金髪に明るい茶色の瞳の女性。ざっくばらんで男勝り、自信家であり、ひたすらに力を追い求める戦闘狂。
一人称「オレ」三人称「お前」「あんた」「○○（名前）」
各地に点在する一族、華枯園一族の生まれ。元は墓園･･･墓守の一族であり、不吉であると名を変え現代まで残り続けた。
　華枯園一族にはオーヴァードとなる者が多く、彼女･･･十六夜も例外ではなかった。
　格闘家の両親から生まれ、両親の成し遂げられなかった世界最強となる夢を背負わされて育てられた。海外研修や山籠りなど格闘のためならなんでもさせられてきた。十六夜自身戦うのが好きで最強であることを己に課していたため、特に不満はなかった。
　そして17才で格闘技世界王者となり数年後。最強を維持したままどこか退屈な日々を送り、仲間達と共に街を歩いていたある日、偶然にも伊庭　宗一の依頼外の楽しみの標的となった。圧倒的な力で次々と仲間が死んでいき、辺りが血に染まる。人のものではない力が振るわれ、抗うことなく刈り取られていく。
　それを見て十六夜は、
　ゾクゾクとした興奮と喜びと共に笑っていた。
　自身を超える力。人智を超えた異能。自身の最強が崩れた日。最強で最恐で最狂で最凶な男との出会い。
　十六夜は狩猟者の戦いに、力に、そしてオーヴァードの力に魅せられた。
　UGNエージェントによってなんとか十六夜だけ助け出された後、様々なツテを使いオーヴァードについて捜索。FHの末端も末端、人を攫いオーヴァードに目覚めさせる研究をしていた小さな施設に乗り込み自身を実験体にするよう言い、晴れてオーヴァードとなった。
　そしてその手で施設を壊滅させ、その足でUGNに向かい･･･エージェントとなる。
　力と血に飢えた獣、ブロークイーン。その名が表すのは《破壊の女王》か《壊れた女王》か。それは彼女のみが知る。

「あ゛？ディアボロスについて語れって？」
「オレの初任務で、初めて戦ったのがあいつだったんだよ。単純な力ならオレの方が上のはずなんだが･･･あいつ、すげぇ強かった。なんつーの？エフェクトの使い方が上手いんだよ。使いこなしてるって感じ。オレその辺りまだまだだからよ、時間ある時エフェクトやらシンドロームやらについて勉強してるんだぜ？」
「だからあいつと戦うのすげぇ楽しいし楽しみでよ。ぜってぇオレがあいつの牙をへし折ってやんのさ！お前、ディアボロス関係の任務はオレに回せよ！？ぜってぇだぞ！この前のタイマン、フリーのオーヴァードに邪魔されて決着ついてねぇんだから！」
「･･････ただ、倒しちまうと、もうディアボロスと戦えなくなるんだよな。それは･･･なんか、嫌だ。」

「狩猟者について聞きたい？」
「彼奴はオレの目標だ！オレは彼奴に焦がれてオーヴァードになったんだからな！いずれオレのこの手で殺してやるのさ･･･！そうすりゃ、オーヴァード最強にグッッと近づくってわけさ！」
「ああ羨ましい･･･あのバトルセンスはオレには無い。･･････だがオレこそが最強だ！ぜっってぇに殺す！！」

戦友だった。友人だった。出かけの誘いに乗るくらいには友愛があったし、彼奴もそうだと思っていた。
結局の所、オレもお前もオーヴァードで、人間で。ただ先にジャームになっただけの、オレの友人だったのだろう。･･･そうであって欲しいと願った。
「歯ぁ食いしばれや！！！テメェを殺すオレのこの顔、しっかり覚えて死ね！！」
それでもオレは爪を振るった。脆い肉も溢れる赤い鮮血も、違わずオレと同じだった。
あいつのボタンは身につけた装飾品に混ざり、いまも鈍く光っている。
「･･･オレを恨んで、さっさと復讐しに来いよ？」
･･･早く戻ってこいよ、オレのダチ。
それは今も尚、ダチの生存がわかった今でもオレの中に燻る、鮮明な人殺しの感覚だった。

　…ー仲間だった奴をを殺す感覚にも、もう慣れた。あぁ、ひでぇよな。仲間だと、味方だと思ってたのに…初めっから敵だった。だからこれは、きっとどうしようもない。…そう、どうしようもねぇんだ。
　…ー助けられなかったあの時は、未だ夢に見る。救えた子達は一握り。あの優しい支部長はジャームになって、オレらの事さえ忘れた。何の罪もねぇ人達が、眼前でジャームになってくのを見るのは結構堪えたな。…あの子だって、オレがあの時動けてりゃ、きっと。あぁ、つくづくオレは救うのに向いてねぇや。
　…ー他の奴らが死んだあの瞬間は、酷い悪夢だ。オレがオーヴァードになるきっかけになった最強も、強いと名高いマスターレイス達も、それを束ねるあの男も…。そして、オレの好敵手も。死んだ。そう、一瞬だった。…オーヴァードとしての日常でさえ、簡単に崩れる。やっと知った。やっとわかった。
　もし、オーヴァードという存在が公になっていたら。堂々と避難指示も出せただろう。警告だって出せただろうし、もっと…もっとマシな世界になるんじゃねぇかな。それくらい、オーヴァードの力は強力なんだから。きっと世界は数歩前に進む。ある種の、進化を得る。
　全て無かったことになっても、オレの記憶は消えねぇ。あのクソみてえな存在も、遥か未来で再度現れる。なら。オレはそれに抗うために、世界を変えよう。…なんて、大袈裟だが。でもどうせいつか、UGNじゃ隠蔽しきれなくなる。あんな所じゃな。霧谷さんが倒れれば、一瞬で瓦解する砂の城だ。
　後悔の無い生き方を。オレらしい、人生を。
　…腹は決まっている。じゃあな、UGN。あぁ、悪くは無かった。オレの、日常だった場所……。