容姿・経歴・その他メモ

夢を見たんだ。
それは、未来でも過去でもない、全く別の世界線の物語だ。
その世界では、決して良いことばかりではない数々の偶然が重なって、けど最後には成就させたんだ。
ユートピアセルの悲願ってヤツをさ。
こんなクソッたれな街で、ヤクや暴力に頼って仮初の"楽園"に満足したユートピアじゃない。本当の理想郷を掴み取ったんだ。
俺はそれを、夢という形でまざまざと見せつけられた。

なあ、あんた……インフィニティ・コードって知ってるか。

コードウェル博士が追い求めているという、レネゲイドの根源――或いは万能の願望器。
俺が見た……というより、見せ付けられたあの夢。別世界を見せることが出来る能力なんて、俺は知らない。
多分、そいつの仕業なんだろうって思ってる。

……はは、違ぇ違ぇ。
別に俺は、インフィニティ・コードを探してるってわけじゃない。
そんなのは、根源を目指す研究者の領分で、俺には無関係だ。
大事なのはそこじゃない。あの夢を、俺が見ることが出来たってことの方さ。
必要なものは、分かってる。答えは、あの世界に見出した。

だから俺は、このどん詰まりの世界線を覆す。

――別の世界で親父が成し遂げたように、な。

俺は佐原陽。この大気圏の雲間を晴らす、夜明けの男だ。
コードネームは、そうだな。いつか、こう名乗ろうか。

マスター・ユートピア、と。

佐原・陽。その名を聞いて、ユートピアセルとの関係を想起出来るものは多くない。
ユートピアセルを束ねるのは、マスター・アルカディア。
理想郷の名を冠する男であると、アトモスフィアに住まう殆どの者がそう考えているからだ。
マスター・アルカディア、マスター・エデン、マスター・ニライカナイ――そしてマスター・シャンバラ。
グランドスラムとかつて呼ばれた四人のマスターエージェントによる共同体としての体裁は、既に崩れたあとだ。
特にマスター・シャンバラはその存在すらもユートピアセルから忘れ去られている男で、
ましてやその本名を佐原・郷と知る者などこの世に数十人と居ないだろう。
――目指した楽園は、成らなかった。代わりに遺されたのは、このアトモスフィアというはりぼての理想郷。
それで良いと思っている者は、きっと楽園の四公(グランドスラム)には存在しない。
けれど、どうにか出来ると思っている者も、存在しない。

答えを得た、佐原・陽という少年を除いては。

陽がその"世界"を知った理由は、未だ分からないけれど。理由などなくとも、目指す理想は分かった。

父譲りの柳のようなカリスマ性と、その胸に強い志を秘して。
どこか謎めいた雰囲気を宿すその少年は、世界変革の時を待ってこの地で暗躍を続けている。
さて――この煮詰まったマグマのような大気圏を、派手に噴火させたいと願う同志は居るだろうか。

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