〇放っておけば破滅に向かう要素

捉有珠はじめには、一回り歳の離れた兄が居た。
名は捉有珠照。
妹とは真逆の善良な肉体派。そして──生来のオーヴァードであった。

レネゲイドの事実を知らぬまま、探偵として身を立て己の力で多くの無辜の民を救い。
そして当然のように侵蝕超過に陥り、ジャームと化しＵＧＮに「処理」された。

そのさい事件に巻き込まれたはじめも兄経由で感染覚醒。UGNに保護され、世界の事実を知るに至る。

レネゲイドウィルス、オーヴァード、ユニヴァーサルガーディアン。

そして多くの未知をノイマンの力で理解したはじめは、当然のようにひとつのｉｆに至る。すなわち

『レネゲイドが秘匿されず世に理解されていれば、兄がジャームとなることはなかったのでは？』といった疑念に。

そして保護中に生じた、アルフレッド・J・コードウェル博士の帰還と告発。
疑念は確信に変わり、同時に告発を都市伝説と貶めた、UGNの影響力をも目の当たりにすることとなる。




現在、捉有珠はじめは市井の協力者としてUGNなどに助力し、探偵助手としてレネゲイド関連の事件に関わりその頭脳で解決している。

だがそれは、表向きの顔にすぎない。

捉有珠はじめの真の目的は、かの反逆の聖人ですらなせなかった、「真実を世界に知らしめる」ことにある。

時間は有限敵は強大、アドバンテージがあるとすれば、こちらがまだ歯牙にも欠けられてないということくらいだろう。
だがそれが、なんだというのか？

どれほど困難であろうとも。
慎重に、密やかに。笑顔を浮かべ。
協力者を擬態し、力を身につけ、賛同者を増やし。

覆しようのない状況を生み出し真実を知らしめ、兄のような被害者が生まれぬ世とするために。


〇備考
コートと帽子は兄の形見。探偵ではなく探偵助手を名乗るのは『世のため人のためとなる探偵は捉有珠照であり、自分はその助手である』と言う信念から。