-記録開始-

「そっちの様子はどうだ、探偵クン！」
「ダメだ、どこもかしこも火の海だよ！」
「チッ……何がどうなってやがる、これではまるで“あの日”の……」
「ドクター！そこは──」

-記録終了-

-記録開始-

「探偵クン、記録できたかい？」
「うん。21:30、22:56、00:05の計3回……ドクターの言った通りだったよ、残念ながらね」
「やはりそうでしたか。凡種のヘビごときでも物は使いようですね」
「もうツッコまないよ。で、これからどうするの？」
「次にすべきことは再現性の確認でしょう。当然、探偵クンにも付き合って頂きますよ？」

-記録終了-

-記録開始-

「ドクター、どう最近？」
「おやいい所に帰ってきましたね、丁度ロープが必要だったんです」
「やりかねないから怖いなぁ。はいこれ、今回のループの報告書だよ」
「……気になる点が一つ。この10箇所、通称X地点を見て下さい」
「それはボクも同意見だ、X地点は明らかに毎回の位置形状が異なってかつ不明瞭だよね」
「その通り。すなわち、この世界は──」

-記録終了-

-記録開始-

「中々難解な世界ですね。どうにも複数の要因が干渉し合っているように感じます」
「うーん。となると結局やるべきことは黒幕の考察になるかなぁ」
「しかしそれにしては不可解な点が多過ぎます、確定した未来を辿ることに何の意味が……」
「検証のため、ボクたちが死なないことが確定してる前提でも素手×生身のクロスブリードでB-29に挑むのは頭悪いけどね、ドクターは武闘派じゃないし。……あ」
「どうしました、脱皮の衝動が抑えられなくなったんですか？」
「残念ながら25分前に脱皮したよ。いや、今ふと思い付いたんだけど、ボクたちがこの世界に呼ばれたのは何かの間違いだったんじゃないかなってね」
「つまり、この事件を解決するにはピース(piece)が足りない、と？」
「そういうこと。これからはそのピース探しに焦点をズラすのもいいんじゃないかなって」

-記録終了-

-記録開始-

「──以上の要因から、上記2名が捜査線上に浮上しました」
「上ばっかりだね。「藤田珠緒」「深山豊國」……まあドクターの考えに概ね同意だよ」
「結論から述べましょう。この状況の打開は、今の私たちではどうしようもない」
「悔しいけどその通りだね。でも、諦めたわけじゃないんでしょ？」
「今の私たちにできるのは、それはいつか来るピース(peace)の為の基盤を整えること」
「リアル世界でRTAみたくループ後行動最速チャート組んでるの、ボクたちが原点かつ頂点だと思うよ」
「セーフハウス、通信手段、移動手段、行動指針、私たちに隙はありません」
「唯一心配なのは、ドクターの人相が黒幕のそれだから初対面で信用されなさそうってとこだね」

-記録終了-

-記録開始-

「探偵クン、今は75回目で合っていますかね」
「あってるはずだよ。急にどうしたの？」
「そろそろ解明できそうな気がするんですよ。この世界の真相が」
「頼もしいね、ボクも同意見だ。それに……」
「ええ。そろそろあちらの世界からの“介入”が発生するかと」
「うひゃー、忙しくなりそうだ。わざわざ言う必要は無さそうだけど、体調は万全なの？」
「害虫ごときに心配されたくありませんね。探偵クンこそ、火中の栗を拾う準備はできていますね？」

-記録終了-

-記録開始-

【記録に一部破損が見られます】

「────」
「──ほど、確かに合理的だ。……とてもヒトの行き着く答えだとは思えないほどに、ですが」
「────！」
「──────の愛の形なのかな」
「まったく、狂気なまでに正気なのでしょうね。二人分の脳を一人分の身体に統────」
「──？」
「────。──外にはできませんよ」
「さて、患者および保護者の同意は既に得ていますし……では、始めましょうか」

-記録終了-

煤に汚れたカルテ