だが、“ライフギヴァー”和光洋輔という、“ホワイトハンド”が誇る名医の活躍により、清水加奈は心肺停止状態から見事に蘇生を果たした。
誰もが「死んだ」と思った少女は見事に息を吹き返し、そして再び日常に戻った。
｜愛する恋人が居る日常に《・・・・・・・・・・・》。
……そう。
加奈の転生体である『彼女』は、転生体であるにも関わらず、「オリジナル」が息を吹き返した事でその存在意義を完全に喪失した。
尚悪い事に、どういうわけか通常の転生体のように、「オリジナルとは別の生命体である」という自己認識を抱かず、まるで清水加奈の人格をそっくりそのままコピーしたかのような存在となってしまっている。
そして当然、恋人である村井亮平への恋心も宿したまま──


亮平は生きてるし私も生きてる、なのにどうして私は何もかも失ってしまったの。
失意のまま彼女はゼノスに保護された。“プランナー”は、ゼノスは、彼女と多くの言葉を交わし、多くの助けを授けた。
だが、ゼノスでも彼女の心を救う事はできず、彼女は自らの意識を殺して、ただ外を眺める日々を送っていた。傍から見れば、その姿はあるいは何かの実験体に見えたかもしれない。
そんなある日、私を連れ出した者がいた。
もう、なんでもいいよ。
誰か私の心を埋めて。あなたが必要だというのなら、私は何だってしてみせるから。