刀に生物無生物問わずに溶かす溶液を垂らして戦う。
遠い敵には斬撃を飛ばして対応する。

{{彼が本気を出すと世界が白黒に切り替わる。
酸性の液体だと思われていたものは、何もかもを飲み込む無の世界そのもの。

この形態に切り替わると、一撃で相手を滅ぼす。
ただし、身体に多大なる負荷がかかるため、頻繁には使用できない。}}

彼がこのような行動をするのには幼少期の経験が挙げられる。
彼は物心がついた時から親はいなかった。
比較的信頼できるおじいさんから聞いた話によると、
親は若くして子供を作ってしまい、育てる気もなかったため、
田舎の親戚に渡したのだが、渡された直後にその親戚が死んでしまった。
そのせいで死神みたいな扱いを受けてしまい、親代わりの人もほとんどいなかった。
また興味をもった記者が死神の子という名目で調査しに来ており、
人に甘えるという行為が出来ない環境にいた。

そのため、初めて会う人とはまず信頼できるかどうか知るため、
言葉遣いなどを確認できるようメールなどを使用させている。

そんな彼にも信頼できる人がいた。
彼女の名前は六白 傷無（むつしろ きずな）。
彼女だけは彼の幼馴染として一緒に遊んでくれた。
彼女だけが対等に接してくれたのだ。

だから彼は彼女に出来るだけ優しく関わっていた。
彼女のことを守れるように自分なりに努力もした。
これからもこの安心した世界が続くように、頑張った。

結果彼らは死んだ。
村のはずれに位置する森に入ったらジャームと出くわしたのだ。
そこで彼は少しでも彼女の逃げる時間を稼ごうとそれに立ち向かった。
彼が稼いだ時間は3秒であった。あまりにも短い時間。
ジャームに投げ飛ばされ、胸から溢れ出す血を手で受け止めながら彼女の方へ眼を向ける。
すでに彼女に首をジャームが掴んでいた。

「！！！！！！」

声にならない声で叫ぶ。
今まで願ったことがないが、それでも祈らざるのを得なかった。
「神様。お願いです。どうかどうか。助けてください。」

そんな一生に一度の願いを想いながら彼の瞳は閉じていった。

それは思わぬ形で叶った。

彼は病院で目を覚ましたのだ。
すぐに胸を確認する。子供ながらでも理解していた。
あの傷で生きているはずがない。どうやったって傷は残るはずだ。
そう思い服を脱いだが、それらしき傷はなにもなかった。
おかしいと思いながら体を確認する。

そんな中、知らない人物が彼の元へ訪れる。
曰く、彼はUGNと呼ばれる組織の人間だという。
君はオーヴァードと呼ばれる存在になったのだと。
知らない世界が頭の中に叩き込まれたが、何とか理解した。

ただ一つ、六白 傷無はどうなったのか。生きているのか。

その問いにUGNは答えた。
生きてはいる。だが、意識が回復していない。
君の会いたい気持ちは分かる。
それでも君には能力の扱いを覚える必要がある。
一度だけ、彼女に会ってから、組織で学んでほしい。

その言葉に従い、彼女の眠る病室へ向かう。
ジャームに襲われた彼女の顔は、とても穏やかな表情をしており、
何も事件など起きていないように思える。
このまま安らかに生きてほしいと感じる。

彼は何か言葉をかけることはなかった。
ただ、どんなことがあっても彼女のことを守れるように、力をつけるべきと決めた。
UGNへ加入はしないが、そこで力をつける。何かあったら要請には応じる。
時間はかかるが、これなら今よりもずっと良くなる。
そんな思いを抱き、UGNの訓練へと参加した。



彼がUGNから帰ってきたときには彼女はいなくなっていた。
理由はすぐに見つかった。病死していたのだ。

彼女の墓はないか探したが、どこにもない。



もう一度、死んだ。

立ち絵の猫クリップは傷無からもらったもの