幼い頃は親がFHであったものの工作などに利用されることはなく過ごす。だが、聡かった彼はどこかまともじゃない家だ、そう理解していた。
転機は9歳の頃、オーヴァード能力が覚醒しチルドレンとなった。
過酷な訓練に精神を苛まれる中、サーヤと名乗る中性的な研究員に出会う。
サーヤは非人道的な研究や訓練を行うFHの中でチルドレンの人権を意識した異質な人物だった。
「大切な人を黄泉還らせるために、レネゲイドの力が必要。だから、UGNにはいられないの」
そう話すサーヤに蓮は何も言えなかった。
ある日のこと、サーヤが研究資料と逃亡資金をFHから奪い彼に声をかけた。
「一緒に逃げよう」と。
蓮は何も言えなかった。
両親を、セルリーダーを、エージェントを、チルドレンを恐れ、その手を振り払い逃げ出した。
サーヤは失踪した。ただ、サーヤの分岐点は蓮に連絡先を残していったことだろう。それは、サーヤの最後の情だったのだろう。
蓮はサーヤの居場所を吐かせるためいくつか質問を受けた。殺される。そう思った蓮はサーヤの連絡先を話した。
ブラックドッグの逆探知を受け、サーヤは居場所がバレ、死んだ。
サーヤからの信頼を、期待を最後まで裏切り続けた蓮は泣き続けた。
それから彼はチルドレンとして目覚しい戦績を残すことになる。
それはやがて期待となり、重責となり逃げられないレールになった。
そうして彼はセルを立ち上げることになる。
リエゾンエージェントから与えられたセルの名前は【ミゼリコルデ】
慈悲の一撃。最大級の彼への皮肉だった。