ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

時雨 廻 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

Void actor(ヴォイド アクター)時雨 廻(しぐれ めぐる)

プレイヤー:夜月

僕達は皆、この世界を演じる演者なんだ

年齢
17
性別
星座
牡牛座
身長
174
体重
64
血液型
A型
ワークス
アーツ
カヴァー
高校生
ブリード
シンドローム
HP最大値
33
常備化ポイント
8
財産ポイント
0
行動値
9
戦闘移動
14
全力移動
28

経験点

消費
+108
未使用
25
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自
経験
邂逅
虚無
覚醒 侵蝕値
衝動 侵蝕値
その他の修正12
侵蝕率基本値12

能力値

肉体5 感覚3 精神3 社会3
シンドローム×2 シンドローム×2 シンドローム×2 シンドローム×2
ワークス ワークス ワークス ワークス
成長 成長 成長 成長
その他修正5 その他修正3 その他修正3 その他修正3
白兵6 射撃 RC 交渉
回避6 知覚 意志 調達1
情報:アーツ1

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 遺産継承者:ジュラシックレコード
Dロイス 秘密兵器
アーツ 憧憬 侮蔑
赤月 恋 慕情 嫉妬

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
シナプス 3 メジャーアクション
リアクション
8
あらゆる判定と組み合わせれる。C値-Lv。組み合わせた判定ダイス+Lv。

コンボ

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
ジュラシックレコード 白兵 〈白兵〉 0(-2+2) 27(12+15) 4 至近 習得時に能力値を選び、選んだ能力値を+2。装甲値+10。侵蝕率基本値+2。
防具常備化経験点種別行動ドッジ装甲値解説
UGN戦闘服Ⅱ 30 15 エフェクトを組み合わせた判定ダイス+2個する。
ヴィークル常備化経験点種別技能行動攻撃力装甲値全力
移動
解説
ストライクモービル ヴィークル 〈運転:二輪〉 -1 10 13 350m 搭乗している間、攻撃の判定ダイス+4。
一般アイテム常備化経験点種別技能解説
優良兵器 15 ジュラシックレコードの命中+2。攻撃力+5。
玩具使い 5 武器を使う攻撃のダメージ+3。
強化素材 5 ジュラシックレコードの攻撃力+1。
ウェポンケース 1 オートでジュラシックレコード装備
アップグレード 5 ジュラシックレコードの攻撃力+3。
オーバーマインド 15 攻撃の達成値+5。攻撃力+5。自分よりも立場が上の人間から命令されると憎悪を受ける。憎悪先はGMが決める。この憎悪は1シナリオ1回まで。
エンチャンテッドウェポン 5 ジュラシックレコードの攻撃力+3。
探索者ネットワーク 5 情報収集の判定の直前に使用する。判定ダイス+3個する。
ウォーモンガー 15 あなたが攻撃を行なうダメージロール+1D。あなたの侵蝕率の基本値+5する。
学園帰り 5 【肉体】の能力値を使用したあらゆる判定+1個する。
ヒーローズクロス 0 バックトラックを振る前に侵触率10減少。
無遅刻無欠席 5 あなたがバッドステータスを受けた直後に使用。そのバッドステータスを回復する。1シナリオに3回まで。
スワンスイマーズ 15 あなたが行なう攻撃のダメージを+2D。
イクシードユニット 15 セットアップに【肉体】を使用したダイスを+3個する。1シナリオに1回。
コーリングシステム 1 セットアップにストライクモービルに搭乗。
アンチエフェクトシステム 5 セットアップ使用。シーンに登場しているオーヴァード全てが行う判定ダイス-2。1シナリオ1回
ウェポンケース 1 UGN戦闘服Ⅱオート装備
マテリアル適合者 5
マテリアル:右手 25

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 18 25 170 0 213 25/238
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

命は廻る、死は巡る。絶えず全ては巡る。廻り巡った世界は空っぽな彼にどのような色を写し、どのように入れていくのか。今日も彼は彼を演じる。

履歴

独特な思想の持ち主。この世界は劇場であり、この世界全ての人間は皆演者だとおもっている。そして自分のことは主役だと感じている。

願いは超常的な力のない世界(クランケもアーツも存在しない世界)

齢7歳にして何もかもを奪われた、両親も友達も心も記憶も何もかも役者は失った。ある時クランケにみつかり、殺されそうになった。せめてもとクランケに抵抗した時に偶然災害が発生しクランケが死んだ。そこから彼はクランケを屠る狩人としての役に縋った。縋らなければならなかった。
赤月 恋とは幼なじみであり、恋の前なら彼は○○に縋らなくても自分を保つことが出来る。役者にとって恋は最後の人としての砦である。

時雨廻について

小さい頃は極度のめんどくさがり屋で悪ガキだった、授業をこっそり抜け出したらするのもザラな問題児、しかし類い稀なる才能の塊で出来ないことはないと言われるほどの天才児。もしこの世に主人公というものがいるのなら、それは彼を指すのかも知れない。誰よりも強く、誰よりも賢しく、誰よりも勇敢で、誰よりも明るく、誰よりも優しい彼の周りには必然と人が集まっていく魅力があった。まるで彼を中心に世界が廻っているような、そんな存在だった。あの日が来るまでは…

禁じられた記憶(赤月 恋の人は見ないで下さい。)

ガラガラと病室のドアが開く。
今日は8月3日夏の日差しがカーテンの後ろから漏れるほどの暑さだ。
「やっっっと明日退院だな!」
と、快活な少年は僕に声をかける。
「うん、早く家に帰ってみたいよ。」
と、僕は彼に応じる。
「あぁ、お前ずっと入院してたもんな。」
「うん、3歳の頃からだから…えーっと…何年入院だっけ?」
僕は手計算で7から3を引こうとする。
「今は7歳だから4年間だな」
「そうそう4年、兄ちゃんはすぐ計算できてすごいなぁ」
「学校に行けば誰だって出来るさ、今は夏休みだから退院しても空いてないけどな」
「友達…出来るかな…知らない土地だし、何より僕人と話すの得意じゃないし…」
僕が不安げに話すと兄はにっこりと笑いながら
「大丈夫、大丈夫、俺がみんなに紹介するって。それに…お前を紹介する時とっっっても面白いこと考えてるんだ」
と兄は邪悪に笑う。何かよからぬことを考えてる笑いだ
「何をするの?」
「ドッキリだよドッキリ、俺とお前の入れ替えドッキリ。俺とお前一卵性双生児?ってやつだからめちゃくちゃ顔とか似てるし、それに俺の友達俺に兄弟いるなんて知らないから絶対に成功するよ。」
「みんなのびっくりしてる顔が目に浮かぶぜ、ヒヒヒ…」
兄は楽しそうに僕にしょうもないドッキリを提案する。断ろうかと一瞬思ったけど兄があまりにも楽しそうなものだから、断ることもできず。
「分かった、兄ちゃんがいうならやってみるよ。ところでどう演技すればいい?」
「それはだな…」
僕は兄と違って出来が悪かったが、一つだけ兄に勝てることがあった。それは演技だ。お父さんとお母さんが僕の演技を見てとっても驚いていたのは今でも鮮明に覚えてる。それから子役としてのオーディションも受け、一発で合格。もし癌にかかっていなければ子役としてデビューしていた世界もあったのかなと病室の中でずっと思い耽ってた。
「ダメな感じで…って、おーい、聞いてるかー?」
そんなことを考えてると兄に意識を戻された。
「えーっと…なんだっけ?」
「はぁ、ちゃんと聞いとけよ俺の完璧なドッキリ大作戦。」
病室はとてつもなく暇だった、だからこうやって毎日のように兄が来てくれて話してくれる時が唯一の楽しみだった。両親共々仕事で忙しく毎日お見舞いには来てくれなかったので本当に兄は心の支えになってくれた。時には学校中だというのにこっそり抜け出してきてくれるほどだ。
「…ってやれば恋のやつはビックリして…」
今まで兄のお話で散々聞いてきた、人と明日会うのかと思うと小さな心に少しの不安と大きな期待が渦巻く。兄は僕と昔から違ってすごい人だ、誰よりも強く、誰よりも賢しく、誰よりも勇敢で、誰よりも明るく、誰よりも優しい。物語の主人公がいるのなら、兄のことを指すのだろう。
「…以上が俺の考えた究極のドッキリ大作戦だ!」
兄の長ったらしい大作戦の話は終わった。
「あ、もう16時20分だな。ママももうすぐ来る時間だ、お前をやっとここから連れ出せるな!さっさと準備しろよ終(おわる)」
「うん!廻(めぐる)兄ちゃん!」
僕はとびっきりの返事をしていそいそと整理を始める。思えばとても長かったものだ、齢7歳にとって4年はあまりにも長すぎる。癌になった僕のために家族にはとてつもなく迷惑をかけた。せめてものとして帰ってとびきりの元気な姿で向かわなくちゃ。希望が僕の体を廻る。ただその希望はすぐに終る。
16時24分、いきなり病室のテレビがある映像を映し出す。
『えー8月3日16時24分。天気はくそ暑い。…』
突如として大災害が襲いかかる。
「な、なんだ!」
そこらかしこから悲鳴が聞こえる、文字通り人智を越えた化け物が現れたのだ。
「あ…ああ…」
僕はあまりの恐怖に体が震えて動かない。
「よく捕まっとけ」
すると兄が有無を言わずに僕を抱えて、病室から脱出する。そこかしこから上がる悲鳴、そして湧き上がる死の匂い。
「う……」
思わず吐きそうになるがグッと堪える。
「はぁはぁ」
兄は僕を抱えてひたすら死から遠ざかる。臆病な僕と違ってこんな地獄が起きても兄は恐怖に負けずにひたすら逃げる。
「はぁ、とりあえず…下のママの車に…」
そう言ってひたすら群衆を華麗に避け兄は外に躍り出る。
外も思った通り地獄絵図だ、化け物達が大暴れしている。
「あ…ああ」
愛も変わらず僕は震えあがってろくに動けない。
「くそ、どこだ」
その間兄は化け物からバレないように車を探す。
「!あった、ほらあそこ」
兄がママの車を見つけた、遠目でよく見えないが父と母のシルエットが見えた。我慢の限界だった僕は車に行けば安全だと思い、兄を振り解き車へと走った。
「おい、待て危な…」
兄の静止を無視して僕は車まで走る。
そして僕が車で見たのは、変わり果てた父と母の遺体だった。
「え?」
それしか言葉が出なかった、何故?こんなことに?
気づいたら僕は吹き飛ばされた。
「いてて…」
日で焼けた暑いコンクリートから立ち上がる。そこには化け物と、兄が立っていた。
「早く逃げろ!」
僕は状況が飲み込めなかった、ただ考えるよりも先に足が動いた。
「くらえ、化け物」
兄が化け物と対峙してる。止めなきゃ。逃げなきゃ。止めなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。止めなきゃ。逃げなきゃ。逃げなきゃ。逃げろ。逃げろ。逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ……………
僕の微かな意志に反して足は兄と反対方向に向かってっていく。長年病室で培ってきた生きようとする意志が僕の体を支配する。
「っっっっ」
声にならない涙が出た。後ろでは何かが潰れる音。僕はひたすらにこの地獄から1人兄を犠牲にして逃げ続けた。


逃げて、逃げて、逃げて。ひたすらに逃げた。兄を殺して逃げた。
僕は兄を殺して逃げた。ひたすら後悔が頭の中を廻、それは終ことのない懺悔。この世界には神がいないからお前の罪は誰も許してくれはしない。お前は殺人鬼だ。お前に生きる価値などない。お前が代わりに死ぬべきだったんだ。廻の代わりに終が死ぬべきだったんだ。お前が主人公を殺したんだ、モブ……………
気がついたら不思議な武器を持つ人に保護された。
「君、名前は?」
「僕は…」
時雨終は死ぬべきだったんだ。
「僕…は…」
時雨廻の代わりに死ぬべきだったんだ。
「…時雨…」
お前は死んだんだ終、無能な終は死に、優秀な廻が生き残った。弱者は淘汰される。終のようなやつは真っ先に死んだ、生きているわけがない。ならば今生きてるのは?そんなの明白だろう?分かったならお前が唯一優れていることがあるはずだ。それを世界に見せつけてやれよ、時雨終。
(めぐる)時雨廻(しぐれめぐる)です」
その時から僕は時雨廻という皮を厚く厚く厚く厚く厚く被り、縫い付け、塗りたくる。このうちに秘めた狂気が消え去るまで、命着(めっき)を貼り続けよう。





死体の皮が突っ張ってるぜ?バケモノ。

雪山の獣
序章 

それは中学生の時ある春の日だった。あなたはいつものようにクランケを狩る為に山へと足を踏み入れた。幸いにも天気は良くクランケもほぼほぼ無傷で狩れるほどには調子も良かった。クランケ狩りに夢中になっていると日がだいぶ傾いていることに気づく。このままだと危険な為、下見をしていて目星をつけていた廃村へとあなたは赴く。
 廃村にたどり着いたあなただが、家々は思っていた以上に荒れ果てており、野宿と大差が無さそうである。それでもマシなところは無いかとくまなく探すと廃村から少し離れた場所に古びた教会が立っていた。

1章 少女との出会い

ギイ、軋む教会の扉を開く。中は思っていた以上に広く、暗く、そして寒い。目深まで被ったフードを揺らしながらコツン、コツンと大理石の床を歩く。奥の方まで歩いていくとぐったりと横たわる少女がいた。
 Q.脈は?A.弱々しく脈をうっている。Q.体温は?A.かなり下がっている。Q.外傷は?A.無し。Q.死んでる?A.生きてる。Q.どうする?A.…………このまま死なすのは、なんか嫌だ
 本来、こういった場所で火を起こしてはいけないだろうが状況が状況だった。その場に落ちていたカーペットを少女に被せ、持っていたライターで途中拾った乾いた木の枝に火をつける。とりあえずはこれで凍死はしないだろう。しかし、幾分待っても少女は目を覚さない。残る選択肢としては…。
 道中で剥いだ肉を手頃なサイズにカットし、水が入った鍋の中に途中で採取した山菜と一緒によく煮込む。沸騰し、灰汁を取り、少し冷ましたスープを少女の口元に運ぶ。何度も繰り返し幾分が経った時、やっと少女は目を覚ました。

2章 印象

「……」
少女が目を覚ました…それと同時にある疑問が浮かび上がる。どう声を掛ければいいんだ?人とのコミュニケーションでファーストアクションは大切だ。今からかける言葉で彼女が僕に抱く印象は大きく変わるだろう。
 ここはどこぞの王子様のようにかっこよくキザなセリフを言うべきだろうか?否、そんなことは恥ずかしくて到底出来ないし、なんならボキャブラリーがあまりにも無さすぎて演じることは難しい。
 ならばめちゃくちゃ嬉しそうに飛び上がり、オーバーリアクションをして喜びの感情を叫ぶべきか?
否、病み上がり相手にそんなことをするなどあってはならない、多大なストレスをかける可能性があるし、なんなら目が覚めたとき知らない人がそんなことしてたら人によっては恐怖を感じるかもしれない。
 心の中でどうしたらいいものかと思考し、動かないでいるフードを目深まで被ったいかにも怪しげな男に少女は声をかける
「助けてくださってありがとうございます…貴方はいったい?」
「………たまたま近くを寄った通りすがりの旅人だ…」
いきなり言われたものだから何一つ当てはまらない嘘をついてしまった。
「旅人さん…ですか」
「…そうだ」
なわけない、勢いで言ってしまったことを悔やむ。少女は何かを察して名前は聞いてくれないがそのせいでさっきの嘘を訂正するのが大変なことになった。
「ここには?何故きたのですか?」
「…死に場所を探しに…気づくとここに行き着いていた。」
これは…半分正解だ、ここに来たのは明確にクランケ狩りなのだが、死に場所を探しているのは本当だ。
「そんなことは…良くないです…何があったかは知りませんけど、そんな悲しいことして欲しくないです。」
見ず知らずの人の死を悲しみ、止める。この人はきっといい人なんだろう。だけど
「ならばとてつもなく重い罪を犯した罪人にも君は同じことを言えるのかい?」
僕はとても意地悪だ、我ながらそう思ってしまった。
「…それでも…私は同じことを言います。」
「…そうか」
最初の印象はとても最悪なものだった。

3章 赦し

 静寂の中、パチパチと燃える焚き火だけが、音を出してくれていた。
「…」
薪を配ながらこの居心地の悪い空間を耐える。自分で蒔いた種とはいえ、とても罪悪感を感じる。本当ならいい感じにここからお話しが出来るだろうけど罪人である僕にはそれは難しいことだった。
「…罪人ってどういうことですか?」
この静寂な世界を少女は裂いてくれた。
「…そのまんまの意味さ、許されざることをした罪人さ。」
そう、この間まで塞ぎ込むくらいには。
「許されないとは誰に?」
「それは…」
思っていない返答が来た、内容を聞いてくると思って話しかけられた時から容易していたのだが…誰が許さないと来たか…少し困るな…
「…自分自身さ」
散々悩みに悩み、迷った挙句に出た答えだ。
「なら、その罪を私が赦します」
想定外の答えが飛んできた。
「…」
唖然として黙ってしまう。
「こう見えて、私はシスターです」
そんなの見たらわかる。
「貴方自身が罪を許さないなら、貴方の罪は私が赦します」
まさか、地雷を思いっきり踏み抜かれるとは夢にも思ってもいなかった。
 

4章 友達

 想定外すぎた発言で眩暈がする。お前如きが僕の犯した罪を赦せるはずがないだろう?
「今まで様々な村で起きた様々な罪も赦してきました」
「例えば直近だと畑泥棒とか…」
スケールが違いすぎる、それと同時になんだかとてもバカらしく思った。
「ハハ、野菜泥棒を赦したか」
馬鹿らしくて思わず嘲ってしまった。
「ええ、他には万引きや仕事を放り出したこととか…」
ああ、この子がいた所はあんな災害が起きても平和だったんだな、羨ましいよ。
「でも、ここずっっっと神父さん以外ここに来てくれなくて…」
「その神父さんも最近来てなくて…」
「神父さんや、村の皆さんはどうしてるのでしょうか?」
唖然となったと同時に腑に落ちた。な~んだ"同族"だったか。
「外の様子も気になりますが、神父様から良いと言われるまで出るなと言われてますし…」
「神父様以外久しぶりに来てくれた貴方にお願いがあります、外の様子はどうなっているでしょうか?」
…なるほど違った、こいつは神父ってやつに守られているんだ。神父とやらに言われた事を律儀に守るいい子ちゃんだ。
「…外の様子が本当に知りたいか?」
「はい、本当にお願いします…」
困った…こういったものは苦手だ。真実を言うべきか嘘を言うべきか。とりあえず判断材料として質問をする。
「そういえば神父様が最近帰ってこないって聞くが、いつから帰ってこないんだ?」
「そうですね…いつもなら夜が遅くても2回明けたら必ずいるのですが最近はずっと夜が明けてもおらず、ずっと1人でした。」
毎日のように来てくれたら神父が飢えるくらいには帰ってこない。これだけでもう何を言うかは決まった。
「夜が明けたら、外に出よう。」
「え?でも神父様が外に出ては行けないって」
「実はな、僕は神父様から君を送るよう頼まれたんだ。神父様からもう外に出ても大丈夫だとも聞いている」
「え?本当ですか?もうお外に出てもいいんですか?やったー」
思った以上に単純だった。まさかとは思ったがここまで警戒心がないのは驚きだ。
「あぁ、もちろん好きなだけ外に出ていいって聞いたよ」
「やっとお外にいる怖い獣が居なくなったんですね。」
「獣?」
恐らくクランケのことだろうが一応書いておく。
「はい、神父様が仰られてました。外には恐ろしい獣がいると。いうには、獣は頑丈でどれだけボロボロになっても立ち上がる。獣はこの世のものはとは思えない憎悪を持って人に襲い掛かる。獣は大切なものを奪い去っていく」
「という恐ろしいものです。でも神父曰く神様に祈りを続けていれば神様が守ってくれるのです。ですからずっと私はここで祈りをし続けています。やっと祈りが届いたんですね。」
「…そうだね」
 僕はこれ以上何もいえなかった。
 その後も彼女とずっとお話をした。
「…だったんですよ。あれ?」
荘厳なステンドグラスに日が差している
「気づいたらもう朝になっちゃいましたね、ずっと人と話して無かったから楽しくて夢中になって」
「私たち、もう友達ですね!」
「…そうだね、もう友達だね」
 僕に友達ができた。困ったな…悲しむ人が増えるのは嫌だったんだけどな。嫌なはずだったのに不思議と悪い気持ちはしなかった。

5章 最悪

 日が明けてからは早かったボロボロになってしまった。家屋を見て涙を流すシスター。
「これはね…」
僕は適当に思いつく限りの嘘を言ってなんとかその場を制す。それをひたすら繰り返す。あの地獄を話すには時間がかかるだろう。
 クランケから見つからず、下山するのは至難の業だ。いつもならさっさと殺していくのだが友達の手前。そんな事が出来るはずもない。ずっと不安で震えている彼女を支えながら。下山を続ける。
 麓付近の雪原に付いた、ここさえ超えたら街が見えてくるはずだ。
「あと、少しだから…」
 彼女はこくりと震えながら頷く。薄々悲惨な世界に気付いているのかもしれない。とはいえ護ってくれていた存在がいなくなった以上、一歩踏み出さなければ死ぬだけだ。友達を失うのは嫌だ、本心からそう思っていた。
 そんな折、彼女の背後に影が被さる
「あ…」
「な?」
突如として雪の中からクランケが現れ彼女に襲いかかる。
「間に合わ…」
 僕の手が届くより圧倒的に先にやつの手が届く。またなのか?また僕のせいで大事な人を失ってしまうのか?
 絶望と焦燥が同時に襲い掛かる、走馬灯のように時間が何倍にもゆっくり感じる。ゆっくり、ゆっくりとその凶行が彼女を襲い掛かろうとしている。そんなときだった
 ぐしゃりとクランケの体が潰れる。ゆっくりとした時間のはずなのにその一撃だけ圧倒的な速さを誇っていた。
そこに立っていたのは
「神父様…」
斧を持ったクランケだった

6章 呪い

 彼女に襲い掛かるクランケを潰したのは斧を持ったクランケだった。
「神父様…」
彼女が恐怖と安堵が入り混じった声を出す。
神父と呼ばれるクランケはゆっくりと獲物を潰した斧を上げる。斧が上がっていくほど僕の中で不安が増す。
「っっ!」
無意識だった、無意識に彼女を突き飛ばし転がる。
「え?」
彼女から驚きの声が上がる。
僕も驚いた、自分の体が勝手に動くなんてあの時以来だ。ふと、さっきまで彼女を突き飛ばしたところを見やる。そこには、
 [血濡れた斧が深々と刺さっていた]------
その瞬間、僕は斧を持ったクランケにナイフを突き刺す。こいつは危険だ僕の本能が警告を発する。
逃げろ、お前には無理だ。…僕の悪い所だ、死に場所を彷徨ってる死にたがりのくせに、死にたくない。本当に危険な場所からすぐ逃げようとする。本当にクソッタレな呪いだ。
 少しだけ背後を見遣る、声にもならない悲鳴をあげ震えて、動けない彼女がいる。斧を持ったクランケが僕を見遣る。どうやら僕は敵として認定されたようだ。
 その瞬間僕は直感する、ここが僕の死に場所だ。こいつが僕の処刑人らしい。なるほど、いかにもな処刑人だ、血濡れた斧を持ち、獣のような息遣いで僕を無慈悲に殺そうとするその殺意。このシチュエーションもうってつけだ。
「早く、逃げて!」
僕は後ろにいる彼女に声をかける。それを聞いたか否か、彼女は前来た方に走り出してくれた。良かった、これで死ねる。僕は目の前に聳え立つ死神を迎える。これで終わりか、なんだか今思うと呆気ないものだったな。処刑人の斧が振り下ろされる。走馬灯が廻、本当にクソッタレな人間だった、人に害しか与えないような人間だったけど、最後の最後で友達を助ける事が出来た。極悪人にしてはマシな最期だろう。僕の体は振り下ろされた斧を受け入れようとした。しかし、ある疑問が僕の頭を廻。
 Q.彼女は本当に無事か?こいつが僕を殺した瞬間彼女に全速力で走って殺さない保証はどこにある?すぐに殺されてはまずくないか?
A.確かにそうだけどこんなやつどう頑張っても勝てっこ無いよ、どうせ抵抗しても大した時間稼ぎにならない。それに僕はもう疲れたんだ、楽にしてくれ。
 Q.彼女の逃げた方向、下山ルートの反対だよね?てか元来た場所の方角に行ってるから不味く無い?
 A.不味いね。
 ひとつだけ死ねない理由が出来た、そこからの行動は速かった。被っていたフードを脱ぎ捨て、僕は今まで出したこともない速度で体を捻って斧を回避する。獣もこれにはどうやら少しだけ驚いたのか、低く唸る。
「ごめんね、処刑人」
高速で捻った体を利用して処刑人の首筋にナイフを突き立てる。
「どうしても死ねない理由が出来てしまった」
ナイフを引き抜く、僕は経験したこともないほどの殺意を浴びる。殺意に強張る体、恐怖で震える心。それを押さえ付ける。
「どうやらさ、神様はまだ僕を赦してはくれないみたいなんだ」
「もっと、苦しまなくちゃいけないってさ」

7章 獣

 「オォォォォ」
 処刑人は声とは呼べない雄叫びを上げる。その叫びには本気で僕を殺すという純粋な殺意が読み取れる。大っぴらなトレンチコートを翻し処刑人は横一文字に斧を振るう。
 姿勢を極限まで低くし、それを躱す。
そのままとんでもない速度で斧を振りあげ、下ろす。
 素早く横に飛んで避ける。
不思議と最初は追いきれなかったはずの斧の軌道が見える、走馬灯の中でも追いきれなかった斧の軌道が見える。体が今までで一番軽やかで、どんな動きにも対応してくれる。多分これがきっと俗に言うゾーンってやつなんだろう。
 自分よりも遥かに格上の処刑人の攻撃を次々に否していく。処刑人は声を荒げる、どうやらすばしっこい罪人は初めてのようだ。しかしここで問題がある、それは攻撃が通らないことだ。体を覆う分厚いトレンチコートのせいでナイフが満足に体に到達しない。急所であろう首筋にナイフを深々と突き刺したはずなのに何故か軽傷なのだ。そう、こちらからの有効手段が一切存在しないのだ。
「オォォォォォォォォ!!!!!」
処刑人は地団駄を踏む、攻撃が当たらないのが相当頭にきてるようだ。獣の攻撃がより一層速くなる。それに呼応してか僕の体も早く躱す。
 いつまで経っても僕からの攻撃は分厚いトレンチコートから刺すだけ、こんなんじゃジリ貧だ、いつか僕は負ける。
 獣の攻撃が来る、避ける、来る、避ける、来る、当たる、当たる、当たる、当たる、当たる、当たらない、当たる、当たる、当たる、当たる、当たる。
 斧が僕の肩を掠める、掠めた肩から血肉が飛んだ。僕の脇腹を掠める、脇腹が切れた。膝を掠める、膝が切れ切れになる。生物には限界があるらしい、その限界も生物によって上限が違うらしい。どうやら僕には限界が来てしまったようだ。光速すらも超えるほどの斧に対して疲れ果てた体はまともに動いてくれない。なんとか致命傷は避けているが後どれくらい持つか。少しずつ、少しずつ、体から消えていく、もはや痛みも感じなくなってきた、体から流れる血の温かみもとうに消えた。
「もう、いいよね。頑張ったよね。もう赦されるよね」
斧が右腕を肩から引き剥がす。
「さようなら…ありがとう…」
終ゆく意識の中僕は…
「オォォォォ!!」
 処刑人は歓喜の叫びを上げる。
 処刑人はゆっくりと斧を大きく振り上げ降ろす。
 獲物は地に倒れ伏した。
 


 ゆっくりと立ち上がった獣は最後に獲物に対してこう叫ぶ


 「手負いに獣ほど恐ろしいものはないって習わなかったか、処刑人。僕の勝ちだ。」
 

終章

おかしい、あんなに優勢だったのに。奴と比べて体に損傷は少ないはずなのに。獲物は立たずにいた。体が動かない、いや、体の感覚がない。いつのまにか体の感覚が消えていたようだ。奴には少し刺されただけだ、痛みも感じていない。何故だ?何故負けたのだ?
「冥土の見上げに教えてやるよ…お前が負けた理由を」
「お前にはほとんどダメージがない、それが敗因だ。」
「人体には急所がある、そこに損傷を受けると様々な障害を受ける。」
「戦闘ってこともあってアドレナリンも出てただろうし、軽度の傷なんか気にもとめなかっただろう。それが敗因だ。」
「そして最大の敗因は…貴方が最後まで人であり続けたことですよ、キュマイラであろう貴方が頑なに人間の体であったおかげです。ありがとう神父様。」
「貴方は苦しく死ぬ人間じゃない、今楽にします」
「バンッ!」
銀色の弾丸が獣の腹を貫く
「バンッ!」
銀色の弾丸が獣の頭蓋を掠める
「バンッ!」
銀色の弾丸が獣の胸を貫いた
獣が最後に見た光景は目に大粒の涙を浮かべた友達だった。
「どうして?」
獣は地に倒れ伏す。



「獣は倒しましたよ、神父様(おとうさま)…」

獣は頑丈でどれだけボロボロになっても立ち上がる。獣はこの世のものはとは思えない憎悪を持って人に襲い掛かる。獣は大切なものを奪い去っていく

「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
少女は逃げるように去っていく。





あぁ、お前はどうして人に害しか与えないんだ?なぁ?

雪山後書

製作中、雪山の獣から高校までの経緯を書く予定。

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 0
54
54

チャットパレット