オリジナル・近衛謙心の十番目、最後の複製体。
オリジナルはソラリスのピュアブリードだったが、数年前に任務の途中でチルドレンへの攻撃を庇って死亡した。
複製体の計画を持ち出したのは謙心の両親だった。いずれは家を継いでもらうつもりだった両親が、人倫に悖ると反対する謙心の祖父母を押し切り、UGNへの資金援助と引き換えに複製を依頼。その際、彼が戦闘でも死なないようにシンドロームの調整がなされた。
だが、そうして生み出された初代複製体も仲間を庇って死亡。そんなこんなを繰り返すうちに、この謙心が生み出された。

謙心自身にも、オリジナルから過去の複製体の記憶が引き継がれている。ただし人格や感情までもが引き継がれているわけではなく、生まれた当初は、なぜこれまでの複製体がオリジナルの人格に収斂していくのか不思議に感じていた。
だがその疑問は実家に帰ったときに解けた。近衛謙心という人間は、彼を取り巻く環境への想いが形作っていたのだ。自分のことを後継としてしか見ていない両親への落胆、計画に反対していたのにも拘らず自分を「近衛謙心」として受け入れてくれる祖父母への尊敬の念が、「周りの人間を愛せる人になりたい」というオリジナルの想いを生み出した。家族と触れ合うことで、引き継がれた記憶とオリジナルの想いとが共鳴し、近衛謙心としてオリジナルの生を継いでいきたいと思うようになった。

近衛が複製体であることを霧谷雄吾が知ったのは、彼が日本支部長になってからすぐのことだった。霧谷が謙心の好物である「にんじんとブロッコリーのグラタン」を振る舞ったところ、「口に入れられないほど苦手」だと言われたことがきっかけであるり不審に思った霧谷は徹底的に経緯を調べ上げ、計画の存在を知った。人命が軽んじかねられないと複製計画自体を停止させようとした霧谷だったが、謙心が留まるよう嘆願した。仲間を庇って死んできたのも、オリジナルの悲願である「保育園の創設」を遂げたいのも、すべては「自分たち」の願いであるから、それを否定しないでほしいと泣きついたのである。
それでも霧谷は計画を廃止にしたため、謙心は一時霧谷を恨んだ。だがすぐに、霧谷はUGN日本支部のなかに保育園を設立、支部長に謙心を配置した。そして支部長の証であるバッジを手渡し、支部とそのメンバーを背負う者としてもっと自分の身を大切にするよう告げられる。
以来、自分に引き継がれたオリジナルの特性を最大限に活かせるよう後方射撃に転向した。

戦闘の際、ライフルを持つと手が震える。いくらジャームだとはいえ、命を奪うことが恐ろしくて怖い。自分を落ち着かせるルーチンとして、バッジを握って一度深呼吸をしてから相手を見据えるというのがある。