自分のことを魔王と自称する中等部3年E組の女の子．人前では常に勝ち気で自信たっぷりに振る舞うが，困っている人にはすぐに手を差し伸べ助けようとするくらい根はいい子．部活は自身が設立した『魔王部』という部活に所属しており，放課後は魔王部の活動に勤しんでいる．魔王部の活動内容から風紀委員や番長連と衝突することが度々あり，そのたびに親友である森中美咲が場を収めるということを繰り返している．そのためか，一部組織からは警戒されており『不良生徒』のレッテルがはられている．
過去の経験から，己の鍛錬は欠かさない子であり，そのかいあってかオーヴァードとしてのランクはS，さらに模擬授業Rファイトにおいて個人部門でチャンピオンとなるほどの実力である．戦闘には己の体を武器とした「魔王流格闘術」を扱う．これは「魔王のみが扱うことができる特別な格闘術」という設定で彼女が独自に編み出した格闘術であり，アニメや漫画などで彼女が気に入った技を格闘術として独自に昇華させたものである．技名の頭には「魔王流」がつき，周りから見ればバカっぽく聞こえそうだが，侮ることなかれ，その威力は本物である．
アカデミアには中学に上がる際に，UGNより提案があり，オーヴァードと一般人が共存する学園という響きから興味を持ったため，アカデミアへの進学を決める．もともとUGNは神無月エマのみアカデミアに進学させるつもりであったが，神無月エマが『どうしても』と駄々をこねたため，森中美咲もアカデミアに進学することになった．

「自分の収める街の治安は魔王自ら赴いて維持するべし」という理念のもと神無月エマがつくった部活．活動内容は主に，街に異常が起きていないかのパトロールと学園島の困っている人の依頼を聞いて手助けするといったような自警団に近い内容である．現在部員は部長である神無月エマと彼女の親友で副部長でもある森中美咲の二人のみである．

彼女が魔王を自称するようになったのは，彼女が過去に読んだ本が影響している．内容としては，永い眠りから覚めた魔王が勇者に倒されるまでの話を書いたものである．この物語に登場する魔王が強くて，かっこよくて，配下にも慕われていて，彼女にとってその魔王はとても輝いて見えた．故に彼女は自分のことを魔王と呼び，その物語の魔王を目標とするようになった．彼女は魔王を倒し，世界の平和を取り戻す勇者よりも世界を支配する魔王に憧れたのである．

神無月エマはごく普通の平凡な家庭で生まれた．快活で元気な子であり，友達もいて，「よく遊び，よく学び，よく食べ，よく寝る」を体現したかのようなどこにでもいるような子であった．しかしただ一つ，他の人と違う点があった．それは超能力のような不思議な力が使えること．彼女が物心ついた時からその力はあった．まだ幼かった彼女はこの力を魔法が使えると言って喜んで，友達が困っているときにその魔法を使って，友達を助けていた．両親も未知の力があるにもかかわらず，彼女をこれまでと変わらず愛した．しかし，力の行使には危険を伴うものである．ある日，力の制御ができなくなり，彼女の幼馴染である森中美咲に重傷を負わせてしまう．彼女は病院に運ばれ，能力による事件のためUGNが介入し，関係者には記憶処理が施された．事件後，エマは能力を制御できなかったことからチルドレンとしてUGNに通うことになる．しかし，友達を傷つけたショックから，自分の力を忌み嫌うようになり，「こんな力はない方が良かった」と考え，あまり訓練に身が入らなかった．また，彼女に対する悪いうわさが立つようになり，周りが彼女から次第に距離を取るようになった．
ある日，UGNで彼女は尋ねた．「なぜ力を振るのか」
「それは自分で考えることだ」と返された．その問いに彼女は「力なんてない方がいい」と答えた．あるとき，力を振るう理由がわからなくなり，UGNを脱走した．途方に暮れていると，気づいたら彼女がよく遊んでいた公園にたどり着いた．そのとき突然雨が降り出したため，遊具の中に入り雨をしのぐことにした．
遊具の中でしばらく，うずくまっていると……
「こんなところで何してるの？」
とてもやさしく，懐かしい声が聞こえた．顔を上げると，そこには森中美咲がいた．なぜ彼女がここにいるのか，なぜ彼女が声をかけてきたのか，混乱していると彼女は，けがが治って退院したこと，重傷を負って死にかけたことでオーヴァードとして覚醒したこと，自分もUGNに通うことを話した．その話を聞いたエマは罪悪感から涙を流し，ただただ彼女に謝った．自分が彼女の人生を狂わせたのだと．しかし，彼女はエマのことを許し，受け入れただけでなく，「あなたと同じ世界が一緒に見れる」と喜んでいた．
この出来事の後，神無月エマはUGNでの鍛錬に励むようになった．「なぜ力を振るうのか」という問いに彼女は「身近にいる大好きな人を守るため」という答えをだした．他人とは違う力を持ってもなお愛情を注いでくれた家族，人生を狂わせたにもかかわらず彼女を許し，友達としていてくれた幼馴染，彼女たちをこの世界の脅威から守るために強くなると心に誓った．

森中美咲