どこで生まれたのかも、親の顔も知らず、物心ついた時から街の片隅で野良犬のように生きていた
ゴミを漁り、落ちている物を拾い食べる、空腹の毎日
生きている意味も分からない。いや、もう死んでいるのかもしれない
誰も味方が居ない、ずっと独り。

街の中の風景、私みたいな薄汚れた服じゃなく綺麗で暖かい服を着ている皆。
私みたいなお金が無い訳では無く美味しそうな食べ物を買って食べている皆。
それが私には眩しく見える…私もその中に、風景に入りたい。

彼女とは仕事で知り合った
他人は好きになれないけど、何故か心を許せそうな…いや許してるんだろう自分がいる
何かと頼る時もあるし、飯も一緒に食べたりもする
私にはいないけど姉がいたら多分私が妹でこういう気持ちなのかな、分からないけど

街で野垂れ死にしなかったのはこのおかげ
自分でも何がなんなのか分からないけど、頼らないと死んでしまうじゃない…
一人で生きてきた、信じられるのは私自身だけなんだ

私以外の全てはやっぱり敵なんだ
この世は私に優しくない、私にだけ優しくない
全てが嫌い、憎い、壊れてしまえと思うほどに
壊れてしまえ、死んでしまえ、全て
お前たちの泣き叫ぶ悲鳴こそ私の快楽だ
生を実感させろ、お前たちの命で

生まれから独りで街の薄汚れた路地裏で必死に生きていた
誰も声をかけられないどころか、街で倒れていると憂さ晴らしや八つ当たりで私を蹴ってくる
何で生きてるんだろう、死んでしまえば楽になれるのに
でもそれをしなかった、自分から溢れる何かが私に生きる力をくれたからだ
正体は分からないけど私の力だ、生きる為の力だ、自分しか信じられないんだ
そんな時、転機が訪れた
私に声をかけてくる女がいた、三嶋冨美と言うらしい。私を見て不憫に思い助けて、私の今までを真剣に聞いてくれたし泣いてくれた。
女は私に食べ物をくれた、飲み物をくれた、服をくれた、住む場所をくれた
いつの日か私の力はその女や世界の役に、自分以外の為に使うようになった。自分の為にしか使わなかったのに
私を助けてくれた三嶋冨美も3年前レネゲイド災害で亡くなっている
私はこんな世界嫌いだし、人間も嫌い、オーヴァードとかそんなのも嫌いだし何もかも嫌い
今では私にも仕事があり、同僚なんかもいるけど、ぶっちゃけ面倒くさい
颯海凪月はよく喋る、私と真逆なタイプ。なのに、だからこそかも？しれないけど、よく会話をする

もう十分に生きた、拾われ生き延びた命
早く寿命が来て生涯が終わればいいのに
それか戦いで死ぬのでもいいな
死に場所なんざ何処だっていい
三嶋冨美もいないこの世界に未練はない

灼熱の赤い髪に長身
3年前から世界を見ることすら嫌になり両の目を閉ざしている(失ってていいなら視力もない)