小さい頃に姉と工事中の近くを散歩していた時の話だ。姉とは少し離れて歩いており、すぐに近寄れない状況だった。
そんな中、外にあった積み重なってる鉄の棒に触りたくなって触れた。そうしたら微妙なバランスで保っていたのか崩れる。
鉄の棒が下へとガラガラと落ちてくるが、カンナのところには来なく、代わりに姉のところへ流れていった。
お互いにそこまで身体能力は高くなく、姉を助けられず鉄の棒の下敷きになってしまった。
幸いなことに近くにいた人が助けてくれたが、自分の浅はかな行動で姉が死にかけたという事実が頭に残る。
この日からカンナが率先して動くことは無くなった。

そうして家に中1人きりで遊ぶようになったカンナを悲しく思ったのか、家族からプレゼントとしてドローンが渡された。
すぐには他の子達とは関わりにいけないだろうから、せめて外の世界に興味が生まれるようにという願いが詰まっていた。
最初は自室でラジコン感覚で動かしていたが、親の願い通りに次第に外に飛ばすようになっていった。
想定外だったのは、思っていたよりカンナがドローンにのめり込んだことだろう。
自分の貯金やお小遣いを最大限に使いドローンを改造するようになった。
カメラを高性能にしたり、ゴーグルと通信機能をつけたり、アームをつけたりなど年齢が上がるごとに機能が追加されていった。
今ではれっきとしたドローン改造オタクである。
最近は比較的明るい性格になってきたが、未だ友達はほとんどおらず、学校でも1人きりが多いようだった。

たまたまカンナが放課後屋上でドローンを飛ばしていた時、少し意識がそれていたのか電池切れで地面に落ちてしまった。
すぐに回収するために下へ向かったカンナだったが、誰かドローンを持っているのが見える。
あまり人と話さないため誰だが分からなかったが、自分の大切なドローンを取り返すため、恐る恐る声をかける。
それが東仙幸音との出会いだった。彼女と出会ったのをきっかけにカンナの世界は広がっていった。
珍しいものだったのだろう。ドローンについて聞いてきた幸音にしどろもどろしながらも答えるカンナ。
そこから世間話をしていくうちにお互いが同じクラスであったことを知る。
その日から幸音から少しずつ話しかけられるようになっていき、1年が過ぎるくらいには遊びに出かけるようになった。

いつからかは分からないがカンナは幸音に対し、友達としてではなく他の感情も一緒にぶつけるようなっていた。
いつも優しくしてくれるからだろうか、話しかけてくれるからだろうか、とにかく理由は沢山あったと思う。
それはカンナにとって初めての経験であり、子供頃の自分から成長する理由になっていた。
今よりも一歩先の関係に移りたいと願う。叶うかは分からないが、最低限想いは伝えたい。だから彼から告白した。
振られても仕方ない。今までの関係が崩れるかもしれないと思いながら返答を待った。
結果は…

・小学3年生の頃家族からドローンを貰った。最新機種らしく長時間飛べるものらしい。よく分かんないけど、ありがとうって言った。
・お母さんに言ってちょっとだけお外に出かけた。ドローンをもっと上まで飛ばしてみたいなって思ったから。
　ぐんぐん上まで行ってすごいなって思った。
・お父さんに言ってお小遣いでドローンにカメラを付けて貰った。ドローンはどんな景色を見てるのか気になったんだ。
　初めてカメラ越しに見た景色はちょっと画質が悪かったけど、すごくきれいだった。
・お姉ちゃんにドローン貸してって言われたけど、貸さなかった。しょんぼりしてて、悪いことしたとは思うんだけど、
　それでまたお姉ちゃんを傷つけてしまう方がもっと嫌だったから。ごめんなさい。

・中学生になって色々と制限が解除された。一番大きいのは自分の判断でお小遣いを自由に使っていいことだ。
　これからドローンを改造していこうと思う。まず手始めにバッテリーの交換からだ。
・久しぶりにお父さん達に怒られた。怒鳴るくらいじゃないけど、中学生になってすぐに5万円も使うのはダメらしい。
　ちょっと嫌な気分になったけど、これからは少しずつやっていくことにする。
　あと想像以上にドローンってお金かかるっぽいからどうにかしてお金を稼ごうと思う。
・外で働けないかと思ったけど、普通に怖いしやめた。なので家族の手伝いをしてお金を稼ぐことにする。
　とりあえず家事とか掃除とかしまくってみよう。ps当たり前のことだから金は渡さんって言われた。
　仕方ないので日々のお小遣いを貯めることにする。

・中学3年生まででで結構な機能が付けられたと思う。遠隔操作に通信機能、リアルタイム撮影や小型のアーム（5kgなら余裕）の他、
　こっちから場所がわかるようにGPS機能やらサーチレーダーとか付けた。バッテリーやエンジンも改造してる。
　中学生でここまで出来るとは思ってなかったから高校生ならもっと色々出来ると思う。
　友達はいないけど、アルバイト出来るならいいやって思える。貯金はあんまりからね。
　高校生デビューとかではないけど、ドローンを通じて人と話せたらとは思う。そんな都合のいい話はないけどね。
　明日は入学式だし、早めに寝ることにする。もっと良いことが起きますように。