父さんがいなくなった時、ちゃんと泣くべきなのは母さんだと思ったからいっぱい嘘を吐いた。
友達がたくさんいるから寂しくないと言った。なんでも一人で出来るから家にいなくてもいいと言った。父さんを恨む意味はないから生活に集中しようと言った。
全部を本当にしようと頑張って、半分ぐらいは出来た。
頑張ってると大事なものが増えた。だからずっと同じ事を続けている。

選ぶのは苦手だ。どちらを選んでも何かを取りこぼすから。
決めるのは苦手だ。主観を交えて客観を決めつけないといけないから。
求めるのは苦手だ。期待通りにいかなかった時、弱い自分は誰かを恨んでしまうから。

我慢するのは好きだ。人生はいつだって、産まれた時から減っていくものを、少しでも残すように足掻く旅路だ。

……俺はどうして、あの子に忘れてほしくないなんて言ってしまったんだろう。あの人に大事なものを無くしてほしくなかったんだろう。
本当はそんな事を思いながら生きたくないのに。