レネゲイド黎明期に立案された「プロジェクト：ピグマリオン」によって生み出された遺伝子調整人間。
強力かつ従順なオーヴァードを作り出し、兵器として運用するという計画であったが、
あまりに極端な教育の結果、外部刺激を遮断できる彼女のような例外を除き、
殆どの実験体が結果を残すことはできなかった。
（与えられた名は第1の武器という意味。アイザックが当時の責任者であり、彼への服従を刷り込まれていた）

その背景から幼少期はほぼ人間らしい意識と情動を持たず、まさに人形の名にふさわしい存在であった。
唯一感情が揺らいだのはたった1回だけ、同じ研究所の別プロジェクトに従事していた少年を遠目で見た時のみ。
それがあまりに幼い淡い恋だったと理解するには、十数年の時間の経過が必要だった。

10歳を契機として、UGNの戦略兵器として各地の紛争に投入される。
全てを薙ぎ払って紛争を終結させるその手腕から、竜巻とも台風の目とも称され恐れられていた。

転機は2年前。任務の帰還中に、成長した少年（＝高崎隼人）を再度見かける機会に恵まれ、
彼のその自由奔放な言動に激しい衝撃を受けた。
以来、自己を見つめ直すようになり、少しずつ自分自身を形成していった。
（外面上は今まで通り行動していた）

現在は命令に従いながらも、内心では舌を出す程度には自我と自尊心を確立している。
今の所はアイザックに従順な振りをしているが、その頸木から外れる機会を虎視眈々と狙っている。
彼女が彼を裏切った時、彼はオーヴァードという自我を持った存在を兵器にする無意味さを知ることになるだろう。
人形は愛の女神の加護により心を得て人間になったが、その心を向ける先は造物主では無かったのである。

推薦者はアイザック・アジモフ・アドミニスター。
同じ評議員であるジェーンブレスラーは、有用な兵器を議会へと押し上げることに難色を示したが、
彼女を支持するUGN戦闘班の後押しと、改革派の工作により彼女の評議員入りは決定された。

アイザックの意図としては、自分に忠実でかつ強力なオーヴァードである彼女を族議員に仕立て上げ、
自身の発言力を強めようという狙いであった……が、もし彼女の内心を知っていれば、
そのような愚行は決して行わなかったであろう。
（某老人は薄々その可能性に気が付いていた可能性はある）

当時はUGN創設者の失踪に加え、評議員が事故や事件で抜けることが続き、評議会の求心力が低下していた。
それ故に、「強いUGN」の象徴として強力なオーヴァードを象徴に据える必要があった。
また、若き才媛であるテレーズ・ブルムが評議会入りしたことを引き合いに、
オーヴァードの枠でも若いメンバーを入れ、組織の若返りを図るという名目が語られた事も彼女の追い風となった。