私は普通の子供とは違った。
物心ついた時から親はいなかったし、大人から寵愛を受けることはなかった。
だけど私は不満なんて何一つ持っていなかった。
希望すれば大抵のものは与えられたし、衣食住には何も困らなかったからだ。
たまに変な大人たちが来てお注射とかされたけど、どうでもよかった。
だけど、私は知らなかった。ここがどういう施設なのかを。

ここには私と同じぐらいの歳の子が何人かおり、兄弟同然のように過ごしていた。
その中でも尚武という男の子とは特に仲が良かった。
ここで過ごす時や、任務の時もずっと一緒で。
彼の明るい笑顔をずっと見ていた私が彼に好意を抱くのも自然なことだった。
生きていくのに必要なものが与えられ、尚武がいる。
幸せな日々がいつまでも続くと思っていた。

それは私が9歳の頃だった。
いつも通り任務に出ていたが、今回の任務は怪物の討伐だった。
これまでの任務をそつなくこなしており、初めての討伐任務だったが、
いつも通りこなせると思っていた私は、帰ったらどうするかを考えていた。
尚武くんとお話ししようか、それとも最近お気に入りの本を読もうか。
明らかに集中力を欠いていた私は、怪物が近寄って来ていることに気付かなかったのだ。

目が覚めると、私はベッドの上に横たわっていた。
身体のあちこちが痛むが、無理やり身体を起こす。
そこには、私が期待していた光景はなかった。
一縷の望みにすがりみんなを探すが、見つからない。
後悔の念が押し寄せる。私がしっかりしていれば。油断していなければ。
私は泣くことしかできなかった。

あの出来事からしばらくして、私は10歳になった。
この施設は閉鎖されるらしい。
特殊な能力を持っていた私は、"オーヴァードアカデミア"という学校に編入することになったらしい。
荷物を整理していると、1枚の紙切れが足元に落ちた。
紙切れを手にして目を落とす。そこには、尚武からのメッセージが残されていた。
「ゆりへ。このメッセージを読んでいるころには、ぼくたちはしんでいると思う。
　君はずっとこうかいしていると思う。だけど、ぼくたちがしんじゃったのは君のせいじゃない。
　だから、いつまでも悲しむんじゃなくて、ぼくたちの分まで前を向いて笑って生きてほしい。
　ぼくからの最後のお願い。がんばってね。」
私はまた涙を流した。だけどそれは、これまで流した涙とは別の涙だった。

施設がなくなり、私は私自身に何をされていたのか、尚武たちに何をされていたのかを知ることになる。
私たちは人の手で作られた存在。そして大人たちの実験体。
みんなをめちゃくちゃにした大人たちに腹が立った。
あいつらがいなければ、私たちを作らなければ、こんなことにはならなかったのに。
大人なんて、みんな嫌いだ。

とても気まずい……。
遺産を壊し借金を背負った私たちは補習授業部として任務を受けることになったのだが……。
部室にいても話すことはなく、任務の時に話すぐらい。
とどう接すればいいのか悩んでいたが、よく見てみると面白い人たちかもしれない。
凪先輩はお茶目で可愛いし、恵梨香先輩は可愛いものに目がなくておまかわ！！！ってかんじ。
仲良くしたいなぁ……。