「『ピューディア教会』ってのが今日のターゲット。この山奥にある村を拠点にしてる碌でもない宗教団体」
「なんでも一度踏み入れたら誰も帰ってこないっつ～。さっさと政府で取り締まれよって噂がある……く～っどんな絵面が撮れっか今から楽しみ……うおっ！？」

映像が急に後ろに回り、そこには奇妙な被り物を被ったピンク髪の柔和な女性が立っていた。鼻上に乗ったフィンチ型眼鏡が特徴的だ。

「おや、訪問者の方ですかね？ようこそ、『福魔念』へ。まだ発展途上の村ですが、きっと気に入ってくださいますよ。ささ、どうぞこちらへ」

この数分後。配信は途絶えている。

「みんな久しぶり。俺は心を入れ替えてこの村で生きていくことにしたぜ。今日配信したのはみんなにピューディア教会の良さについて知ってもらいたかったからなんだ。紹介するよ。この方が村の長で教祖の……」

彼の横には、配信が途絶える前に映っていた女性がいた。

信者たちに信仰される神々とは、教祖たる彼女が『雷影の糸』を手繰って動かす巨大な絡繰り群のことである。
超常の力でもって動く彼らの神秘性を素直に崇める信者もいれば、その正体に気づきつつも彼女のもたらす現世利益からそれを指摘しないものまで様々。

基本的に巨大なモノばかりであるが、唯一の例外として彼女によく似た壮年の男女の人形が存在する。

「神になる条件？24時間働けられるかですかね。ブラックなんでやめたほうがいいですよ～。責め苦ですってこんなん」

「幼い娘残してさっさと死んだ人たちのことなんて知らないですよ～っと」

徹頭徹尾現世利益を追求した傀儡教祖。その肉体は実際一部傀儡化されている。
正解の存在しない現世で生きることに疲れた人々に対して、一人一人事細かく指導しつつ衣食住と労働先にコミュニティを与えることで信者を増やしている。
彼女の目標はこの宗教を便利に使い倒して一人でも多くの人間を幸福に導くことだ。

「今はただの因習村ですけど……。やがてキラキラの因習都市に。そしてゆくゆくは因習国家の建立ですよ～！」

なお、普段は大人の姿で応対しているが、この姿は本体が操作する傀儡。
本体は両親から生命維持の為に改造を受けた結果、小学生程の身体で成長が止まっている。