気休めにもならない言葉を投げかけてやることしかできなかった。それでも嬉しそうに笑うあの子を見送ったのが最期の別れになってしまった。
次の日に病院から連絡が来た。

炭川灰華が自殺したとの連絡だった。

線香の香りが満ちた葬儀場にいた炭川の両親の大して興味もなさそうな顔を見て、人生において経験したことの無い怒りを抱いた。
あの子はあんなに苦しみながらこの世を去ったのになんでお前達はそんな顔ができるんだ。
炭川の手をちゃんと取ることの出来なかった自分にも腹が立つ。教え子を守ることもできずに何が教師だ。
家庭、学校、社会。それらの無力さを思い知らされた時、ふと怒りの感情が消えた。今の今まで怒り狂っていたはずのに。
それと同時にあの子の両親のいた場所に爆炎が躍る。肉の灼ける匂いと焼却炉のような熱気に葬儀場がパニックになる中どこか冷静にこの場を見てこの事態を引き起こしたのは自分だという自覚があった。

最後の最後までダメな先生でごめんよ。


よく見る悪夢にたたき起こされる。最悪な気分のまま時計を見れば起床1時間前。二度寝する気にもなれずにこのまま朝の支度でもしようかと思った時、棚に置いてある写真立てに目が止まる。
一番最初に受け持った子たちの卒業式で撮った集合写真だ。
「懐かしいな。神無月、讃良、みんな元気にしているだろうか。生徒に怒ることができなくなった今の僕を見たらきっと失望してしまうだろうな。」
情熱に燃えていたあの頃から目を背けるように部屋を後にした。

市内の遺跡にFHが襲撃してきたとの報告を受け現場に急行、現場に居合わせた支部エージェントの桜庭尊、その場でオーヴァードに覚醒した永田心愛、遺跡の調査に来ていた神無月颯夜たちと合流し、その場にいたレネゲイドビーイング、ステラを保護した。
永田にオーヴァードの説明を行ったりステラの検査を行っている時に支部が何者かに襲撃され迎撃戦闘を展開した。
迎撃戦闘中な　ぜ　か味方に火炎瓶を投擲されるも辛うじて撃退に成功したもののその隙に淀川博士にステラを誘拐されてしまう。
博士を追いかけて遺跡に向かい博士によって暴走してしまったステラを取り戻すために尽力した。
事件解決後、霧谷支部長と組織体制の見直しを協議しチルドレン達の教育の場を整えることを新たな目標に据えた。また神無月颯夜と讃良織姫の結婚式の仲人を務めることになり満面の笑みを浮かべていた。