備考１：料理より戦闘の才能があるようで、彼女はそれについて時々考える。食べるたびに強くなる自分を喜びながらも、どこか虚しさを感じている。彼女は心から食べることを楽しんでいるようだが、「ガストロノミー」の食欲はプログラムされた機能でしかない。彼女は戦いよりも美食を好み、一緒に美味しさを分かち合う友達が欲しいと思っている。繊細な五感を兼ね備えた姉（デジタル・コック）のように、芸術的な”ごちそう”を作れるようになりたいとも思っている。とはいえ、まあこれはプログラムによる"思い"なのかもしれないが……

備考２：本人曰く、「まちがわない」らしいが、エラーや過失は度々起こり、その都度自動修正が入る。戦力にはなるが、ロボットにしては少し頭が弱いのかもしれない。

備考３：開発者は宇宙食研究家のフィーダ（feeder）。フィーダ（feeder）はデジタルレストランの管理人であり、美食家。いつでもどこでもすべての人が世界中の料理を食べれるようにと、デジタルレストランを開設した。

デジタルレストラン：
プログラム「アストロノミー」によって運営される仮想空間であり、そこでは多種多様の"ごちそう"（デジタル・フード）を楽しむことができる。「アストロノミー」とは、フィーダ（feeder）の精神のコピーをベースとした独自の人工知能であり、通称"デジタル・コック"と呼ばれている。「ガストロノミー」は「アストロノミー」の姉妹品であり、彼女たちはクオリアを持つコンピュータとされている。

デジタル・フードのしくみ：
デジタルコックの“インプレションセンサー”が味や匂いや質感などのおいしさを電気信号に変換し、電気信号は“味のプログラム”を介して料理・おいしさに変わる。このようにして変換された料理はデジタルレストランに保存され、管理される。デジタルレストランの来訪者はそれらの料理を液晶から出現するホログラムとして食べることが出来る。
また、デジタルコックの”インプレションセンサー”に自身のセンサー（脳）を繋ぐことで過去に食べた料理や想像力による料理を再現・創造することが出来る。

ミノリ：薬をつまみ食いさせてくれる謎のともだち（勝手につまみ食いしている）。薬のデータはデジタル・レストランに送信されているのかもしれない……

阿波崎チアキ：時々料理を作ってくれて、食材を提供してくれる人。薬山村へ来てすぐに阿波崎食堂の常連になった。しょっちゅうPC1やPC2を連れて、食堂のご飯を食べに来たり、厨房を勝手に使って料理を作ったりして、思う存分楽しんでいる。

PC1:珍しい食べ物やおいしい料理を食べさせてくれる人。調理や食材についての知識を教えてくれる頼れる友人。レネゲイドビーイングであることは多分バレている。

PC2:起動後に初めて会った人。お腹が空いていそうだったから、シェフロボットとしてサポートしたいと思った。

PC3:自分と似た武器を使う人なので、そのうち剣術を教えてもらおうと思っている（武器である歯やカトラリーを上手く使えるようになりたいらしい）

｜毒見役《προγεύστης》
προγεύστης（プロゲウステース）は、ギリシャ語で「先に食べる人」「前菜」などのニュアンスを持つ単語のよう。アリストファネスの『雲』では〈毒見役〉と訳され、”祭における公けの宴会の折に出される食事がまちがいなく作られているかどうかを調べる役を有するある公けの団体である（アテナイオス・171・B-F）”と説明されている。

｜Pathologisch Drauma《たくさんのごちそう》
pathologisches（パトローギシェス）はpathologisch（パトローギシュ）の語尾変化であり、病理的、病的な、等の意味を持つ。私はこれに、過剰な、たくさんの、というPC4的なニュアンスを持たせてみた。Drauma（ドラウマ）はジェームズ・ジョイスの作品に登場する造語であり、この単語にはDrama、Trauma、Traum（夢）、Dreamといった連想がある。PC4的に言えば、”ごちそう”と解釈されるだろう。

｜憂鬱者《メランコリカー》の食卓
憂鬱者と訳されることの多いMelancholikerは、melancholyと同様に憂鬱質・憂鬱を意味する。ルネサンス以降の時代において、メランコリーは創造性や知性に関係する気質として神聖視されていたようだ。メランコリカーという言葉は、権威ある人物や芸術家の形容として使われる他、ベンヤミンにおける歴史哲学の文脈でも登場する。そこでは、メランコリカーは世界を一つの統一体としてではなく、断片化された遺骸のような世界として解釈する者、象徴ではなくアレゴリーによって解釈する者とされている。メランコリーはベンヤミンにとって、認識の病理ではなく、世界史の断絶を把握する思考の形式である、とのこと。

｜機械仕掛けの味覚《アケルブス・エクス・マキナ》
みなさんご存じのdeus ex machinaより。acerbusはラテン語で苦味。

｜美食家《ガストロミー》
ガストロノミーとは、食事と文化の関係を考察すること、食に関する文化的要素を考える綜合的な学問体系とされている。本来コードネームならGastoronome（ガストロノーム）と書くべきところをGastronomyとしている。凪野実夏は｜美食家《ガストロノーム》であると同時に｜美食学《ガストロノミー》をつかさどる一つのデータベースとして機能している。また、ガストロノミーの姉妹品である”デジタル・コック”には、天文学を意味するAstronomy（アストロノミー）という名称が与えられている。