挽歌[ばんか]
人の死を悼む詩歌。挽詩。哀悼あいとう歌。

門身家での葬送、その催事のみが彼女の出る幕であった。

それだけが、私のお仕事であったのですが...

アポストル　オブ　エレジー

ご冥福をお祈り申し上げます
誠に残念です
あの人は精一杯生き延びました

そんな言葉が飛び交う葬儀会場の片隅。
門身　巳徒は誰と話すでもなくただその時を待ち続ける。
挽歌を死者へ捧げるその時を。

巳徒の家系は門身家において一族の葬儀を担当するものであった。
彼女は十代前半から葬儀に駆り出され、自身の役割に疑問を抱くことも無く「辞めたい」などと言い出すことも無く淡々とのしかかる役割を果たし続けていた。

そんな彼女にも大切な人間がいた。
親よりも自分を気にかけ、向き合い続けてくれていた年の離れた兄である。
彼女の心の支えとも言える存在であった。

しかし、ある時兄は突然交通事故で亡くなってしまった。
彼女は肉親であろうと関係なくいつもの通り葬儀にて挽歌を歌い切った。その声にも、瞳にも一切の曇りなく彼女は役割を全うした。

葬儀が終わり、自由な時間が与えられ、外へ出た
その日は大雨であったが、彼女は家の大きな庭で雨に打たれながら物思いに耽っていた。
遠くで雷が鳴っている。

兄さん...どうして、兄さんがこんな目に合わなきゃいけなかったのです？
ただ優しくて、一緒にいてくれる、悪いことなんてひとつもなッ

雷が鳴る。

人間の体は基本的に電気を通す「導体」であり、そのおかげで脳と体の間で情報が送受信され、筋肉が電気刺激を受けて体の動きを作り出す。
人間を含む生き物は体に電気が流れないと生きていくことができないが、雷のようにあまりに強い電気が流れることは体に大きなダメージを与えることになる。
それこそ、即死してしまうほどの。
電圧は数千万〜2億ボルト、電流は数万〜数十万アンペアで、電力に換算すると平均で900ギガワット。

あぁ、なんと不運なことか。彼女は雷に打たれたしまった。
少女の、ただの人間のか弱い身が耐えられるわけもなく彼女の命は儚く散った。

そして、オーヴァードとしての覚醒により蘇った。
もちろんここは門身家である。優れたオーヴァードとなるための身体改造は表に出ない子供のほぼ全員に施されており、彼女も例外ではなかった。

なん...です？...これ...

巳徒が戻らないことを案じた家族の一人が庭を確認すると、巳徒はその身に雷を纏っていた。

情報が処理できず、錯乱したまま巳徒は自分を探しに来た家族に向けて雷を飛ばしてしまった。
直撃することはなく、縮み上がった家族を見て巳徒は駆け出した。

こんなもの、知らない
こんなもの、いらない
それよりも、兄さんを

錯綜した意識のまま、知らない路地に倒れこむ。と同時に無意識にワーディングを展開。
先に彼女を見つけたのはFHの構成員であった。
しかし、回収は間に合わない。
既に夜帳(とばり)は降りていた。ここからは彼の領域である。

その後、彼女はUGNに所属しチルドレンとして、自身を助けてくれたもう一人のチルドレンと共にバディとして任務を続けている。

至ってシンプルである。
兄は門身家にとって邪魔な存在であった。思考、行動、何から何まで邪魔でしかなかった。
門身家の人間としては珍しく、まともな人間であった。だから消された。

門身家にも護身としてオーヴァードを置こうという意見が出た。
確実に家の外に出すことの少ない巳徒が選ばれた。
何処から協力を取り付けたのかブラックドッグシンドロームを持つオーヴァードに雷を操らせた。
結果、オーヴァードとして覚醒するまでは良かったが、回収にはあっさりと失敗した。
しかし、門身家は早くも次の護身用オーヴァードを作り出そうとしている。

尚、彼女が知っているのはこの全てではなく「兄と自分の死は仕組まれたものであった」という部分だけである。

アメリカの海洋大気庁によれば、1年で人が雷に打たれる確率はおよそ77万分の1から100万分の1とされている。
では彼女は不運にも雷に打たれてしまった、とはいかない。

必然であることなんて“奴ら”以外の誰が思うだろうか。

あの家の者には必ず報いを

侵蝕率が高まっていくと雷が黄金から赤黒く変色し、攻撃性が増していく。

性格：落ち着きの過ぎた女の子、暗すぎはしない、真面目に頑張りすぎず
一人称：私
好き：静かな歌
嫌い：UGNにいる人以外の門身家
趣味：挽歌の研鑽
見た目：毛先が金の青い髪、同じく青い眼、戦闘中は眼が金へと変わる、帽子をよく被ってる
戦闘スタイル：雷の槍メインで手持ち、投擲、自律化、ついで火力増幅に爆発や更なる雷

お馴染み門身家
UGN提供用ではなく護身用オーヴァードとなる予定だった
事実を知ってから門身家のことがすごく嫌い。

門身　式・令・澪の兄姉弟関係には介入しておらず、たまに話をする程度。門身家とは割り切っており「少し近しい仕事仲間」のような認識。
式とは情報交換を良く行っている。令には攻撃範囲の広さから回避訓練を、澪とは休日を共に過ごすなど関係は良好。

雷に打たれたためかブラックドッグを、雷の威力に近づくためかソラリスを、と２つのシンドロームが発現している。

「なのです」

私は私に与えられた新しいお仕事をあの人と一緒に行うのみなのです―――門身　式との情報交換にて

ミカヅチ使う
門身家増やす
兄さんはそのうちメモリーへ

おわり

https://picrew.me/ja/image_maker/2089566