彼は非常に物腰柔らかい牧師だ。
海よりも広い心、山よりも高き信仰心。それらをもって多くの子羊を説いている。

彼にとって神様というのは、「生活の一部」である。
朝に起きてお祈りをして、食事の前にも、そして眠る前にも。
「クジナ」という名前も彼の持つ名前なのだそう。誰がなづけたかは覚えていない。

彼は時折牧師とは思えない挙動を取る。
聖書と十字架を交互に見つめては、「懺悔にはどっちで叩いた方がいいんでしょう」と
ひとりのシスターに尋ねたそうだ。シスターはもちろん「どちらでもありません」と言った。

しかし、悔い改めないジャームに対して、彼は光の剣一本で叩きのめしてしまった。
聖書も十字架も、いらないらしい。

彼は常識外れだらけ。
男なのに、シスターベールを被っている。夏でも構わず。
「これ、落ち着くんですよ」と静かに呟いた彼の真上には、太陽が注いでいた。

それどころか、彼、あまり金銭に頓着しないんです。
仕事で与えた報酬も、だいたい絵画を買ったりしてすぐ消費してしまうんです。
そのくせ、食費を一切考えないから、困ったものです。
スープより「ゴッホのひまわり」を見つめる方が好きなのでしょうか。

あいつは姿が時折見えない。
ふと影に溶けては、後ろから切りかかられているんだから。
「ごめんなさい、これがもらった仕事なんです。」
そいつはそう言って、静かに剣を振り下ろした。

なんだか、少し腕の色がなくなっているような気がする……
まあ、死んだらこうなるんだろうか。

宇宙からの色。それが20XX年に来訪。
研究することも敵わず、多くの研究員を発狂させたために隔離状態にあった。

ディアボロスの襲撃に乗じて、彼は研究所を脱走。
晴れて自由の身となった彼は目の前で倒れている(ディアボロスの襲撃に巻き込まれたと言っていい)
人物の体を『借りる』ことで人の姿を得た。神性を兼ね備えたレゲネイドビーイング。
しかし宿主の記憶と同期しているため、自分の正体にまつわる記憶などをほとんどシャットダウンしている。

そこで初めて見た「たんぽぽ」がどれだけ彼の視界に刺激を与えたかはいうまでもない。
今まで色を知らずに生き、多くの生命体から色と命を奪った生物。
ちかくにいた人から話を聞き、タンポポの別名であるクジナ、を我が名としたのだ。

この世界にちりばめられた色を彼はこよなく愛している。
ふと訪れた美術館にて彼は絵画品を気に入って収集する癖がついた。
……それこそ、食事を忘れるくらいに。昔の癖が抜けていない。

人のように生きるまで、随分と長い苦労があった。
スプーンは持てない、箸はもってのほか。
今こそなんともないが、やはり手だけで食べられる食事の方がいい。
無論、食事の必要性はないのだけども……この身体を死なせるわけにはいかない。

奪うことはヒトとして生きる以上してはならないことだそうだ。
この脳が言っているのだから、正しいのだろう。
なるべく奪わないようにと服を被るように生きている。
シスターベールは似合わないらしいが、落ち着くのでいいだろう。


所属する教会の人からは不思議な人、前と雰囲気が変わったなどと言われているが
彼の戦闘技術を買い、表向きは牧師として、裏向きは教会を守る用心棒として雇われている。
(教会は一応UGNといろいろ協定を結んでいる)

色として来訪したのが1927年。なので現時点では96年地球にいることになっている。