日が傾き始め校舎にチャイムが響く、終業の時間だ。今日は週末、せっかくだし予定が空いていそうな子と楽しく過ごしたい。そう思って手元の端末で連絡先の吟味をしていると支部からの連絡が入った。
「はい、こちら潤鷲です……えぇ～任務ですかぁ～？！……は～い、現場に急行しまーす。」
端末をしまい駆けだす。
「はぁ、さっさと終わらせて予定空いてる子つかまえよぉ…。」
UGNに生活の保障をしてもらっている以上任務を断ることもできない。また野郎の相手をする生活なんてまっぴらだ。女の子相手ならいくらでもやるけど。

「キャアアアア！！」
現場に到着すると暴れまわる一体のジャーム。それに襲われかけている一人の女子高生。まずい、助けなければこの世で最も尊い存在が奪われてしまう！
咄嗟にワーディングとソラリスシンドロームの能力を起動しあらかじめ用意しておいた化学物質を散布する。内容としては神経を刺激しこちらに注意を惹かせるもの。その気があろうがなかろうがこれを浴びて私に惹き付けられなかったものはそうはいない。ジャームに向かって声をかける。「ねぇ、私もその娘に用があるんだけど。悪いけど消えてくんない？」
気絶した女子高生を襲おうとしていたジャームが想定通りこちらに標的を定め直しまっすぐに向かってくる。あまりのチョロさに思わず口角が上がってしまう。私の誘いに乗ったということは私の｜領域《・・》に入ったということだ、オルクスシンドローム持ちが自分の土俵で戦うことの恐ろしさを教えてやる。
ジャームの大振りの攻撃を楽々躱しそのまま煽り文句をお見舞いする。「そんなんで私を捉える気？可愛い女の子になって出直してきたら？」怒り狂ったジャームが更に暴れまわるがそれをおちょくるように躱し続ける。
暫く捌き続けるとジャームの動きが鈍る。「あっれ～？もうバテちゃったの～？昨日遊んだ娘でももう少し愉しませてくれたよ～？」それも当然、散布した私お手製の興奮剤と弛緩剤を浴びながら誘いに乗った相手に常に上になれる私の領域で暴れまわったのだ。もう限界だろう。

と、その時後ろから足音が響く。他のエージェント達が来たようだ。後は彼らに任せて私はメインディッシュ…もとい襲われていた女子高生のもとに駆け寄る。身体に怪我はしてないだろうけど心的なケアが必要だろう。よく見れば中々可愛い子だ、これはもう早急なケアが必要ですね！
「安心して、あの化け物はやっつけたよ。怖かったよね、怪我はない？」そう意識を取り戻した彼女に声をかける。
「え…。なんで私生きて…？あ、あなたが助けてくれたの！？ありがとうございます！」
「いいっていいって。それよりもこの後暇ならさ、私とちょっと遊ばない？怖い思いを忘れるくらい楽しい思い出にしてあげるから！ね、ね、どう？」
「え？ま、まぁ少しなら…。」
「やったああああ！決まりね！！どこ行こっか、とりあえず喉乾いたし喫茶店にでも…」そこに後ろからUGNのエージェントがやってくる。
「潤鷲さん、彼女にはメディカルチェックと記憶処理が必要ですのでこちらで身柄を預かります。」
「えええええ、そんな！」
「我々の任務を忘れないでください、それと夜遊びはほどほどにしとけと支部長からの言伝も預かっています。」



「うう、世界が私に厳しい…。温もりが欲しいよー！」
エージェント達に保護された女子高生を見送りながら私の嘆きが夕暮れの空に響いた。

UGNチルドレンとしてFHの施設を強襲し入手した情報から同級生の一華エリカが遺産に適合する可能性があることを知り、同支部所属の朽木麗矢、呉薔蘭、刃隠冥たちと共にFHに所属する南秀人の計画に立ち向かった。記憶を操作されながらも厨二ムーヴを行う麗矢にツッコミを入れたり隙あらば女の子を物色しようとしていたのを薔蘭に諫められたりしたものの、南を撃破しエリカの救出に向かい、麗矢がエリカに思いをぶつける手助けをした。
決着後はエリカのコンサートに必ず行く約束をした。