『反射』の喪失

　脳構造を変化させたことによって発生した症状の中で最も深刻なもの。チカコの脳と身体の一切は無意識下では動かない。一般的な人間は無意識に呼吸などをしているが、チカコは常に呼吸を意識していなければならない。また、嬉しくても笑うことはないし、悲しくても涙を流すことはない。また、内臓の活動も意識して制御しなければならない。

意識喪失の不能

　チカコは何があっても意識を失うことがない。ただし、『意識を失っているも同然』の状態にはなる。例えば、睡眠中は自己の脳疲労処理をするのに全ての意識を使わなければならないため、全く動かず呼吸だけしているように見える。意識を失うほどの衝撃を受けた場合も同様である。以上の二点により、チカコが精神的に休息できる瞬間は存在しない。

成長の途絶

　二度と身長は伸びない。より正確に表現するならば、遺伝子に刻まれた『成長予想図』が改変され、これ以上の成長は発生しなくなった。

母乳

　出産経験が無いにも関わらず、チカコの乳房からは母乳が出る。ただしうまく作れてはいないようで、血が混じって赤みがかった色で出る。飲用にあたって特に問題は無い。

感覚器の異常

　一部の感覚神経が性感帯（正式な用語ではないが、ここでは刺激を与えるとドーパミンやオキシトシンが分泌される感覚神経のことを指す）に変化する。また、一般的に女性器含めた性感帯は刺激が強すぎると単に痛みになるが、チカコの場合刺激の強さに比例して上限なく快楽物質が生成される。（ただし、反射を喪失しているため喘ぎ声を上げたり身をよじるなどの反応はしない）主に変化している部位は以下の通り。
舌
掌全体
太腿の内側
首全体
耳およびその内側
尺骨神経
臀部全体

月経周期の変化

　月経周期が90日程に変化している。

指紋の変化

　一般的な人間の指紋は渦を巻くような模様だが、チカコの指紋は横に流れるような波状の模様になっている。

食事量の増加

　エネルギー効率が極めて悪く、通常の人間の1.8倍の食事量が必要になる。

声に対する執着

　人間の声に強い執着を示す。特に音声の発生源がチカコの耳に近ければ近いほど喜ぶ。実験の影響か、本人の性格かはデータ不足。しかし、保管中の他の個体も似たような傾向が存在することが確認されている。

生活上の諸障害

　緊張状態でない場合の集中力が著しく低い。忘れ物が多かったり、ひどく衝動的だったりする。これらの症状は一般的な注意欠陥多動性障害と酷似している。