高校生らしくない着崩した学生服。
　少し高めの身長と、短髪の黒髪。

ボクシングクラブでアルバイトする高校生。
活発だが、少し粗暴。
父のことを大切に思っており、いつか育ててくれた恩返しがしたいと思っている。
記憶もないような、赤子の頃にレネゲイドウイルスの実験に被検体として関わっていた。

　12月23日、日本にて生まれる。2250gの痩せた赤子だった。彼の両親は、彼を育てる余裕もないほどに貧困だった。だから、彼を実験体として研究機関に受け渡した。彼の被検体ナンバーは「AO」だった。実験体の提供は多額の報酬を与えられ、それは彼の両親も例外ではなかった。

　かつて、レネゲイドウィルスの解明を目的とした実験が発足された。実験には多くの人物が関り、彼の両親は赤子をその実験に提供した。彼は人為的にレネゲイドウィルスを投与された。元々、人のウィルス許容量や覚醒率を調べるためのその実験は、彼のような犠牲を以てして成り立っていたのだ。実験はおおむね成功していた。ウィルス解明はより進み、理解も深められた。

　それが神の逆鱗に触れたのだろう。実験体の一体が暴走した。暴走した個体により、研究施設は壊滅し、研究者の多くが死亡した。そんな中、彼は一人の研究者と施設から逃亡していた。その研究者が現在の彼の父親役である「出葉暁達（いずはあきたつ）」だ。出葉は彼と共に日本各地を転々としながら生活している。現在、出葉は地方の食堂に就職し、彼はその近くのボクシングクラブでアルバイトとして、体の丈夫さを生かしながら働いている。

　彼自身に実験の記憶は無い。赤子の頃に一年ほど行われた実験だっため、彼は自身が被検体であったことも、ましてや実験内容のことも覚えていない。ただ、記憶の奥に無自覚ながら違和感を感じている。それが確信に変わることはおそらくないだろう。

　干泥蒼（もとどろあお）と名付けられた。青々とした草花も、その成長には土泥が必要であるという考えから、地道な努力や犠牲が元にあって初めて成果が生まれる。彼もそんな泥のような努力を惜しまない人物であって欲しいとの願いが込められた。
苗字が出葉暁達と別なのは、父役である彼の罪悪感からである。自分のような、他者を犠牲にするような人物ではなく、地道ながらも誰も傷付けず、努力を続ける人であってほしいと願い、苗字を別にした。