どいつもこいつもあたしの父親が俳優だからって媚びへつらってきて鬱陶しい。
　みんなあたし越しに父親の事を見ている。
　誰も、誰もあたしのことを見てくれる人なんていない。

　だからあたしはワガママに振舞った。
　演技なんて父親から嫌と言うほど見せられた。
　案の定みぃんな掌返してくる。
　嫌われるのも、悪口言われるのももう慣れたし、何とも思わない。
　
　そりゃあ死んでも当たり前って事だよ。
　なのに、あたしはまるでまだ未練があるだろうと言わんばかりに"覚醒"したんだ。

　「あたしは、まだ生きてていいのかな……」

　――“焦熱の血剣” 屋上でひとり呟く。
　

　あの日以降もあたしの日常は変わらない。
　ひとりがいい。それを選んだのはあたしだから。
　けれど相変わらず視線の先にアイツはいる。
　ひとりじゃないんだなって思い知った。

　だってあたしの存在なんて誰も見ていない。
　あたし自身に価値なんてない。
　皆あたしの父親しか見ていないんだから。

　それなのにアイツは、霜原湊は願ってくれた。
　生きててほしい、と真剣な顔で言ってくれた。
　それに報いたい、と他人に対して思ったのは二回目で同一人物なのがおかしいところだけど。
　彼の賢者の石を使う回数を減らすために今あたしに出来る事は訓練しかない。
　アイツとあたし。監視し合っているけれどあたしが強くなってしまえば彼はもう｜そんなもの《賢者の石》に頼らなくて済むかもしれない。

　「……あたしの生を願ったのなら、アンタの生も願わせなさいよ」

　だからどうか幸せになって。
　そのためなら手伝いは幾らでもする。
　アンタにとってはそうじゃなくてもあたしにとってはそれくらいの恩を受けたんだから。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　――END