UGN日本支部所属のエージェント。モルフェウスのエフェクトで巨大なロボット“パンタソス”を呼び出し操縦できる。しかしエフェクト面でそれ以外のこと、モルフェウスの特徴の様々なモノを創り出したり砂を操るといったことはほとんどできない。他シンドロームなんてもっての外、かろうじてワーディングとリザレクトができる程度。
彼が出動すると必然的に巨大ロボが暴れまわるため他エージェント達に比べて周辺への被害が大きくなりやすく人目にもつきやすいということで普段はあまり任務に出ることができずくすぶっている。
本人曰く「切り札と言えば聞こえはいいかもしれねーけどよ、穀潰しって言われても仕方がない現状だぜ…。」

霧谷雄吾からの直々の指名で宇宙支部への転属が決まり“パンタソス”も改修されることになった。宇宙空間での迷彩効果の高い黒色に機体色を変更、またデブリや衛星に取り付きやすくするためのワイヤーアンカーが機体に取り付けられた。
また潜入作戦を行いやすくするため機体をある程度までは小型化できるようにもなった。金髪モノクルの妙な錬金術師が助言したとかしてないとか。
一回目の出撃の後、シャーロット・ブロンテの持ってきた宝物から機体用のマントをパンタソスに装備した。

何がどうなっていやがる。それが今の俺の心境だ。
暴走した大型トラックに撥ね飛ばされてくたばったはずが何故か生きている、意識が戻った時に医者にレネゲイドウィルスとやらに発症したらしいことを伝えられた。この時点で頭がどうにかなりそうだってーのにさらには自分がオーヴァードとかいう超能力者として覚醒しているから検査をするとまで畳みかけるように医者に告げられた。

医者が言うにはオーヴァードの能力は何種類かあって自分はモルフェウスとかいうシンドロームで物を作ったり砂を操ることができるはずだと。映像や実際に能力を操るオーヴァードを見せてもらい驚愕しながらも一応理解はした。
自分が超能力を使えるということに不安もないわけではないがそれよりも期待の方が大きい、さてどんな能力がとびだすやら。

「作りたい物をイメージしてみると上手くできますよ。」と実際に目の前で色々作ってみせたオーヴァードのアドバイスに従い意識を集中させる。身体の中を蠢く違和感、おそらくはレネゲイドとやらの反応だろう。よし、まずは日本刀でも作ってみるか。
…。なんにも起きない。別の物じゃないとダメなのか？じゃあ銃で。
……。なんにも起きない。よく目にするものなら、例えば車ならどうだ。
………。なんにも起きない。おいおい不安になってきたぞ。自転車とかなら作れないか？
…………。なんにも起きない。実演してくれた人が可哀想な人を見る目で見てきやがる。もうペンでもいいから作れてくれ。
当然なんにも起きない。

「き、きっと砂を操るのに特化してるんですよ！物を作るだけがモルフェウスの能力って訳でもないですし！」アドバイスをくれたオーヴァードがめっちゃ気を遣ってくる、優しさが辛い。
気を取り直して意識を集中させてレネゲイドを反応させる。とりあえず砂を集めてみるか。
…。なんにも起きない。
おいちょっと待て、さすがにおかしくないか？横のオーヴァードがめっちゃくちゃ申し訳なさそうな顔してるぞ。なんか間違っているんじゃねーのかとモニタリングしていた職員に詰め寄る。
「有澤さんの体内には確かにレネゲイド反応、それもかなりの純度のモルフェウスの反応が出ているのは確かなのですが…。これだけの反応があって何も起きないというのは考えづらいですね…。こちらで調査を行うので有澤さんはしばらく病院の敷地内で自由にしてかまいません。」
何がどうなっていやがる。


天気が良いので屋外に備え付けてあるベンチに寝転がる。昼寝半分、ふて寝半分といった具合で意識が微睡む。

＜マスターを認識＞

よくわからない機械音声が聞こえた。


遠くから聞こえる悲鳴や喧騒で意識が覚醒する。
声のする方に目を向けると暴走しながらこちらにまっすぐ突っ込んでくる大型トラック、どこかで見た覚えがあると思ったら俺を撥ね飛ばしたやつだ。
あんなのが病院に突っ込んだら大惨事になるのは間違いない。しかし今の俺にあれをどうにかできる力は、無い。
「どうにかなんねーのかよ…！」悔しさと怒りに満ちた言葉が口から出たその時。

突如地面が揺れながら浮き上がり俺を小さな部屋のようなモノに放り込んだ。
放り込まれると同時に周囲が明るくなる。ディスプレイに操縦桿、レーダースコープに大仰なシート。直感的にコクピットだと認識できたのはゲームやアニメの影響か。そして正面モニターに映る暴走トラック。
＜マスター・有澤鋼騎の搭乗を確認。パンタソス、起動します。＞どこかで聞いたような機械音声が流れる。
「こうなりゃヤケだ、どうにでもなりやがれ！」そう叫びながら操縦桿を押し込み、暴走トラックを鋼鉄の巨人が抑え込んだ。


最終的にはトラックを食い止めた隙に近くにいたエージェント達によってジャーム化していた運転手は制圧された。
コクピットから降りた俺は多くの人から驚きや感謝の言葉を貰ったあとその数百倍の質問の嵐に晒されることになった。

次の目的地に向かって航行中の“スターゲイザー”の艦橋、そこには当直に割り当てられていた鋼騎とロッシュがいた。

「クソッ、また俺の負けかよ…。」
鋼騎とロッシュの間にはホログラム投影されたボードゲーム盤。鋼騎の盤面はボロボロになっていた。
「369265184ルートの行動パターンに対応する手は算出できるからね、これでボクの27連勝目かな？もう一回するかい？」
「いや、いい。今の俺にはお前に勝てないことがよく分かった…。」
そう言って鋼騎はもたれかかるように椅子に深く沈みこんだ。
「そうだね、何か別の気分転換を考えようか。」
そう言ってロッシュもホログラム投影を切り替えた。

長い宇宙の旅では時間の潰し方も重要だ。電子化された書籍や映像、ゲーム等はあるが文字通り外界から断絶された世界だ。新しい刺激を求めるのは人類の常でありオーヴァードでもそれは変わらなかった。

「そういえば鋼騎は地上にいた時の何か面白い話とかないのかな？」
「面白い話か、と言っても俺もあんまり任務に出ることは…、いや待てよ、あの時の任務なら話のタネにはなるか…？」
「おや、何かあったのかい？」
「ああ、イカれた遊園地でFHの激ヤバ女と共闘する羽目になった話だ。」
「それは何とも面白そうな話だね！ぜひ聞かせて！」
「ああ、じゃあまずは遊園地で記憶を失ったところからだな……」

それから鋼騎はかつて廃遊園地で巻き込まれた奇妙な事件の顛末を語りだす。
お菓子の家に巨大な猫、小さな象にメリーゴーランド。
しゃべる猫に胡散臭い帽子屋。
悪夢に囚われた少女。
それに自転車にレールガンを積んで持ち歩いていた激ヤバ女。
思い返しても胃もたれしそうなラインナップだ。

「～ってところだ。結局あの後すぐ宇宙行きの準備に取り掛かったからあの女の子がどうなったのか分からないんだけどな。」
「中々興味深い話だね、ボクもレネゲイドビーイングだけどもそのジャバウォックとかいうのとは仲良くするのは難しそうだなー。」
「まさに悪夢の化け物って感じだったな。そういえばロッシュ、お前は夢って見るのか？」
「夢？ボクは電子で構成されているからか夢という概念が少し理解しにくいんだ。けどそうだね、君たちとこの宇宙の謎を解き明かす、これが今のボクの夢かな？」
「あー、そういう夢って意味じゃ……いや、それは悪くない夢だな。叶うなら俺もその夢は見届けたい。」
「うん、ボクの夢を叶えるには君の力は絶対必要だからね、これからもよろしくお願いするよ、鋼騎。」
「ああ、この“スターゲイザー”操舵手の俺に任せろ。」

彼らの旅路はまだまだ続く。

“ゲブラー”での戦いを終え、ヤタガラス支部に帰還した鋼騎たち。“カマエル”の攻撃を受け破損した“パンタソス”は修繕、改装される事が決定した。

「改めて見るとだいぶズタボロにされちまったな……。」改装ドッグに固定された愛機を見ながら鋼騎がそう呟くと隣に一人の少年が現れる。
「はじめまして、有澤さん。僕は奈代竹葉月といいます。今回の“パンタソス”の改装を担当することになりました、よろしくお願いします。」
「お、よろしく頼む。にしても俺より若いのにヤタガラスに配属されたのか？よっぽど宇宙適正が高かったりしたのか？」
「それもありましたけど宇宙分野にも興味があったので志願してみたら意外とあっさり配属されてしまいました。前はMM地区のチルドレン育成施設にいましたよ。」
「そうだったのか、まあ宇宙配属に自分から応募するUGNチルドレンなんてそうはいないだろうしな。なんにせよ“パンタソス”を頼むぜ。」
「任せてください。今回は試験的にシールドを追加装備することになります。機体の損耗の抑制と生存性の向上が狙いですね。」
「そうか、火器類よりも盾の追加なのはすこし意外だな。これからも激しい戦闘は予想されてるだろ？」
「だからこそ、です。激しい戦闘になるからこそ最も重要なものを守らなければいけません。それは有澤さん、あなたを含めたスターゲイザーのメンバーです。あなたたちはもはやUGN内でも貴重な宇宙空間に精通したエージェントです。ただでさえ少ない人材を失う訳にはいかないんですよ。」
「なるほどな……。いや、随分しっかり考えているんだなと感心しちまったよ。お前には安心して愛機を任せられそうだな。」
「きっちり仕上げてみせます。だから、ちゃんと帰ってきてください。」
「おう、期待には答えてやるさ。」

UGNエージェントとして廃遊園地に調査に赴いたが現地で異世界とおぼしき不思議な世界、「ワンダーランド」に取り込まれると同時に記憶を喪失、同じく記憶を失っていた観月・H・サリヴァンと共に「ワンダーランド」内で記憶を取り戻すための探索を行った。
無事記憶が戻るもサリヴァンがFHエージェントだということが判明、園内を出るまで一時休戦とし共に「ワンダーランド」を造り出した元凶を打ち倒した。

事件解決後、霧谷雄吾から直々の指名でUGN宇宙支部への転属が決まった。

ヤタガラス支部に新規に創設されたスターゲイザー隊の隊員としてシャーロット・ブロンテと共に配属された。そこで同隊長・力智凱太やオペレーターたちに出会い“スターゲイザー”の操縦手として着任した。

宇宙航行中に謎の巨大建造物の超重力に囚われかけるも抜群の操縦スキルを振るい脱出に成功する。ホルス支部に到着後、ホルスとの会談を行った。ホルスに宇宙に残る理由を問われ、「己の力を存分に発揮できるから、それになんだかんだメンバー達を気にいっているから」と回答した。
ホルス支部を後にした後は軍事衛星“ゲブラー”に突入、衛星内で自律式殺戮兵器“カマエル”との激闘を繰り広げた。
任務終了後、乙原やロッシュと共にパンタソスの改修案を考えていた。

スターゲイザー隊のメンバーとして先日観測された幽霊船の調査に赴き、潜入した船内でコールドスリープ状態の少女を発見、共に調査を行った。リミットと名前の判明した少女の手を借り窮地を脱するも“星の母”と称する生命体と遭遇。あわや他メンバー達と共に死を迎えそうになっていたがリミットとロッシュの機転により救出される。
“星の母”との対決ではリミットの援護を受けつつパンタソスを駆り“機神”の力を“星の母”に叩きつけた。