ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

楠木茜 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

Dr.(ドクター)楠木茜(くすのきあかね)

プレイヤー:ニッキ

こんなに頼りない私だけど、それでも、あなたの力になりたいの」

年齢
16/??
性別
女/男
星座
射手座
身長
156
体重
48
血液型
不明
ワークス
UGNチルドレンB
カヴァー
N市公立高校生徒
ブリード
クロスブリード
シンドローム
ソラリス
ブラム=ストーカー
HP最大値
24
常備化ポイント
6
財産ポイント
4
行動値
8
戦闘移動
13
全力移動
26

経験点

消費
+44
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 本当のお父さんとお母さんのことは、もう覚えてないの。
天涯孤独
経験 UGNに保護されてから、彼女はずっとこの世界で生きている。
純粋培養
邂逅 昔の思い出。苦痛の記憶。でも彼が、その痛みから救ってくれた。
恩人
覚醒 侵蝕値 いたい。痛い。イタイ。不気味にこちらを観察する大人たちは、何もしてくれない。朦朧とする意識の中、苦痛に苛まれる幼い彼女に、"彼”が宿った。
感染 14
衝動 侵蝕値 身体が熱い。体内中の血液が、沸騰するかのようだ。はやく、はやく、ヒトを刺して、裂いて、嬲って、潰して、その血を引きずり出したくて仕方がない。
加虐 15
侵蝕率基本値29

能力値

肉体1 感覚3 精神2 社会3
シンドローム0+1 シンドローム0+2 シンドローム1+1 シンドローム3+0
ワークス ワークス1 ワークス ワークス
成長 成長 成長 成長
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵 射撃8 RC1 交渉
回避1 知覚 意志 調達
情報:UGN2
情報:噂話

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 奇妙な隣人(ストレンジネイバー) 《オリジン:コロニー》を1レベルで取得する。
友人 浅見菫 友情 無関心 わたしを部活に誘ってくれたの。大事なお友達。
後見人 芹沢晃一 親愛 疎外感 いつもわたしのことを気にかけてくれる、親代わりのような人なの。
転校生 今方瀬奈 感服 不快感 とっても魅力的な女の子だなあ。
上司 斧山航 信頼 隔意 支部長はとっても強くて頼りになるけど、お仕事ばかりなのはちょっと心配。
仲間 大神真珠 連帯感 劣等感 戦う姿がとっても力強くて、わたしも頼もしいの。
仲間 篠懸 宗延 尊敬 不思議 まとう雰囲気が大人っぽくて、でも少し掴みどころがないかなあ。

メモリー

関係名前感情
?? 医師(せんせい) 傾倒 わたしの恩人。大好きな医師(せんせい)。”遠い彼女の記憶”を参照。

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
コンセントレイト:ブラム=ストーカー 2 メジャーアクション シンドローム 2
C値を-[Lv] (下限値7)
痛みの水 1 メジャーアクション 〈射撃〉 対決 単体 視界 2
「攻撃力+LV」の射撃攻撃を行う。このエフェクトを組み合わせた攻撃で、対象に1点でもHPダメージを与えた場合、さらに対象にバッドステータスの放心をあたえる。
滅びの一矢 1 メジャーアクション 〈射撃〉 対決 武器 2
このエフェクトを組み合わせた射撃攻撃のダイスを+[LV+1]個する。ただし、このエフェクトを使用したメインプロセス終了時に、あなたはHPを2点失う。
腐食の指先 3 メジャーアクション 〈白兵〉〈射撃〉 対決 単体 武器 2
このエフェクトを組み合わせた攻撃が命中した場合、そのシーンの間、対象の装甲値を-[LV×5](最低0)する。
血の宴 2 メジャーアクション シンドローム 対決 範囲(選択) 3
このエフェクトを組み合わせた攻撃の対象を範囲(選択)に変更する。このエフェクトは1シナリオにLV回まで使用できる。
封印の呪 2 メジャーアクション シンドローム 対決 視界 2 80%
このエフェクトを組み合わせた攻撃が命中した場合、対象が次に行う判定のクリティカル値を+1する。このエフェクトは1シナリオにLV回まで使用できる。
アクセル 3 セットアッププロセス 自動成功 単体 視界 3
そのラウンドの間、対象の【行動値】を+[LV×2]する。
血の彫像 1 メジャーアクション 自動成功 単体 至近
血液による彫像を作り出すエフェクト。
ブラッドリーディング 1 メジャーアクション 自動成功 単体 至近
血や体液(涙など)から、その主の情報を読み取るエフェクト。GMは必要と感じたなら、〈知覚〉による判定を行わせてもよい。
オリジン:コロニー 1 マイナーアクション 自動成功 自身 至近 4 RB
このエフェクトが持続している間、あなたは暴走をのぞく、すべてのバッドステータスの効果を打ち消す。この効果はあなたがLV個のバッドステータスを打ち消すか、シーンの終了まで持続する。

コンボ

黒死病(ブラックデス)

組み合わせ
コンセントレイト:ブラム=ストーカー痛みの水滅びの一矢腐食の指先(血の宴封印の呪)
タイミング
メジャーアクション
技能
射撃
難易度
対決
対象
範囲(選択)
射程
視界
侵蝕値
8(11/13)
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
3+2
7
8
1
100%以上
3+3
7
8
2

痛みの水で射撃攻撃を行う。
命中した場合、敵の装甲値が-10(-15)、次のダイスのクリティカル値+1、さらにダメージが通った場合放心付与。

一般アイテム常備化経験点種別技能解説
コネ:噂好きの友人 1 コネ 〈情報:噂話〉 噂話を仕入れてくる友人。〈情報:噂話〉の判定のダイスに+2個する。
コネ:UGN幹部 1 コネ 〈情報:UGN〉 情報に通じたUGNの幹部。〈情報:UGN〉の判定ダイスに+2個する。

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 15 144 0 15 174 0/174
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

【楠木茜】


「こんなに頼りないわたしだけど、それでも、あなたの力になりたいの」

「この日常にいらないもの、この日常を傷つけるもの、この日常の均衡を、崩すもの。ーーすべて、取り除かないと」

「だから、お願い。"Dr.(せんせい)"」

 深い赤色の髪に、檸檬色の瞳をした少女。いつも軽く眉尻をさげ、穏やかさをたたえた表情をしている。ソラリスの力を持つため、重力を感じさせない身体操作を見せるが、戦闘行為は苦手なようだ。ワーディングが貼られた時は、すぐに巻き込まれた一般人の救助にあたり、サポートに徹する。愛想が良く人懐っこい性格をしているため、同僚や任務先の友人とも良好な関係を築けている。

しかし一見温和そうな彼女だが、任務の抹殺対象には容赦のない反応をみせる。その様は激昂するでもなく、声を荒立てるわけでもない。敵が死ぬのはすでに決まったことであるかのように、理解も同情も示さないだけ。ただ淡々と、いつもの柔らかい声のままで、敵を排除することを主張するのだ。

また不思議な点として、彼女が一人でいる時、何かと会話をするような仕草を見せる。言葉を交わしている彼女の表情は、信頼しきった大人に甘える子供のようで、いつにも増して幼く映る。しかし、会話をする相手の姿は見えない。通話をしているのだろうか、あるいはーー。

【??】


「ーーッヒ、ヒハハハハ!!ようやくオレの出番かよぉ。呼ぶのがおせぇぞ、茜」

「アァ?オレの名前なんてどうでもいいだろうがよぉ。オレはただ、お前の治療を担当するしがない"Dr.(ドクター)"。それだけだぜぇ?」

唐突に、彼女の様子が変わる。周囲を大量の血液が覆ったかと思うと、次の瞬間には、不気味なマスクをした彼女が立っていた。悪辣で、残忍で、加虐的な人格が、彼女の身体を支配する。それは奇妙な隣人(ストレンジネイバー)、細菌に由来するレネゲイドビーイング。彼女の心と体に寄生する彼こそが、コードネーム"Dr.(ドクター)"。

普段は表に出てこないが、戦闘行為を行うとき、侵食率が高くなっているときなどに彼は現れる。必要がないから出てこないだけで、人格を交代すること自体はいつでもできるらしい。驚くべきことに、彼は中世ヨーロッパを襲った死の病、ペストの治療を担ったペスト医師であると自称している。しかし、どうして数百年も前の人間の人格が出現したのか、その発言が真実なのかという点については、仕組みが解明されていない。ただわかるのは、彼がろくでもない藪医者であり、人間が流血する様を見て興奮する異常者だということだ。

【ある研究員の記録】


 この記録は、被験体No. ××××【楠木茜】に関するUGNの調査報告に、僕個人の主観を交えた手記のようなものだ。いつか彼女が、『彼』と向き合う時のために、僕の知る限りの事実を記しておこうと思う。

 【楠木茜】は××××/12/5に、日本に住む楠木夫妻のもとで出生した。楠木夫妻は、我々の言うところの「一般人」であり、オーヴァードを知らずに生きる人々であった。彼らにとって不幸なことは、生まれたばかりの【楠木茜】に、レネゲイドウイルスが感染したことだ。完全な覚醒に至ることはなかったが、レネゲイドウイルスの活性化は、幼い彼女の体を蝕んだだろう。苦しみ汗ばむ彼女を心配して、楠木夫妻は様々な医療機関を受診した。しかし、通常の医療機関ではレネゲイドウイルスを認識できず、彼女の症状は原因不明の病として判断された。

 そこに目をつけたのが、とあるセルに所属する、FHの研究者たちであった。すでに壊滅したセルであるため、仮称をFHUNとする。彼らは日常のあらゆる場面に潜んでおり、それは表の世界の医療機関も例外ではなかった。「原因不明の病」の噂を聞きつけた研究者たちは、楠木夫妻に接触をはかる。FHのメンバーと楠木夫妻の間に、どのようなやりとりがあったのかはわからない。UGNが観測できた事実としては、当時2歳の【楠木茜】はFHUNの手に渡ったこと、楠木夫妻はその翌月、事故に遭って死んだことが報告されている。

 半壊した研究所の残存資料から、FHUNが行なっていた実験についての詳細が判明している。それはシンドロームの人工的な掛け合わせを行う、クロスシンドロームと呼ばれる実験だった。ピュアブリードをクロスブリードに、クロスブリードをトライブリードに、外部からの接触により覚醒させる。当時の【楠木茜】はソラリスのピュアブリードであり、その実験の検体として、多くの投薬や外科的手術を受けた痕跡があった。半覚醒の感染者である彼女の体は、本実験に好都合なサンプルだったのだろう。何度も壊死しかける幼体を、オーヴァードの力までをも用いて延命させ、実験は続けられた。

 4年の年月が経過したある日、次に実験の触媒に選ばれたのは、欧州で採取された血液であった。かなり古い触媒だったが、レネゲイドウイルスの反応が検出されたため、【楠木茜】と掛け合わせることで活性化を試みたのだろう。皮肉なことに、この実験はFHUNの崩壊と引き換えに、成功を収めることになる。【楠木茜】に、ブラム=ストーカーのシンドロームをもつ奇妙な隣人(ストレンジネイバー)が宿り、彼女は晴れてクロスブリードとなったのだ。それはのちに【Dr.(ドクター)】と命名される、オリジン:コロニーのレネゲイドビーイング。『彼』らの覚醒の余波で研究所は半壊し、その能力を把握できていなかっただろうエージェントたちは、黒死病(ブラックデス)に蝕まれ死に絶えた。FHUNで生き残ったものは、一人もいない。

 UGNは以前から、FHUNの動向に注意を向けていた。そのためセルが崩壊した際には、近くのUGN支部から人員が集められ、その鎮圧のため派遣された。僕も、その一人だった。

 足を踏み込んだ僕らが見たのは、散り散りになった研究資料、倫理を無視した実験器具、散乱するガラス。ちぎれた腕、瓦礫に潰された頭、黒く変色した皮膚、引き裂かれた胴体、辺り一面の、血の海。そしてその中央には、宙に渦巻く赤色の異形を纏った少女、【楠木茜】が横たわっていた。

 当時あの惨状を見て、少女の抹殺に待ったをかけた部隊長の判断に、僕は今でも感謝をしている。おかげで鎮圧部隊には、死傷者が一人も出なかった。戦闘員が武器を収めると、赤色の渦は僕らを襲うことはなく、程なくして彼女の体へ収束していったのだ。その様子を見た僕らは、その異形には知性があることを確信した。宿主が意識を失っていても、いつまた暴走するかがわからない。幼い体に拘束具をかけられ、少女は連行されていく。そうして【楠木茜】は、UGNの監視下に置かれることとなった。後から聞いた話によれば、研究所の奥に踏み込む直前、キュマイラのオーヴァードがかすかに音を感知したという。それは空耳かと疑うほどか細い少女の声と、男とも女とも判別のつかない、不気味な声だったそうだ。
 
 連行された【楠木茜】は尋問の際、6歳とは思えぬ落ち着き方で、僕らの質問に答えていった。難しい単語には首を傾げたが、知らない大人に怯える様子もなく、ただ聞かれたことに答えていく。その要旨としては、次のようになる。

「わたしはずっと痛い思いをし続けていた。何をされているのかもわからず、ただ痛みだけを感じていた。どれくらいたったかわからない頃に、声が聞こえた。その声は、自分は医師(せんせい)であると名乗り、わたしに呼びかけてきた。わたしはひたすらに、その声に応えた。そうしたら、医師(せんせい)が助けてくれた」

この発言を受けて、赤い異形は【Dr.(ドクター)】という通称を与えられ、のちに【楠木茜】のコードネームとして設定された。

 またこの尋問の際に、【Dr.(ドクター)】とも意思疎通を図ることができた。【楠木茜】の意識と交代するように、『彼』の人格が浮上する。『彼』は僕らに対し、その悪辣さを微塵も隠そうとはしなかった。人間の血に興奮する異常性、加虐的な思考、それから真偽を確かめることはできないが、『彼』の生前の記憶についても語ってきた。それどころか、『彼』はUGNに対し、自分と【楠木茜】を売り込んで見せたのだ。

 『彼』はまず、戦力としての自身の有用性を主張した。これに関しては、FHUNの結末が何よりも雄弁な証言となった。上層部は、【楠木茜】に数年の訓練を施したのちに、関東のとある支部に配属することを決めた。支部長の名前は、斧山航。彼はその地域の支部の中でも、一際戦闘に秀でたオーヴァードであった。その強さを認められた彼は、【Dr.(ドクター)】の監視が内密に言い渡された。そして『彼』が暴走した暁には、【楠木茜】を抹殺するよう指令が出されている。

 次に【Dr.(ドクター)】が切り出したカードは、【楠木茜】の実験体としての価値だった。『彼』は【楠木茜】の記憶を通して、彼女に何が起きていたのかを語ることができた。それを聞き届けたUGNは、『彼』の誘いに乗った。なぜなら彼女は、FHUNのクロスシンドローム実験、その唯一の成功例だったから。
 
 被験体 No.××××は、FHUNが施したナンバリングではない。UGNが彼女に与えた、監視対象としての番号であり、僕の研究対象の番号でもある。僕は【楠木茜】の主治医であり、彼女の観察研究を担当する、クロスシンドローム研究の責任者だ。

 当時は上層部からより踏み込んだ研究を行えと、散々に言われたことを覚えている。だが僕は、必要最低限の投薬と各種検査、定期健診、経過観察のみを遂行した。それ以上の非道なことは、決して彼女にしていない。どんな大義があったとしても、それだけはしてはならない。それをしてしまえば、僕らとFHの間には、何の違いも無くなるから。けれどどんなに言い訳をしても、真実は変わらない。彼女は、自分が被験体であることを知らない。僕のことを主治医であり、後見人であると認識している。そして僕は、自分を慕ってくれる彼女に、十年間も嘘をつき続けている。僕はこの手記を彼女に見られる瞬間が、心の底から恐ろしくて、心の底から、待ち遠しい。

UGN本部在籍/
クロスシンドローム研究主任/
芹沢晃一

【遠い彼女の記憶】


これは遠い昔の、わたしの記憶。物心がつく頃には、わたしはあの建物にいた。

放り込まれるだけの白い部屋。薄暗く無機質な廊下。何をするのかもわからない機械。それから、不気味な目をした大人たち。わたしはずっと、彼等が怖くて仕方なかった。彼等がわたしの部屋に来るのは、わたしにひどいことをする時だから。

痛い。痛い。痛い。体が引き裂かれ、頭が割れる想像をする。きっと半分くらいは、本当に起きていたんだと思う。だってどんなにひどい怪我をしても、どれだけ血を流しても、気づけばいつものわたしのまま、あの白い部屋に連れ戻されていたから。こんなに痛いのなら、取り付けた機械で意識まで飛ばしてくれればいいのに、彼等はそれをしなかった。あの頃は不思議に思うこともできなかったけど、今ならわかる。彼等はわたしに、オーヴァードとして覚醒して欲しかったから、わたしの大きな感情が必要だったのだ。強く色濃い、死への恐怖が。

彼等の思惑通りに実験を続けても、きっとわたしは覚醒を迎えなかったと思う。死ぬことなんて、もう怖くなかったから。痛いのは嫌、苦しいのも嫌。でも何よりも嫌だったのは、終わりが見えないことだった。時間の間隔も擦り切れるような毎日。今日が何日で、今がいつなのかもわからない。永遠も絶望も、わたしにとってはあの建物を意味する言葉だ。ただ苦痛から解放されたくて、はやく消えてしまいたいと願っていた。

あの日は、部屋に入ってきた大人たちの話し声が、いつもより大きかったのを覚えている。なんだか急いでいるみたいで、何をするのかを聞いても、こちらに顔すら向けてくれない。合わせるつもりのない歩幅のまま、乱暴な手のひらはわたしの腕を強く引っ張った。連れて来られたガラス張りの部屋で、わたしは何かの注射を受けた。赤い色を、していたと思う。

(ああ、またはじまった。きょうのは、いつおわるかな。う、ああ、いやだ、痛い、痛い、痛い、いたい、イタイ。ーーもう、きえちゃいたい)

その瞬間、

『ーー消える?そいつはまた、随分と勿体無いことを考えるんだな』

頭の中に、声が響いた。

『へえ、面白いことになってるな。俺は確かにあンとき、ボンクラどもにバラされて死んだと思ったんだがーー』

不気味な大人たちとも違う。言葉ということだけがわかる、不思議な音。

『ーーいったい全体、どういこうことだ?』

この建物で、初めて会話をしてくれたのが彼だった。あまりの驚きに、一瞬だけ痛みを忘れる。

(……あなたは、だれ?)

『俺が誰かって?今となっちゃあ名前なんてどうでもいいが、そうだな』
『俺はお医者様だ。“せんせい”ってやつだよ』

(せんせい?……じゃあ、せんせいはどこにいるの?)

声は笑うように答える。

『俺が知りたいね』

わたしに少しの余裕があるのを、大人たちは察したのだろう。一際強い痛みが、身体中を駆け巡る。

(ひっ、あ、ああああああ!!)

『おいおい、大丈夫か?このままくたばられても困るんだがなあ。ーーああいや、なるほどなァ』
『死ねないのか、お前』

(う、ああ、もう、いやなの。きえたい、きえたい、はやく、もう、おわらせて!)

強く、つよく願った。届いて欲しいと思った。見知らぬ誰かに。目の前の声に。
それは今までで一番強い、はじけるような、わたし自身の感情だった。

『ーーいいぜェ。その願い、聞き届けてやる』

『哀れな患者を救うのは、お医者様のだぁいじな役割だからな』

『お前を救ってやる。お前の望み通りに、終わりを与えてやるよ。どうやら今の俺には、それが出来るみたいだからなァ』

『だから、さァ、はやく、オレを呼び醒ませ!!』

「ーーうん」

思考するよりも前に、喉を震わせていた。


「おねがい、せんせい」


つん裂くような耳鳴りと、目の前を覆った赤色を最後に、わたしの意識は途絶えた。



顔に落ちてきた液体の感触で、目が覚める。痺れの残る体を起こして、視線を彷徨わせた。ふらつくわたしの視界には、ーー見覚えのある建物の、成れの果てが映っていた。壁が壊れガラスが散乱し、水溜まりのような赤色が、あたり一面を染め上げている。所々に、赤や白、黒の塊が落ちている。

そして、あの音が聞こえてきた。

「ヒ、ヒ、ヒハ、ヒッハハハッハハハハ、最ッ高の気分だぜェ!!」

(せんせいのこえだ。なんだか、とてもうれしそう)

「ああ、ヒヒッ、起き抜けにこンなものが見られるなんて!!バケモノになって産まれ直した甲斐があったッてもんだなァ」

(わたしのうえでくるくるしてる、これ、せんせい?)

「おっと、起きたか?茜」

思うように体を動かせなかっけど、わたしはとても驚いた。わたしの頭上に、赤色の液体が浮いていたからだ。それは千切れたカーテンのようにゆらめいて、わたしの名前を呼んだ。わたしは枯れ果てた喉から、なんとか声を絞り出す。

「せ、ん、せい?」

「ああそうだ、無事だったようで、何よりだよ」

さっきよりも落ち着いた声色で、わたしに話しかけてくる。

「気分はどうだ?ーーお前の望み通り、全て、終わらせてやったぜ」

その赤い液体に手はなかったけれど、医師(せんせい)が荒れ果てた部屋を指し示したのだと感じた。確かに、もう痛みは襲ってこない。けれど、そうだ。

「……こわいひとたちは?」

「あァ?その辺に散らばってるだろ?」

そう言われて初めて、あれらが何かを正しく認識した。水溜まりに落ちている塊。赤、白、黒。あれは、あの不気味な大人たちなのか。ずっと、ずっと、わたしの絶望の象徴であり続けた彼等は、なんともあっけなく、ぐちゃぐちゃになって落ちていた。そこでようやく、わたしの置かれている状況に、理解が追いついてくる。

「みんな、きえちゃったんだね」

怖かった。あんなに酷い仕打ちを受けたのに、彼等の有様に心がすくようなことはなかった。ただ、初めて目の当たりにした凄惨な死の光景に、それを生み出したのがわたしだということに、怯えていた。

「なんだなんだ、後悔してるのか、お前!あンだけのことをされておいて?」

「こうかい?……わかんない。でも、こわい、こわいの」

「怖い、ねえ」

ふむ、と少し間を置くと、医師(せんせい)はゆっくりと話し始めた。

「少し、話をしてやる。いいか?よぉく聞けよ、茜」
「俺はお医者様だ。……ここでの医者が何をしてるのかは知らねェが、少なくとも、俺の仕事は単純なことだった」
「患者、あァ〜、苦しそうなヤツの体から、いらねェモンを出してやるんだよ」
「体にとって邪魔なモンは、放っておくとそのうち悪さをしだす」
「だから俺は、そいつらを外に出してやっていた」
「そうすることで、哀れな患者どもの身体の均衡を、取り戻してやれンだよ」

難しい話だった。でも、あの大人たちのように、わたしを無視したりしなかった。こちらに気をつかうように、わたしにもわかる言葉を使おうとしてくれる。だから、じっとその言葉を聞き続けた。

「こいつァ俺の仕事の話だが、そこに転がっている廃棄物どもにも同じことが言える」
「俺はお前の記憶を見ることができる。お前にはわからない言葉も、理解することができるんだ」
「笑えるくらいに不用心だよなァ?お前がいる目の前で、何でもかんでも口から溢してたみたいじゃねェか」

「あの肉塊どもは、世界の転覆を企む“裏切り者"だったンだとよ」

「あいつら“裏切り者”は、この世界という身体の均衡を崩す、消されて当然のいらねェモンだ」


「お前も、俺も。この世界の均衡を守ったんだよ、茜」


均衡を守る。その言葉にどんな意味があったのか、あの頃のわたしにはわからなかった。けれど、不明瞭なはずのその声は、わたしを恐怖から遠ざけてくれた。

「……それが、せんせいのおしごと?」

「うん?……あァ、そうだな。そうだ。世界の不純物を取り除く、それが俺の役割であり、使命だ」

良いことを聞いてくれたなァ、と言って、医師(せんせい)はうれしそうに宙を舞う。そしてピタリと動きを止めると、今度はわたしの近くに降りてきた。なんだか少し、落ち込んでるようにも見えた。

「ああ、だが、とっっても残念だ。だってお前は、ここから消えたかったんだろう?」
「なァ、もうお前に、痛みを与えるやつはいないンだ。どうだ?やりたいことはねェか?欲しいものは?……もうちったァ、生きてみようとは思わねェか?」

(やりたい、こと?)

「……せんせい。やりたいことって、なにをするの?」

「……欲のねェヤツだな。まァ、当然か。この世界に何があるのかも、お前にはわからねェだろうからな」
「だがなァ。俺は、お前に生きて貰わねェと困るんだよ」

「なんせ、お前が消えちまったら、俺も一緒に消えちまうんだから」

わたしが消えたら、医師(せんせい)も消えてしまう。その言葉に、ひどく動揺した。わたしには、やりたいことも、欲しいものもなかった。生きることに、どんな意味があるのかもわからなかった。

(でも、きっと、せんせいはちがう)

医師(せんせい)は、自分には使命があると言った。わたしと違って、医師(せんせい)には、やらなきゃいけないことがある。

「……せんせい」

「うん?どうした、茜」


「わたしのからだ、せんせいにあげる」


頭がくらくらして、視界も霞んでいた。でもそれだけは、伝えなきゃいけないと思ったのだ。朦朧とする意識を無理やり繋ぎ止めて、宙を舞う赤色へ、言葉を紡ぐ。


「だから、おねがい。……きえないで、せんせい」


瞼が落ちる。全身から、力が抜けていくのがわかった。まだ、返事を聞いていないのに。

「ーー安心しろ、茜。ちゃあんと聞こえたぜェ?」

「何かの気配が近づいてきやがる、お前はそのまま寝てろ」


「あとは、オレがどうにかしてやるからさァ。ヒ、ヒヒッ、ヒハハハハッ!!」


薄れていく意識の中、医師(せんせい)の声を聞いていた。とても、嬉しそうに笑っていた。



あれは遠い昔の、わたしの記憶。わたしは今も生きている。医師(せんせい)は今も、使命を果たすために戦っている。

「ーーこの日常の均衡を、崩すもの。すべて、取り除かないといけないの」

そうして今日も、わたしはあの人の武器になる。

「お願い。Dr.(せんせい)

【おまけ】


おまけです。キャラメモ書きながら思ったこととか小ネタとか色々。

・キャラメモ総文字数(おまけ抜き)8000字越えですってよ奥さん!!バカの所業ですわ!!
・実はDr.の生前についても設定があるので、書けば書くだけ文字数が増えます。
・重たいもの背負わせてごめんな芹沢さん。でも少女の残酷な運命を直視して曇ってる大人は最高に好きだよ。かわりに茜ちゃんから【親愛】のロイスを取ったからね。
・FHUNのUNはunknownから取ったんですけど、Not FoundでNFでもよかったかなと思った。いつか直すかも。
・斧山さんに関してはたくくんに許可を取りました。1卓目のクライマックス後のDr.と斧山さんの会話が伏線みたいになった。彼と同卓するときは必ず【信頼】でロイスを取ります。
・意図したわけではないんですけど、茜ちゃんの射撃エフェクトが【痛みの水】だの【苦痛の矢】だのなので、茜ちゃんの記憶から生まれてそうとなった。
・Dr.の一人称は、「俺」の時はお医者さんぶってる時、「オレ」の時はほぼ素です。
・Dr.が問答無用で体を乗っ取らないあたり、体の主導権は茜ちゃんにありそう。茜ちゃんが「自分の体はDr.のもの」というスタンスを捨てれば全然Dr.のこと制御できると思う。
・RPをしてて茜ちゃんが思ったより他人を好きになってくれたので、好感度とか信頼値の高い相手をDr.が殺そうとしたら戸惑ってくれるはず。
・Dr.は「残念だな茜。あいつは裏切り者になってしまったんだ」って唆してくるので相手への感情が薄いと普通に殺しちゃう。やり口がナチュラルボーンFH。


テキストカラー:#cc1237

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 0
チーバ、かとゆうボーナス 4
1 10/23 Gray Phantom 20 チーバ おがそニッキたくもりたこ
2 12/4 Kingdom Come 20 チーバ おがそニッキたくもりたこ

チャットパレット