自分の記憶の一切がなく、気が付いていたら無人の屋敷で倒れてた。

手掛かりを探すと屋敷は「ウォルター・コービット」という人物の所有物であると分かった。
また、その人物がD市立高校の新任の非常勤の保健医だったという事も分かった。
屋敷には自分以外誰もおらず周辺住民に確認しても人付き合いがなかった為、家主の姿を誰も姿を知らないと言われた。

自分が何者か、どうして此処にいるかも分からなかった。
これらの事情を警察や学校に伝えた結果、状況的にウォルターコービット本人だと判断された。
※少なくとも免許証には自分の顔が映っていたし、書類に不備はなかった。

取り敢えず『ウォルター・コービット』として生活してみる事にした。
保健医を続けて半年以上が経過したが、日々はそれなりに充実していると感じている。

今現在D市立高校で保健医をしている人物と屋敷の本来の持主は別人。
屋敷の本当の主は邪神召喚の為にD市に潜伏していたFHエージェントだった。

このFHエージェントはUGNの目を欺く為に、別の人間に精神転移を行い別人になりすまそうとした。
誤算だったのが、この犠牲者が側にあった"恐怖のマスク"に見初められており、仮面の力によって弾かれてしまった事。
本人の魂は身体ごと空鬼と呼ばれる神話生物に次元の彼方に捕えられてしまった為、痕跡が一切残らなかった。
工作で用意した戸籍や財産等がそっくりそのまま用意した人間に奪われてしまったのである。

名前はメアリー・スー。年齢不詳だが見た目は10代前半。
ウォルターコービットに攫われ、精神を乗っ取られた筈だった人物。
邪神招来の為の生贄として用意されていたが、若い身体と精神力に目を付けられ乗っ取りの対象に選ばれた。
しかし知らない内に屋敷にあった"恐怖の仮面"の持主になっていて魔術師の支配を打ち負かす事が出来た、というのが顛末。
・・・なのだが、メアリー・スーという人物はこの世界のどこにも存在していない。

目が覚めて以来、彼女はウォルターコービットとして、D市に生活の根を下ろしている。
保健医としてD市で過ごす内に数度神話事象に巻き込まれた事で、神話知識を少しずつ蓄えている。
また同様に保健医として障り無いように独学で医学を学んでいる。

彼女は血を見ると興奮するという性質を持っている。
これは自分で周囲と違い異常であると気がついて自制している。
恐怖の仮面が目をつけて奴隷にしたのもこの点が強い。
大義名分を手に入れた状態では、仮面が引く程の活躍を見せてくれる。

彼女にとって人は"花火の上位互換"。火薬が血。
曰く【傷つける事は花火に火をつける事。血が噴き出る様は花火が燃えるのと同じ事】。
そんな感性と価値観の持主である。
彼女にとってはこの世界のどこを探しても鮮血に勝る綺麗な光景は存在しない。
チェーンソーを愛用するのは彩り易さが他と違うから。

理性でこの感情と衝動を抑えて社会的に振舞っている。
今のところは、まだ。

自身の記憶について秦九十九に相談した事がある。
内容も分からいまま恐らくの知り合いであろう相手の手伝いをしていたが、知らずのうちにFHに協力してしまっていた。
不安に感じた彼女は屋敷に残っているアイテムや訳の分からない邪神の資料等を彼に見て貰った。
そのおかげでFHの邪神召喚の計画を知る事が出来、秦九十九と共にこれを阻止する事が出来た事がある。

この一件で自分はFHに所属していたと知った(実際は違うが)。
その上で彼女はFHを抜けてただの保険医としてD市立高校の生徒たちを見守っていこうと決めた。
秦九十九とはそれ以来、親戚の叔父さんの様な距離感でともに神話事象について学んでいる。

屋敷に残っていたFH専用アイテムやサポートロボ、関連するクトゥルフ神話に関する資料は今後の為に有効に使っている。

元々はFHエージェントの"ウォルターコービット"が活動の拠点にしていた屋敷。
近所付き合いもなく、夜な夜な怪しげな儀式を繰り返していた為、『悪霊の家』と呼ばれていた。
FHエージェントとして武器や防具を整備する施設と情報収集の為のコンピュータールームが完備されている。

データ的に強いので個人用。