コミュ障の中学生。顔は多少良い。それなりに家事はできる。
臆病な自尊心を抱え持つ、愛に飢えたかまってちゃん。
自分が普通になれないのは環境が悪い、だから頑張っても無駄だとよく嘆く。
しかし本当はそこから抜け出したいと思っている。

色々あってオーヴァードとして覚醒しつつ、いまも中学生している。
最近は友達もできてだいぶ元気になった…が、結果として元来のコミュ障ぶりが表面化することとなり、色々と"痛い"。

・両親の海外移住、過去の長期入院により幼い頃から孤独。小学校にも殆ど通えず、友達もいない。
・性格が拗れ「自分が普通になれないのは環境のせい。環境が悪ければ頑張っても無駄」と自分の現状を合理化した。
・しかし中学に進学後、コミュ障なりに頑張ってみたところ友達ができて少し明るくなった。
・中２のある日、史上初の「友人達との遊びの約束」を取り付けることに成功。
・翌日に約束の日を控えた帰り道で、騒動に巻き込まれて死亡。オーヴァードへ覚醒する。
・色々あって今はそれなりに前向きに中学生をしている。何かあればUGNにも協力します！　的な立場。

短い人生の中で、荻野星羅は一つの確信を得た。
「自分が普通になれないのは環境のせい。環境が悪いなら何をしても無駄」なのだ。

両親から愛されていると思ったことはない。会ったことも数えるほどしかない。
入院したとき、退院したとき、入学することになる中高一貫校の学費を払いに来たとき。
ときどき電話をするけれど、何を話せばいいかも分からない。

友達だっていない。小学校の記憶も殆どない。
ないないない。ないない尽くし。環境が悪い。
こんなのどうしようもないじゃない。私はなんにも悪くない。
頑張ったって、しょうがない。普通になんて、なれっこない。

そう思っていたのに。中学校ですこし頑張って喋ってみたら、受け入れてくれる人達ができた。
同じように不安を持っている子。元気で明るくて私にも優しい子。厳しいけど勉強を教えてくれる子。
いろいろな人が友達になった。よく「こみゅしょう」って言われても、それすら心地よく思えた。

不器用ながらも関係を深めていき、やがて一緒に遊ぶ約束を取り付けた。
それはまさしく、かつて絶対に手に入らないと思っていた、友情の形。
普通の人なら誰でも持っている、幸せ。

荻野星羅は、普通になった。

頑張ってみて、よかった。明日がとっても楽しみだ。
帰り道がひときわ輝いて見える。きっととっても良い日になる。
友達の連絡先が詰まったスマホを握りしめて、荻野星羅はスキップを踏みながら歩








薄れてゆく視界の中。自身と瓜二つの幻影が、ニヒルに嗤っているのが見えた。