを。

気配を絶ち、影に潜み、
かつての“兄”は、消えたはずのその存在を、
ただ静かに、ただ淡く、見つめ続けていた。

(……よくやってるね、ソロル。
 君は、もう僕の“模倣”じゃない。
 君は君として、力を得てる。
 ……素晴らしいよ)

けれど、その声は、届かない。

届いてはいけない。

それは、彼女を強くする“影”として、
これからも存在するために。



【章末】

影の少女は、今日もまた任務に赴く。

言葉を失い、感情を偽り、
誰のことも信じず、ただ“彼に近づくため”に。

そしてその背後には、誰も気づかぬ影が一つ――
彼女の足跡を、そっとなぞるように付き従っていた。

かつて兄と呼ばれた者の影は、
今日も少女の歩む地に、音もなく溶けていた。





番外編
◆Ⅰ:初めての叱責──影が揺らぐ夜

任務は予定通り終わるはずだった。
標的はUGNに内通する民間人。潜伏し、情報を流していた“裏切者”。
殺すべき対象だった。迷いは不要。命令は絶対。

けれど──

その男には妹がいた。
標的を庇うように泣きながら立ちはだかった、幼い少女。
兄の腕にしがみつき、懸命に叫ぶ姿。

その一瞬が、ソロルの手を止めた。

影の尾は標的を貫く寸前で凍りついた。
その代償として、標的は逃げた。
任務は、失敗だった。



報告書を読んだFH上層部は、冷たく告げた。

「被験体#1029──情動による命令違反。次回があれば、再教育処置対象」

ソロルはただ静かに頷き、黙って立ち去った。

その夜、ソロルの元にフラーテルは現れた。
何も言わず、部屋の隅に膝を抱えて座っている。

「……報告書、読んだよ」

彼はソファから身を起こし、窓の外に目をやりながら言った。

「“兄妹関係に似た感情を抱く対象への殺害拒否”。
 ……実に、らしくない」

ソロルは顔を上げなかった。
声も出さなかった。

「どうして殺さなかったの、ソロル?」

「……泣いてた。妹、が。……“にいさんをころさないで”って」

その声は、限りなく小さく、けれど震えていた。

フラーテルは目を細めた。
感情の揺れ。抑圧された思考の破綻。刷り込みの枠を超えた行動。

それは──本来、見逃すべきではなかった。

ソロルは“完璧な妹”だ。
“感情を持つ凡人”であってはならない。

それなのに。

「……叱らないの?」

その問いに、フラーテルは初めて彼女に向き直る。
その蒼い瞳に、なぜか深い迷いの色が浮かんでいた。

「叱ってほしいのかい?」

「……わたし、失敗した。にいさんの言う通り、感情なんていらないのに……」

フラーテルはしばらく黙った。
視線を彼女から外し、天井を仰ぐように言葉を吐いた。

「……本当は、叱るつもりだったよ。
 君の弱点は“切除”すべきだ。
 そう教えてきた。僕もそう思っていた。ずっと、そうだったのに──」

その声に、微かな揺らぎがあった。
まるで、己の中に湧き上がる“理解不能なもの”に戸惑っているような。

「でも……なぜか、今は違うんだ。
 その弱さも、君の一部だと思ってしまった。
 その感情を、否定できなかった。……理由は、わからないけど」

彼は一歩、ソロルに近づく。
ソロルは目を伏せ、影をたたんだまま、ただ座っていた。

「君は……人間じゃない。でも、僕もそうだ。
 だからたぶん──僕たちの“間違い”も、誰かの常識では測れない」

彼は言葉を切り、小さく息を吐いた。

「……次は、必ず殺そうね?」

「……うん」

「それができないなら、また……叱るよ。
 きつく、優しく、どちらでも」

その“罰”は、とても曖昧で、どこか甘い響きを持っていた。

フラーテルの中に芽生えつつあるもの──
それが“愛情”なのか、あるいは“所有”なのか、彼自身にもまだ分からなかった。

ただ一つだけ確かなこと。
ソロルの“弱さ”を、自分は否定できなかったということ。

そしてそれこそが、フラーテルの“失敗”の始まりだった。



この“失敗”以降、ソロルは“兄妹”という関係を持つ標的を殺せなくなる。
フラーテルはそれを知りながら、黙認し続けた。

それがいつか彼女を壊すことになると知りながら──
彼はその“綻び”を愛してしまったのだ。

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 34

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