容姿・経歴・その他メモ

正体不明の詩人ハッカー

　UGNに協力的なハッカー集団「Honey Pod」に所属するハッカーの少女。普段は『澪』の名前で活動している。
　性格としては、奔放かつ高圧的かつ煽り厨。本当は素直に人に優しくしたい。独特の世界観（もはや宗教観）をもち、それに沿って行動しているため、恐らく芯は強い。言葉として出力するものも回りくどい詩的な表現を好む。

　特技及び趣味は野食。特に好きなのはウシガエル。彼女専用の鍋があり、それ以外で野食調理をすると同居人にものすごく怒られる。

　サングラスで素顔を隠している。最近ようやく顔を晒すことに抵抗がなくなってきた。

一人称・口調

一人称：ワタシ（私）
二人称：キミ、苗字呼び捨て
三人称：彼、彼女、名前
口調：中性的、ボーイッシュな話し口調。小馬鹿にしたような発言内容だが、行間を掘削していくと割とまともなアドバイスをしていることが多い。

正体

　“固有世界（ディング・アン・ジッヒ）”のCNで活動していた、元UGNチルドレン。
　両親がオーヴァードであったため、未覚醒の頃からUGNの施設内で暮らしていた。ただし、幼少の頃に他界しているため、親の顔はもう覚えていない。
　8歳の時、暮らしていた施設内でジャームが発生する事件が起き、その折に連鎖的に覚醒。
　純然たるハヌマーンの能力を引き出すための訓練による反動で視力を失ったり、その難儀な性格から孤立しがちであったり、チルドレン達とささいなトラブルを起こしたりはしていたが、順調に訓練課程を経て、チルドレンとして実戦に投入されていた。
　シンドローム由来の聴覚による広域の探索、および、僅かな物音すら起点とする予測不能な攻撃による攪乱といった、表に立たない陰湿な役回りを担っていた。
　それまで特に大きな問題を起こしていなかった彼女だが、1年前、玉野椿との面談を行ったその夜に、突如施設からの脱走を試みる。教官やエージェントによる捜索が行われ、発見間近まで追い込んだが、唐突にその場から姿を消した。何者かの手引きがあったと推測されるが、詳細は不明。

　UGNの公的記録には、確かに「紅亜」という人間は存在する。ただしそこには「覚醒の折にジャーム化し死亡」との記載があるのみだ。

「ワタシが何者かは、キミが感じ取るべきことだ。どうせ、ワタシにとっての千波紅亜と、君にとっての千波紅亜は別物なのだから」

久遠緤との関係

　脱走の際に出会い、手を貸してもらった相手。彼の《無音の空間》と、ストリートチルドレン故の抜け道の知識により、捜索隊から逃げおおせている。
　その時の恩義からか単純な興味からか、何かと危なっかしかったり騙されかける彼の面倒を見ている。枝毛チェックが日課。もはやママである。
　「訳アリ」であることは分かり切っているため、お互いに事情には踏み込んでいない。知っている情報と言えば、「元FHチルドレンだった」「UGNからの脱走チルドレンである」程度のもの。
　最近、彼の大切な人が奇跡的な復活を遂げた。正直複雑な気持ち。

正体（二段底）

　「紅亜」というのは、彼女が暮らしていた施設でのジャーム発生事件を引き起こした張本人、そして、千波の親友だった少女の名である。
　未覚醒ながらUGNの施設内で暮らすという共通点から、彼女らは交友を深めていく。その中で、お互いの髪色から「あやめ」「紅亜」という名を付けあった。親友であり、姉妹のようでもあり、恋人のようでもあった。
　楽しそうに過ごす姿に周囲の人間は全く気が付かなかったが、「紅亜」は病んでいた。その様を、「あやめ」だけは知っていた。
　
　オーヴァードは衝動に襲われるらしい。その衝動は、自分の感情か否か。衝動と一緒に自分の本来の心まで抑え込んではしまわないか？　自分の心はどこにある？　衝動に襲われるワタシは、それを理性で抑えるワタシは、本当にワタシか？　ワタシとは何者だ。

　オーヴァードを血縁に持つ人間は覚醒しやすいという話もある。同じくオーヴァードの親のもとに産まれた彼女は、いつか訪れるかもしれない覚醒に、どうしようもなく怯えていた。そうして、彼女は「あやめ」にひとつの提案をしたのだ。

「自分を見失うくらいなら、今のまま一緒に死なないか？」

突然の、心中の誘い。咄嗟に頷くことは出来なかった。そんな「あやめ」の顔を見て何を感じ取ったのか、「紅亜」はどこからか────恐らく管理の甘かったチルドレンの私室から────持ち出した拳銃で、自分の頭を撃ち抜いた。拳銃自殺である。それが、「紅亜」が最も恐れていたことを最悪の形で引き起こした。ジャーム化である。

「私が何か答えられていれば、こんなことにはならなかった？　ひとりで、こんな姿で死なせてしまうことはなかった？」

その自責の念により、後を追うように覚醒することとなる。
　「千波紅亜」とは、「紅亜」をトレースして生きる「あやめ」である。髪型を彼女に寄せ、ハヌマーンの能力により声を彼女のものにし、性格や思考も彼女を真似た。変えられない顔だけは、サングラスにより隠した。
　全ては、「共に死ぬ」という、あの日裏切ってしまった彼女の願いを今度こそ叶えるため。自分が「紅亜」となることで、自身の死を「自身と紅亜の死」に置き換え、共に終焉を迎えるために。

玉野椿との関係

　前述の通り、「千波紅亜」とは非常に歪な存在である。自我を殺し故人を真似るという、他者の入り込む余地のない閉じられた精神性。常人であっても何かしらの病名を与えられかねない不安定な精神状態。オーヴァードとしても、周囲と溝を作るその状態は不安視されていた。玉野との面談は、それを緩和するためのものであった。
　だが、それは彼女にとって、「千波紅亜」としての人格を殺されるようなものであった。それはひいては、生きる意味を失うのと同義。かつてないほどに怯えてしまった彼女は、UGNにいる限り、自分は「紅亜」にはなれないのだと悟る。結果、脱走の引き金となった。

余談（各種ネーミング由来）

□ディング・アン・ジッヒ（Ding an sich）
　「物自体」を意味するドイツ語。カントによる提唱。生物はそれぞれの認知を通して物を認識し、決して物自体を観測することは出来ないという概念。
　「固有世界」という漢字も合わせ、「認知した事物によって己の世界を構築していく」という千波の価値観の根幹をなす。

□アナムネーシス
　「想起」を意味するラテン語。イデア界に存在する実物からこの世界に沸き上がった影のようなものから、我々は物事を認識しているという概念。おおよそ、ディング・アン・ジッヒと似た意味合いとして使用している。（本来の哲学用語としては異なるものだが）

□リベリオン・オブ・アイデンティティ
　これだけ哲学用語とかではない。「存在証明の反乱」の意。自己の存在を殺している女がこのコンボ名を付けるとはこれ如何に。

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