しかし本性は冷淡。オーヴァードの能力と共に「色を知覚できず世界を白と黒にしか認識できない」という異常を持って生まれた。
その異常故か世界のあらゆるものに価値を見出しておらず全て下らないと冷笑している。
『にこやかで優しいお姉さん』も、必死に取り繕って被せている仮面であり、なんとか隠しがたい本性を押し殺している。
実際嘘は苦手で嫌いであり、笑顔なんて何故作れているのか自分でもよく分からない。
彼女の『にこやかで優しいお姉さん』という仮面は、ノイマンのエフェクトを利用しても尚『見る人が見れば分かる』程度の杜撰なもの。

本来であれば「こんな下らない世界で生きる意味など無い」と生まれた直後に呼吸を止めて自殺していても可笑しくない。
しかしそうならなかった。何故か？・・・それは好奇心を抱いたから。
みんなこの下らない世界によって大なり小なり苦しんでいる筈なのに、なぜ態々生き続けているのか。
そう思えばそれを知る前に人生を終える事は出来なくなっていた。

『ぬくぬくと庇護されながら大した事はせず不満を垂れ流す強欲で傲慢な家畜の群れ』・・・それが彼女の市民に対する認識だ。
UGNの者達はそんな市民の醜さを知りながら、決して相応しいとは言えない対価を貰いながら、誰かがやる必要があるだけで他人に押し付けても良い役目を背負い、法の外で好き勝手に生きる獣ども(FH等のレネゲイド犯罪者)と命を賭して戦っている。
UGNにいるのはそもそも保護されたのがUGNだからと言うのもあるが、そんな不可思議な生き方をしている者が多いUGNで、より多くの観察対象と接する為である。

生まれておよそ20年、未だ疑問は解けてない。
されど、苦しみながら生き続け戦い続けるUGNの者達に、白でも黒でも無い何か別の色が視えた・・・気がした。
そんな経験もあって、益々死ぬわけにはいかなくなった。自身に色を魅せてくれる可能性を持つ者達を、おめおめと獣(FH)どもの餌食にさせる訳にもいかなくなった。

そして何故だか・・・笑顔を作るのが前より楽になった。