永見昴。UGNのレネゲイド研究者、永見孝三の一人娘であり、"バンダースナッチ"千木良昭仁によって殺害された哀しい少女。私たち夫婦は彼に同情するし、共感もする。そして同じ道を辿ろうとしている。なぜなら、私たちの子供もまた、ジャームによって命を落としたからだ。

結局、永見昴は、レネゲイドビーイング『ピグマリオン』の身体を借りることにより、この世によみがえった。ああ、才加。私の可愛い才加。甘いものが大好きだった才加。トランプが好きでよく遊んでとせがんだ才加。運動は苦手だったけど、ピクニックに行くのが好きだった才加。私達に優しく笑いかけてくれた才加。

瓦礫の崩落から私たちを守って、ぺしゃんこに潰れて死んでしまった才加。

ジャームによる研究所の襲撃。非戦闘員が多かったこちら側は蹂躙される一方だった。でも、ノイマンに覚醒していて、才加は、私たちを守るために懸命に戦った。そして、ジャームを退けながらも、力尽きた。

そんな才加を、『生き返らせた』女性がいた。"プランナー"都築京香。彼女は、私達にとある取引を持ちかけてくる。

「人の愛が、大切な物を形作るとしたら——あなたがたは、それに縋りますか？」

私たちは頷いた。

「では。
私のプランに御協力ください。
——大丈夫、貴方たちの望みは叶いますよ。」

……そうして、都築京香は、『私達の才加への愛』、そして、『生きていて欲しいという願い』、最後に『才加が生きているという噂話』を元に、オリジン:レジェンドに分類されるレネゲイドビーイングを作り出した。そして、我々はゼノスへ移り、才加の存在維持に影響が出ないよう、一切の接触を経った。

このデータが才加の目につくことは無い。だから、せめて、この場でしか謝れないから——

ダメなお母さんでごめんなさい。

頼りないお父さんでごめんな。

どれだけ離れていても、二度と会えなくても、愛してるからね

産まれてきてくれてありがとう。自分勝手な親で、本当にごめんな。

——以上、レネゲイドビーイング『浅葱才加』についての報告を終了する。なお、このデータはゼノスの外部に公開すること、口外することの一切を、"プランナー"都築京香の権限の元禁ずる。また、ゼノス外部の人間がこのデータを目にした場合、"プランナー"都築京香が察知し、警告を——

「………………。
感動的ですね？ そうは思いませんか、このデータを読んでいるそこの貴女、あるいはあなた、もしくはアナタ、または貴方。

このデータが貴方々に読まれているのは、プラン外のことです。ですが……それも構いません。それが、『彼』の成長に繋がるなら。

ですがもし、貴方々が『彼』の成長を阻むならその時は……ふふ、余計な警告だったようですね。

それでは、いずれまたどこかで会いましょう」