血分士郎の若さゆえの過ちによって生まれた子

血分士郎は、根が真面目で、どこまでも純朴な少年だった。
母親を助けたい一心で、中学生ながら年齢を偽って働きに出ていたらしい。
エグザイルの能力で肉体を組み替え、20代後半の屈強な男の姿を得て、日雇いの肉体労働に従事していたという。
自分は“家族の役に立てている”という満足感、大人の世界に触れた高揚感。その浮ついた心に、俺の母親がころりとやられた。
曰く、「鍛え抜かれた肉体と子供のような笑顔のギャップ」にイチコロだったそうだ。
うちの母親は恋愛に積極的な性格だったし、士郎に“大人の女”の魅力に抗えるような強さはなかった。
結果として、2人はいつの間にか恋仲になり、関係は深まり……俺がこの世に生まれた。
だが、母親が妊娠を告げたその時、士郎は初めて「実は14歳の中学生だ」と打ち明けたのだ。
そこから先は、散華ばあさんを巻き込んだ修羅場だったと聞いている。
結局どうにか俺は生まれたが、「なぜ俺の苗字が“血分”じゃないのか」という話をしだすと長くなるので割愛する。
とりあえず、父親らしいことをしてもらった記憶は、ほとんどない。

生まれ持った屈強な肉体

士郎が“屈強な体”で俺を作ったからかどうかは分からないが、俺は子どもの頃から人並み外れた力を持っていた。
特に鍛えずとも、筋肉は自然についていたし、病気ひとつしなかった。
丈夫な体にだけは──まあ、感謝してやってもいい。

目覚めた力

オーヴァードとして覚醒したのは一年前。そこから苦労の連続だ。
ジャムの瓶を開けようとして粉砕したり、ドアノブを握り潰してトイレに入れなくなったり。
ろくにエフェクトも扱えないのに、膂力だけが飛び抜けているという、なんとも扱いづらい能力だった。
けれど、それでも重ねた年齢なりに経験を積み、独自に磨いた戦闘技術で、UGNの中ではそれなりに活躍できた。
今では、異例の速さで支部長の座に就いている。
支部長職は、世界の裏側を少しだけ覗かせてくれる立場らしく、割と楽しくやっている。

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