「どう…して…」
目の前に広がるのは自分が削り、引き裂き、腸をぶちまけ、更にそれをかき混ぜた化物(兄弟)の肉片。
否それはもう繰り返される不可思議な暴力により個体として認識することすら難しい。
「ただ…ただ笑って生きたいっちゅーんが過ぎた望みなん…？」
彼女は力無く、それでもヒキツッタ笑みを浮かべる。
そんな彼女を守るかのように(嘲笑うように)血飛沫は踊る。
嗤うように、慈しむように、憐れむように、意味もなく跳ね回る。
彼女を中心に、マイムマイム(カゴメカゴメ)で歓迎(拉致)するように
「何が…悪かったんかなぁ…」
その目には何もうつっていない。
綺麗な黒いオニキスのようだった目は煙水晶のように変質しだが絶望からか光を吸い込んでいる
「父さんが居なくなったんかなぁ…」
影が忍び寄る
「母さんが帰れなくなったんかなぁ」
影が纏わり付く
「私が…余計なことしてもうたんかなぁ」
真実(ハリボテ)が追い付く
『そんなことはない』
だが正義(手遅れ)の方が少しだけ早かった
『君はただ間が悪かっただけ』
『それでもまだ…まだ生きていくことはできる』
『未来を夢見る権利は誰にだってある』
上っ面だけの希望をなぞった言葉(虚構)
それでも折れかけた彼女のすがる言葉(願い)としては十二分だった。
夢を見て彼女は眠った。
目覚めたときには見知らぬ天井……ではなくおじさんが覗き込んでいた。
「目が覚めましたか…」
「良いですか…落ち着いて聞いてください」
思わず彼女は笑った
そこに笑わせようとした訳ではない医者のこまった顔があった