16歳の若さにしてUGN支部長の座についたオーヴァード。
表向きは高校に通っているものの、支部の仕事が忙しいためあまりエンジョイできてはいない。
それでも、大切な日常だと思っている。

礼儀正しく何事にも一生懸命。気が弱いように見えて、意思はしっかり持つ側面も。
気性が穏やかなお人好しであることから、誰かに振り回される側の人間であると言える。
誰かに命令することは得意ではなく、支部長と部下というよりは対等な友達同士のような距離感で喋る。
自己肯定感が低い。その理由は過去に起因する。

自らの声に因子を乗せて拡散することでの支援が得意。
言葉には元来微弱ながらも言霊が宿っており、それを増幅することである程度なら事象を操作できる。
特に「歌」は聞き手の感受性を広げ、言霊をより効果的に伝える手段となる。
人に対して前向きな言霊を働かせ、力を引き上げる。彼女が優れた支部長たる能力である。

“泣いた歌姫(クライ・ディーバ)”

16年前、とあるごく一般的な家にごく普通の少女が生まれた。
少女は優しい両親とたくさんの友達に囲まれ、幸せな毎日を過ごしていた。

そんな5歳の誕生日。たっぷり祝ってくれた両親へのお礼に、感謝の気持ちを込めて歌を送った。
少女は歌に夢中になった。とても心地がよく、天にも昇るような気分だった。
歌い終わってようやく周囲を見る。集中していてなんにも見えていなかった。喜んでくれただろうか。
目を開けた少女を待っていたのは、互いに刺し合ったような両親の遺体だった。

少女には天性の力が備わっていた。その声を聴いた者は中枢神経を刺激され、力が少しだけ漲る。
そしてそもそも歌というものは人の心に干渉する力が強い。では彼女が何も考えずに歌うとどうなるか？
両親の遺体はその顛末だ。精神に強い変調をきたした果てに狂暴化し、殺し合ったのだ。

少女の慟哭は町中に響き渡った。悲しみに支配されたその音は、あっという間に一帯に激情の渦を伝播させた。
あわや殺戮が殺戮を呼ぶ大惨事…になる前にワーディングを感知したUGNが駆け付けたのは僥倖だったと言える。
結果として彼女は保護され、死者も出なかった。彼女の両親の他には、だが。

それからは力を制御する訓練に全てを費やした。もう二度とあのようなことを起こさないために。
因子というものが音波に乗って広まり人に感染することで力が引き出される、というメカニズムらしい。
ならば、力を引き出す方向をコントロールできればよいのだ。

そうして力をモノにした彼女は、学校に通いつつも裏ではUGNチルドレンとして活動することとなる。
他人の力に干渉する能力は、前線で戦うエージェントよりも指揮官に向いている。
気が付くと彼女は、UGNの市支部長になっていた。“勝鬨の歌姫(クライ・ディーバ)”とは、なんと皮肉な二つ名か。

今でも忘れることができないのは、11年前の惨劇だ。こんな力など要らないと何度も思った。
歌うことが、声を出すことすらも怖くなった。力の意味を、自分が生きている価値を探し続けた。

しかし、この忌むべき力が役に立つのならば存分に役立ててやる。あの時殺した100倍、1000倍の人を助けてやる。
そうすることが両親へのせめてもの償いであると信じているから。そうでなければ自分を許せないから。
だから彼女は歌うのだ。天に向かって、想いよ届けと高らかに。

めちゃくちゃ普通の支援型。特に運用で気をつけることはない。

《援護の風》《ウィンドブレス》
《領域の盾》
《子羊の歌》