ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

黒鉄 琴音 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

千里穿つ炯眼(ホークアイ)黒鉄 琴音(くろがね ことね)

プレイヤー:アーク

いらっしゃい。ようさん遊んでってなー」

年齢
22歳
性別
星座
乙女座
身長
170cm
体重
55kg
血液型
AB型
ワークス
UGN支部長B
カヴァー
駄菓子屋店主
ブリード
クロスブリード
シンドローム
ノイマン
ウロボロス
HP最大値
32
常備化ポイント
12
財産ポイント
0
行動値
12
戦闘移動
17
全力移動
34

経験点

消費
+30
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 蒼羽っちゅう妹がおるんよ。本部務めの優秀な子やで。
姉妹
経験 まぁまぁ、そんな大したことやあらへんわ。ウチに出来ることやっただけやで。
大勝利
邂逅 ちょっとやらかしたときに助けてくれたんや、感謝せんとな。
恩人
覚醒 侵蝕値 妹を助けるのが姉の役目やからね。
渇望 17
衝動 侵蝕値 ああうん……いやな?妹ニウムが不足しててな
飢餓 14
その他の修正6
侵蝕率基本値37

能力値

肉体1 感覚1 精神10 社会1
シンドローム0+1 シンドローム0+1 シンドローム3+2 シンドローム1+0
ワークス ワークス ワークス1 ワークス
成長 成長 成長 成長
その他修正 その他修正 その他修正4 その他修正
白兵 射撃7 RC1 交渉
回避 知覚 意志1 調達5
知識:レネゲイド2 情報:UGN2
情報:裏社会1

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 天才 分かっても出来なきゃ何にもならんからな。そりゃ努力もしたで。
Dロイス 実験体 待遇は悪く無かったし、目的も分かるで。せやけど、やり方は間違っとった。
親友(シナリオロイス) マティアス 友情 隔意 ……せやなぁ。ウチにとっては今でも親友や。
黒鉄 蒼羽 幸福感 不安

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
インスピレーション 3 メジャーアクション 自動成功 自身 至近 2
コンバットシステム〈射撃〉 3 メジャーアクション
リアクション
〈射撃〉 対決 3
組み合わせた判定のダイス+[Lv+1]D
守りの弾 1 リアクション 〈射撃〉 効果参照 自身 至近 5
射撃武器使用時のみ使用可能 20m以内のキャラクターが攻撃の達成値を難易度として判定を行う 成功時、その攻撃は失敗となる
天才 3 オートアクション 自動成功 自身 至近 1D10 Dロイス
達成値+10 SL[Lv]回
エクスマキナ 2 オートアクション 効果参照 対決 4 リミット
コンバットシステムと組み合わせた判定の達成値+10 SL[Lv]回
勝利の女神 3 オートアクション 自動成功 単体 視界 4 100%
達成値+[Lv*3] R1回
原初の黒:時の棺 1 オートアクション 自動成功 単体 視界 7 100%
構造看破 0 メジャーアクション
プロファイリング 0 メジャーアクション

コンボ

均衡する黒鉄の天秤(リアクティブ・バランサー)

組み合わせ
守りの弾コンバットシステムエクスマキナ
タイミング
リアクション
技能
射撃
難易度
対決
対象
単体
射程
20m
侵蝕値
12
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
1+4
10
7+10
-
100%以上
1+5
10
7+10
-

「無駄な動きが多すぎやで?」
 
__達人の剣閃も、不可視の魔弾も、降りかかる天災すら、その弾頭の前では無意味となる。

 技の起こりから全ての攻撃の軌道を理解し、最も効果的な急所に銃弾を撃ち込むことで、全てを相殺する。曰く、その程度出来なきゃ話にならん、とのこと。

模倣技術・蒼の魔術師(イミテーション・“ソルシエール”)

組み合わせ
勝利の女神
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
5
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%~159%
12
160%~
15

「手ぇ貸したる。よう聞きぃ。」

__その言の葉は魔法のごとく、聞き入れた者に無限の可能性をもたらす。

 対象の影に干渉して自身の思考を一部共有、及びちょっとした細工をすることで能力上限を引き上げるという、彼女が初めて手にしたオーヴァードっぽい技。覚醒したウロボロスシンドロームに投影の性質があったことと、実際にこの技術でずっとサポートされ続けていた経験で、レネゲイドコントロールが壊滅的な彼女でも扱えている。つまり感染源は当然妹。曰く、自分が使うときは頭の中の蒼羽が助けてくれるんよ、とのこと。

虚像・千里穿つ炯眼(ヴァーチュアル・“ホークアイ”)

組み合わせ
原初の黒:時の棺
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
7
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

「見えとるで、隙だらけや」

__指一本動かせば命を撃ち抜かれる。さりとて動かねども結末は……なーんてな、そんなビビんなや

 牽制の弾丸で動きを封じ、死角から急所を撃ち抜く。彼女にとっての"攻撃"は全てこれであり技ですらない。しかし、今の彼女の役割は効率的に敵を倒すことでは無いので、引き金を引かず視線と僅かな動作のみで敵を金縛りにする技術に昇華させた。敵には数mmでも動けば死にかねない弾幕が見える……らしい。曰く、今は弾丸無駄に出来んし、仮にも支部長やからな、後進のための成長の糧は必要やろ、とのこと。

天賦の解答者(アンサー・トーカー)

組み合わせ
インスピレーション
タイミング
メジャーアクション
技能
難易度
自動成功
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
2
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

「こんだけ状況が揃っとるんや、間違いないで」

__予知では無く、既知でも無い。ただ未来が彼女の思考に追いついていないだけだ。

 いやな、分かっちゃうんやからしゃーないやろ?

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
ボルトアクションライフル 10 射撃 〈射撃〉 0 8 - 200m
一般アイテム常備化経験点種別技能解説
思い出の一品 2

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 25 135 0 0 160 0/160
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

『Follow your heart.』ハンドアウト

PC3

シナリオロイス:マティアス 推奨感情 P:懐旧/N:憐憫

カヴァー/ワークス:任意/UGNN市支部長

 キミはUGNN市支部の支部長だ。キミは“ラストエゾート”マティアスの親友だが、彼は遺産回収任務の際、UGNを裏切り、君の元を去った。
 その後、日常を揺るがす不祥事を起こしたキミは中枢派側からの秘書“監視員(ベビーシッター)” リディア・エイゼンホルンに行動を監視されており、自由に行動できない日々が続いている。
 出張中、日本支部でキミは霧谷雄吾に声をかけられ、N市にマティアスが潜伏しているという情報を教えてくれる。その情報を知ったキミは今後の予定をキャンセルしN市へと戻るのだった。
 

リバースハンドアウト

 

ウチ以外見たらあかんで?

「ええよ。それがアンタの選択なら、ウチはそれを尊重したる。」

公開条件:情報項目“最後の殉教者”の開示後

 瑠璃と契約した遺産をマティアスは強制的に奪い取った。しかし、キミは彼を止めなかった。遺産“黄金の歯車”は死者によく似た擬体を所持者が産みだせることが出来る遺産だ。遺産の所有者がUGNにどのように使われるのか。君も理解してしまったからである。
 彼はキミに瑠璃を頼むと言い残して去った。彼の離脱後、キミはUGNの存在意義について考えるようになった。そして、瑠璃を非人道的な実験の実験体にしようとした中枢評議員の一人を殴ってしまう。
 霧谷雄吾やテレーズ・ブルムの協力を得て日本支部に来ることになったが、キミはUGN上層部から監視されており、常に身の振る舞いに気をつけなければならない状況に置かれている。

三行キャラ説

前科一犯
関西弁
シスコン

キャラ設定

 現UGNN市支部長にして、元UGN本部エージェント。とある事件をきっかけとしてUGN中枢評議会と敵対し、一時は拘束されていたが、とある人物たちの尽力により、監視員付きの支部長として更生の機会を与えられた。本部エージェント時代に培った狙撃の技術は健在だが、今は仲間を守ることを第一としており、その銃口が敵に向くことはあまりない。暇なときは店を開いて駄菓子屋をしている。珍しいものの取り扱いや、10円で遊べる機体も置いてあり、幅広い年齢層に人気で繁盛しているらしい。
 マティアスと瑠璃とは昔馴染みであり、ことあるごとに自宅に招いては自分の妹と共に食卓を囲むほどの仲だった。そのような経緯があるためか、瑠璃の元にはお見舞いとして良く顔を出している。一方でマティアスの話となると、普段の饒舌さは鳴りを潜め、あまり語ろうとしない。
 好きなものは妹の料理とゲーム全般、苦手なものは濃い味付けの料理と家事全般。左遷されて以降は妹と離れ離れになり、食生活は悲惨なものになっている。余談だが妹から離れて数日でお揃いのウロボロスシンドロームに目覚めた。
イメージソング:「Red fraction」 

RPに関する情報

・一人称→「ウチ」
・二人称→基本的に名前の呼び捨て、尊敬する相手には「〜さん」
・天性のナチュラル煽りスト。好意的な相手には無意識に、嫌いな相手には意識的に
・今の食事は、凝ったものが売っているスーパーで箱買いした関西風のカップ麺。三食全て、である
・PLの力量が問題視されるので似非関西弁になるかもしれんな
・支部長室は意外にも整理されている……監視員のおかげで
・妹の名前は黒鉄蒼羽。コードネームは蒼の魔術師(ソルシエール)
・姉妹でFHに売られ、実験施設で育った過去を持つ
・最大のRP指針かつ彼女のトップシークレット
Dロイス《天才》はほぼ生来の能力であり、オーヴァードに覚醒して変化したのは思考速度のみ。FHなどという組織に売られたのもそれで気味悪がられたが故である。そして彼女がオーヴァードとして非才となった理由もレネゲイドを本質を理解し、そう願ったからである。幸にも不幸にも彼女の片割れが才を願っていたが故に、立場が逆転してしまったのだが

詳細情報

保有能力

 あらゆる物事を理解する万能の天才。逆に言えば持ちうるものはそれだけである。オーヴァードとしては基本であるコンセントレイトすら扱えず、覚醒前と比較して身体能力も向上していないことも含め、致命的な非才と言える。しかし、彼女はそれでもめげずにひたすら技術を磨いた。それはひとえに妹と同じ場所に立ち、守るため。彼女があらゆる武器の中で銃の技術を極めたのは、その弾丸が届きうるものであれば干渉出来るから。その結果、彼女は強者の集う本部の中でも一握りの存在となった。故に彼女は天性の天才であると共に努力の天才と言える。

戦闘スタイル

 行動を先読みして最適な位置に牽制の弾丸を"置く"ことで敵を金縛りにし、致命の一撃を撃ち込むカウンタースタイルを得意としていた。現在は敵の攻撃を見てから、弾丸一発で全て撃ち落とすという曲芸じみた戦法を主としているが、これには守ることを目的としているという理由に加えて、もう一つ切実な理由がある。給料が下がって弾丸を湯水のように使えなくなったという金銭的なものだ。どちらの理由が大きかったのかは彼女のみ知る、ということしておこう。
 また、本部エージェント時代は分割思考と妹のサポートもあり、敵の数すら問題としなかったが、N市支部長に左遷されてからは実戦とは離れてしまい、多少勘が鈍ってしまっている。

“監視員”の音声記録(という名の関西弁練習用SS)
訓示、忠告、或いは__

「自分勝手な思い込みと相手を思った想い、境界線は曖昧や。何がなんでも貫き通すことが間違いなこともあれば、踏みにじっても通さなあかんこともある。」
「ウチはな、その境界線が見えん奴のことをオーヴァードちゅうんやと思っとる。間違いを犯すんは当然や。けど、一回振り向けりゃ相手がどんな顔しとるか分かるやろ?"それが見えてりゃ"戻って来れるやん?」
「覚えとけ。ここにおる全員、人間でも無けりゃ化物(オーヴァード)でも無い半端者(ダブルクロス)や。だからこそ、目ぇ逸らすな。自分を、相手を顧みろ。以上や。」

 

N市支部長 黒鉄琴音

 「うがああああああ!!!」
 ある日の深夜、とある一戸建ての建物の二階にそんな声が響く。
 「予算が……予算が少なすぎるやろ!ウチの一年分の戦闘用機材すら買えんってどういうことやねん!」
 彼女の名前は黒鉄琴音。つい先日UGNN市支部長として転属、もとい左遷されたその人である。更生期間として与えられた期限は無期限。提示されたミッションは人材育成と日常の守護。当初は更なる難題も突きつけられるはずだったが、日常を揺るがした罪による左遷であれば不適では、との提言によって大幅に減刑された形となっている。
 そして彼女が今まさに直面している問題である予算の話であるが、N市支部が扱える予算は日本国内でも割と平均的な額だ。つまりは問題があるのは彼女の方である。というのも彼女は壊滅的にレネゲイドコントロールが苦手なため、扱う弾丸には対オーヴァード用専用弾核を用いている。ちなみに普通のオーヴァードは自信のエフェクトによって様々な属性を付与するのが一般的だ。閑話休題、その弾丸の値段は普通の弾丸の約100倍、そして彼女はそれをバカスカ使う、湯水のように。今までその実力と実績から無償で与えられていたが、左遷された今では望むべくもない。
 「うー、あー……。一応手持ちは大分余っとるけどなぁ……それでも4、5回戦ったらのうなるで。ウチより強い奴はようさんおるし、もしもの時のためにコツコツ貯めてくしかないなぁ。何で金やなくて弾貯めなあかんねん。」
 疲れた顔で思案しながら立てた目標は以下の三つとなった。一つ、支部のエージェントを鍛え直すこと。二つ、人員不足解消に向けての戦力の拡張。そして三つ目は__
 「ウチ以外には無理させとうないし、何より不真面目やと思われんよう上手く理由付け出来んとあかん。人集まって話聞けて、何より競合のない店なぁ……せや!」
 予算不足を補うための表の仕事、駄菓子屋の経営である。

 

“オーバーローダー”と“ホークアイ”

 N市の新体制が始まってから1年弱、地下訓練所の休憩スペースに彼女はいた。隣には今しがた訓練を終えたエージェントが座っている。
 「おつかれさん……って、何や不満気な表情しよって。何かあるならゆーてみぃ。」
 「え、いや……その、"彼"のことなんですが……」
 目線の先にいるのは“過負荷”と呼ばれる青年のエージェント。その特異な経歴もさることながら、支部長から訓練の際、目標を課せられることも稀である。
 「あー、アイツなぁ。分かるやろ?だってアイツ、強いもん。」
 「ですね。けど支部長……」
 「分かるわ。何もゆーこと無いほどなんかってことやろ?その通りやで。多分アイツ、何回も死線潜っとるわ。そういう奴にはウチとは違うもん見えとるかもしれんしな、下手な手出しせんようにしとるんよ。まぁ今回は、ちょっと口出ししたんやけどな。」
 「私たちではまだまだ、ということでしょうか?」
 「……そらな。まぁその向上心に免じて、一つええこと教えたるわ。実戦経験は実戦でしか積めん、ちゅーけど、人間には便利なことに反射ってもんがあってな。どんな状況でも、身に染みた行動ってのは出来るもんなんや。頼りすぎはアカンけどな。せやから全員には言っとらんし。まぁまずはアイツぐらい動けることを目指してみぃ。」
 「__はい。」
 そう言って、再び訓練に向かったエージェントを見送り、彼女は青年に目線を向ける。
 「上手いもんやなぁ。そろそろ出来るんとちゃうか?」
 彼女が口出ししたこと。それは数日前の話である。N市ではエージェントに支給される武器の他、新たな人員の適正を見るために必要な大量の武器が保管された武器庫がある。そこからいくつかの武器を見繕っていた青年に向けて放った言葉は__
 「もったいないやろ!?」
 「いや、前々から思っとんやけどな?……ん?いやいや、金の話とちゃう……ことも無いんやけど」
 「時間と能力がもったいないなってな。結構しんどいやろ、武器を自分の側に置いて寝るの。気ぃ休まらんし、メンテナンスも時間かかるやん?それに、それで"戻って来れんくなった奴"ようさん知っとるし。アンタ、ウチと違ってレネゲイドコントロール得意なんやから、自分で作ってみんか?」
 その言葉に青年は、そうだね。と返し、翌日から試してみる運びとなったのだった。

 

琴音と蒼羽

 「おバカ!!!」
 この日、UGNN市支部には来客があった。UGN本部エージェント“蒼の魔術師”こと、黒鉄蒼羽である。
 「ご……ごめんて」
 縮こまりながら謝罪を続ける姉は、1年前この市の支部長として左遷されたのは前述の通りだが、今怒られている理由は別にあり……
 「ずーーーっと聞いてたよね?ちゃんと三食健康的な食事出来てるのって。」
 そう、今彼女たちがいる支部長室には、大量に積まれたカップ麺とそのゴミが散乱していた。原因は数日前、報告のために本部へ一時帰還した“監視員”が不在だからである。片付けぐらい自分でしろという話ではあるが。
 「いやぁ……ちゃんと三食食っとる……あ」
 「さん……しょく?え?じゃあ何?うちのバカ姉は1年間三食カップ麺を食べ続けてたの?」
 ボロボロ零れる衝撃の事実に蒼羽のレネゲイドは活性化し、部屋の中は凄まじい緊張感に包まれる。
 「ちょ、ちがっ、間違った__」
 「問答無用っ!!!」
 瞬間、眩い光と共に、おおよそ人体から発せられるとは思えない轟音を響かせて琴音は意識を手放した。

・・・

 「ん……あ、あれ?ウチは……」
 「おはよう、お姉ちゃん。」
 来客用のソファーで目を覚ました彼女の目には、明らかに不機嫌な妹の顔が映る。
 「あはは、ほら知っとるやろ?ウチって家事が__」
 「ここの支部のデータは見せてもらったからね?」
 ぽすっと琴音の胸に資料が置かれる。主に支出などに関わるデータである。
 「ここの設備もみたけどさ、明らかに予算で賄いきれるものじゃないよね?どこから出してるの?」
 「そりゃー交渉……」
 「ど こ か ら 出 し て る の ?」
 「ぽ、ポケットマネーからです……」
 ついさっき感じた記憶のある圧力に屈したか、言いづらそうにしながらも、そう答えた。
 「はぁ〜……やっぱり。お姉ちゃんっていつもそうだよね。他の人のことなんだと思ってるのかな?」
 「……しゃーないやん。支部長なんやから、皆の面倒みたらんと。」
 
 その言葉に、呆れと本気の不安を含んだ目線を向ける蒼羽。彼女は、目の前の姉の性質を嫌というほど知っている。昔からそうなのだ、世話焼きで甲斐性の塊。オーヴァードに覚醒するよりもっと前、些細なことで約束した妹を守るという誓いを守るため、オーヴァードとしての才能の壁を意地と執念で越えて見せるくらいに。
 「他の人には無理するなって言うくせに、自分ばっかり無理して、しかも隠すのだけは上手いんだから。そんなんじゃいつか……」
 だからこそ心配なのだ。何事も無いように、オーヴァードとしての才に恵まれているといえる自分に平気な顔で着いて来ていた姉のことが。もし、昔みたいな人間がやっていいわけが無い努力の仕方を今もしているのだとしたら__
 「大丈夫やって、蒼羽がおればウチは帰ってこれるから。」
 なんて心配は、どこかに飛んでいってしまった。まだ目の前の姉は、妹を守るという誓いを覚えているし、自分の前から消えてしまうことはないと確信出来てしまうから。
 「__。……ほんっっっとタチ悪い!性悪!バカ姉!」
 「あっはっは!そない褒めんなって」
 「褒めてない!全く……たまには甘えなよ、私だけにじゃなくてさ。」
 「アカンよ。頼れんかもって少しでも思われた奴にトップは務まらん。支部長になった以上は、皆の前では完全無欠やないとな。」
 姉に足りないものは妹への気遣いだけだ、と彼女は思う。本部でN市支部長の情報を聞かされる度に、もしかして別人になったのか、と疑うような日々だったのだ。さもありなん。
 
 「お姉ちゃんはどこ目指してるのさ……。」
 「んー……霧谷さん?」
 空気が変わったことを感じたのか、彼女は面識のある化け物みたいな人間の名前を挙げる。UGN日本支部長霧谷雄吾、毎日のスケジュールが分刻みであるにもかかわらず、自分の趣味までこなす、ある意味琴音とは対極の存在かもしれない。
 「無謀すぎ。あの人ノイマンじゃないの詐欺だよ。」
 「分かるわ。まぁ、ウチは蒼羽も大概やと思うけどな。こない少ない時間でよう調べるわ。」
 「あんまり本部エージェント様をなめないでよね。」
 「……くくっ」
 「ふふっ」
 「「あはははは!!」」
 会話を続けるうちに張り詰めた空気も霧散し、懐かしい雰囲気にどちらともなく笑いが込み上げる。
 「ねぇ、お姉ちゃん。久しぶりに遊ぼうよ。」
 「え、けど……」
 「仕事ってことにしておいたからさ。」
 「いや行動が速いな!?……まぁせっかくのお誘いやし、そこまでしてもらったなら断れんなぁ。」
 そう言って立ち上がる琴音の正面に蒼羽が立つ。それは久しぶりの儀式、常に非日常に追われていた彼女達が、その必要が無くなってもずっと続けていた、心を日常に戻すために合言葉。
 「おかえり、お姉ちゃん。」
 「ただいま、蒼羽。」
 そうして、その日、彼女たちはつかの間の日常を謳歌した。

 

“ホークアイ”

 「んあ?ウチのやっとったこと教えて欲しい?」
 それは就任直後のN市支部。新設されたばかりの地下訓練所でのお話。いざ訓練を始めようとする支部長に対し、とあるエージェントが発した言葉が発端であった。というのも、つい先日N市に侵攻したFHセルとの戦いにおいて、彼女が最前線でほとんどの仕事をこなしてしまったことで、焦りや危機感が生まれたのだろう。言われたことだけやっていてもそのレベルまで達せるのか、という不安がありありと伝わってきた。とはいえ彼女は数週間前までUGNの本部でも指折りのエージェントだったのだ。理屈でも感情でも、そんなレベル求めるなと突っぱねるのは簡単である。しかし__
 「あー……ね。まぁその気持ちは痛いほど分かる。せやな、じゃあ少しだけ昔話しよか。」
 ここで突き放せばそれはそれで問題だ。信頼関係を上手く構築出来なければ支部全体としての戦力は大きく落ちてしまう。そんな事情もあり、先日の戦いは自身の力を示す、言わばデモンストレーションだった。自身の起こした事件が極秘扱いとはいえ、この年齢で支部長として左遷されれば実力を疑われるのもやむなしであるからだ。何より、きっと目の前のエージェントには守りたいと強く願う日常があって、強さを求めているのだろうと分かってしまったから。
 「ウチもオーヴァードになりたての頃はなーんも出来んかったんよ。」
 「ノイマンやから色々分かる。分かるけどそれだけや、技術も無ければ思考に体も追いつかんかった。」
 彼女はとあるきっかけでオーヴァードに覚醒し、同じく覚醒した妹とともにFHの実験施設に引き渡された。そこではとある実験のためのデータ収集と戦闘員としての訓練が行われていた。とはいえ、戦闘訓練の方は年齢的にも基礎体力作りのようなものしか行っていなかったが。FHでは基本的には非人道的な実験が繰り返されているのだが、その施設は一風変わっており、外界との接触が絶たれていること以外は人を人として扱うような場所であった。まぁ用が済めばそうでない場所に送り出すあたり、善とは程遠いのだが。しかし、そんな場所での生活は3年ほどで終わった。何者かによって実験施設そのものが文字通り"消え去った"からである。そして、事態を確かめに来たFHエージェントたちによって、同じく残された実験体たちは一人、また一人と連れ去られた。姉妹はそんな最悪の事態を避け続け、ついに事件を聞きつけて来たUGNの本部エージェントに保護されたのだった。
 「それでめでたしめでたしなら良かったんやけどな。ウチにとっちゃある意味地獄の始まりやった。」
 UGNチルドレンとしての訓練が始まって数ヶ月。様々な方向で力を示す妹とは対照的に、彼女は基本的なレネゲイドコントロールも出来ず、武器の扱い以外の戦闘技術の成長も遅れていた。その問題はどちらも、自身の感染したシンドロームであるノイマンに起因している。彼女のレネゲイドのほとんどが物事の理解という方向に振り切っているため、一般的なオーヴァードに比べて汎用的に扱えないこと。そして"理解"は常に良いものであるとは限らないこと。特に戦闘においては常に、一つ行動を誤れば、思うように体が動かせなくなれば、一瞬でも反応が遅れれば即、死ぬという恐怖心を他とは比にならないレベルで感じ続けることになる。そんな状況で、的確な行動を取り続けられるには彼女の経験値は足りなすぎた。そんな彼女に通達されたのは後方支援役としての課程に移ることだった。しかし彼女はそれを呑めない理由があった。意地とも言うが。次は結果を残す、とそれを固辞し、教官も最後の機会を与えた。
 「で、何したと思う?」
 「FHの戦闘訓練で体力はまぁまぁついとったからな。後はどうやって思考速度を上げて、恐怖を克服するかってことやで?」
 「ん?そうやな。恐怖の克服なんてホントの意味じゃ出来へんで。せやから、"恐怖をトリガーに冷静になること"を体に覚えさせたんよ。」
 UGN本部の訓練施設には様々なシチュエーションを想定したフィールドがある。その中の市街戦、特に工場跡地を想定したフィールドに彼女は立っていた。手に持つのは一丁のライフル。
 「跳弾、ってあるやろ?あれでな、自分の急所目掛けて撃つんよ。何発もな。」
 「まぁ結構楽に聞こえるやろ?実際楽やったで、最初の一、二回はな。何回も跳ね返ると弾頭の潰れた場所やら、空中で弾同士が擦れて変わった弾道やらの推測で頭おかしくなるで?」
 「まぁけど、訓練と違って動き止めたらホンマに死ぬでな。動くしかないんよ。」
 彼女に言わせれば、射撃技術、思考速度、回避技術、何より冷静にならなければ死ぬ状況に自分を追い込むことによる恐怖の克服で一石四鳥ということである。そんな頭のおかしいことを毎日続けた成果か、ギリギリではあったが彼女は今の課程に残ることを認められた。
 「それでもギリギリだった。まぁ蒼羽……ウチの妹が優秀なのもあったんかもしれんけどな。」
 「オーヴァード同士の戦いで、結局一番重要なんはレネゲイドや。ウチはそん中で、普通の銃と弾で勝負せなアカン。つまりな、優秀なんかじゃ全然足りんかった。恐怖の克服なんてもんはスタートラインやったっちゅうことや。」
 そう。彼女には武器が足りなかった。たとえ彼女の弾丸が百発百中でも、それが必殺足りえなければ強引に押し切られてしまう。しかし彼女にはそれを解決する手段は存在しなかった。
 「ウチにはそっちの才能は無かったんでな。結局、持てるもん全部伸ばしてくしかないやん?」
 「時間はまたもらったでな。弾ようさん持ってって数時間撃ちっぱなししたり、溜まってきた弾頭全部撃ち返して避けてみたり、とりあえず考えられること全部試しとったわ。」
 「で、辿り着いたんがこの前見せたアレってわけや。」
 先日のFHセルとの戦いの際、彼女が見せたのは、戦いというには程遠い何かであった。二、三発の弾丸が跳弾しながら複数の敵を硬直させ、止まった敵から一発で仕留めていく。圧巻だったのは敵のリーダーとの一騎打ちで、ただの一回も攻撃を許さず、完封して見せた。
 「まぁあの弾は特別製やから、ちと話は違うんやけど。」
 「普通の弾でもな?意外と難しいんやで、急所に飛んでくる弾に突っ込むんは。」
 彼女がUGN本部でも噂のエージェントになったとき、彼女が身に付けていた技術は、他とは一線を画すものだった。何しろ彼女がいれば相手は満足な行動すら起こせないのだから、日常を守ることを標榜するUGNにとっては、単独行動では不安が残る程度の問題、それも武器の性能次第で解決できるものならば、問題にすらならない。
 「で、あの特訓の話やけど、正直キツいで。いや、簡単には出来るんやけどな?気持ちの問題やねん。」
 「言ってまえば無理矢理自分の心歪ませるようなもんやしな。あと常に限界ギリギリやないと意味無いし。」
 「それに、大切な人がおるんなら……泣かせてまうかもしれんしなぁ」
 以前、一度だけ、彼女がこの特訓で死にかけたことがあった。それはとある任務の後である。その任務でとあるマスターエージェントと交戦し、勝負はつかなかったものの、任務自体には失敗してしまい、同行していた妹も軽傷を負った。もっと強くならなければいけない、その僅かな焦りからか特訓の最中、彼女自身が引いた限界の一線を踏み越えてしまったのだ。その結果は全治一ヶ月の重症。なんとか致命傷は避けたものの、身体中銃創まみれの酷い有様になってしまった。そして、その怪我とともに、自身のこれまで行っていた特訓も妹に知られてしまったのである。
 「あんときはな、大変やったで。一日中引っ付いて離れんようになったり、治っても部屋から出してもらえんかったりな。」
 「何とか説得して許してもらえたけど……多分あれが普通の反応なんやろな。」
 間を置き、呆然としているエージェントの肩に手を乗せて、彼女は伝える。
 「せやから、よぉ考えて、"それでも"って覚悟があるなら、もう一度ウチのとこに来ぃ。」

 

余談:轟音、そして__(仮題:お姉ちゃん's)

 

ん、お客さん?楽しい話はしとらんし、お茶も出せへんけど、入るのは自由やで?

 ようここまで来たな。ウチもここまで出来るとは思わんかったけどね。多分何言っとるか分からんと思うけど、勝手に喋らせてもらうでな、適当に聞き流してもええし、忠告として真剣に聞いてもええ。まず前提やけど、周りがじぶんの心配すんの分からんねん。だってそうやろ?無理も通せば道理になるっちゅーし、その通し方も分かっとる。じぶんにしてみりゃ出来んこと以外、全部簡単なことに出来ると思っとる。
 オーケー。問題あらへんな。あ、そうや。家族は生きとるか?うんうん、そうか。まぁ一番心配向けてくれる存在やから、その辺話してくで。まず人の心はじぶんには読めん。ノイマンシンドロームをもってしても、や。分かるなら分かるように思うだけやな。人の心はパンドラの箱。全てがつまっとる。感情やら思いやら、何種類ぐらいあるんやろな?最後の最期やなきゃ底も見れん。けど、もしかしたら見たことはあるけど、それが底に残るものだと知らんだけかもしれん。
 なんか脱線してもうたか?まぁええわ、時間は山ほどある。人の心が読めんって話だったな。周りのやつらが言う方法もじぶんには使えへんのが一番の問題やな。ほら、人の立場になって〜ってやつや。ノイマンなら分かるやろ?最適な行動がな。自分でなんとか出来る、とか任せなアカン、とか。んー……?ああ、そうやで。これ、戦ってるときの話や。じぶんは論理で動ける。けど、感情で動く子もおる、その感情による行動はじぶんには読めんのやって話やで。もしかして分かっとらんかった?ウチより大分頭の回り悪いんちゃう?調子悪いか?
 さて、と。いやぁ困るよなぁ、じぶんは心配かけとるとは思ってへんのに深刻な顔させてまうのは。だってアレって最低限やろ?じぶんかて一緒の時間は作りたいし、切り詰めに切り詰めた結果がアレ。なんやけど……じぶんがな、どんだけ心配かけてんのか知らんかった。そやろ?じゃなきゃ怒られた後も続けへんって。やっぱアカンのよ、それを放っておいちゃ。
 じぶんの妹な。出来る子で優秀な子や、一番近い存在で通じあってるのはホンマやし、以心伝心もお手の物や。けど、覚えとけ。ウチの心はウチしか分からんし、あの子の心はあの子しか知らん。そんで心の、感情の爆発は無意識に体を動かしてまう。……例えば、最低限の犠牲で、左腕一本くれてやるつもりで突っ込んだら、一番失いたくないもん失ったりな?論理で人は動かん、感情で動くんやって初めて思い知ったわ。
 まぁこんなとこやな。どうや?
 「なんや知らんかったんか?まぁそれはええか。けど、カッコつけたかっただけなのによう言うわ。」
 知っとったんか?……まぁええか。けどそれはブーメランやで?
 「せやな。結局言い訳したいだけやろ?守るつもりが守られたってな。」
 ……上手くやりぃ。ウチらが思っとるより重い子やで?
 「それは知らんかったわ。」
 まぁ、ウチらも大概やけどな。
 「最後に質問ええか?」
 正義なんてもんは無かったで。
 「そか。で?」
 諦めとる訳無いやろ。またな。
 「二度とごめんや。」

 

余談2:記録無し(仮題:平和の担い手とお姉ちゃん)

 

あー……見ちまったなら黙っててな?

 「やぁ」
 「うげ……」
 それはUGNN市中心部、とある休日の昼下がりの一幕である。はたから見れば金髪の女子高生が大学生程の女性に絡みに行ったように見えるが、二人は存外、親しい友人のような会話を繰り広げていた。
 「いやぁ久しぶりだねぇ。元気してた?一発どう?」
 「せーへんわっ!こちとら喧嘩買う金もないんや!」
 「あはは、知ってる。何か奢ったげようか?」
 「……アンタなぁ。今日はそういう気分なんか?」
 「さっき結構遊んで来たからね。」
 「まぁ都合ええわ。アンタとはやり合いたくないでな。」
 「……負けるのが怖いのかい?」
 「分かってて挑発しとるやろ?」
 「バレた。で、お姉ちゃんがこんな時間にふらふらしてるなんてどうしたん?」
 「アンタの姉になった覚えは無いで。ちゃーんと仕事や。……アンタ、駄菓子とか興味あるか?」
 「ああ、表稼業か。そりゃあーしは現役JKだし、そういうのには目が無いよ?」
 「うそつけ。まぁええわ、ちょっと構ったるから着いて来ぃ。」
 「流石琴ねぇ話が分かる。」
 「何でウチだけ姉呼び多いねん。」
 「いやぁ、キミ相手なら一番効くでしょ?」
 「だから煽んなやっ!」

・・・

 「大漁大漁♪どう、参考にはなったかな?」
 「まぁな。……あんま食いすぎると太るで。」
 少女は両手に袋を下げ、駄菓子をつまみながら彼女の隣を歩いていた。
 「いや、その話の振り方は無理矢理過ぎん?」
 「……せやな。」
 「ボクの前でそんな隙だらけでいいのかな?UGNN市支部長殿?」
 「……まぁ義理は通さなあかんでな。礼は言っとくで、ありがとな。」
 それはあまりにこの場にそぐわない言葉だった。しかし、目の前の少女は、やっと言ったか、といった表情を浮かべていた。
 「なんや、驚かんのやな。」
 「まぁ、知ってたし?」
 「いつから?」
 「あの施設が消えるちょっと前から。」
 「……そりゃどういう__」
 「それは秘密。近くにいたから思考が及んじゃっただけ。安心していいよ、今は出来ないから。」
 「……。」
 「それより、何でそう言ったのかは教えて欲しいな。キミの口から。」
 誰もいない公園のベンチに座り、彼女は先日見た不思議な夢のことを話す。自分であって自分でないような存在との邂逅。唯一感じた違いの理由は明白で__
 「アンタに負けたこと無いと思うねん、そいつは。せやから、最後にならんと、自分の自分が生んだ歪みに気付かへんかった。」
 「へぇ、面白い話。ていうか、あの勝負は引き分けでしょ。けど、キミとそんな関係ない私が分岐点になるなんてね。まぁいくつかヤバめな可能性は潰した気がするけど、その中にあったのかもしれないかな。」
 「何の話や?」
 「平行世界、とか。」
 「……えらいこと言いよるな。まぁアンタは気分屋やしおかしくないか。」
 「いや、あの日だけはボクがあの場所にいないのはおかしいな。」
 「じゃあ何で?」
 「それはほら__あーしの方が生まれたの後だったし、みたいな?」
 「____。」
 日が沈むまであと少し。一瞬の静寂の後、少女が口を開く。
 「でさ、あーしのことどうこうしようとしないのってどうして?ちょっと警戒はしてたけど、マジで遊んでくれただけだったし。」
 「アンタに下手に構うとこっちの被害増えんねん。それにアンタ、あんときも、今回も、ウチ以外に手ぇ出さんかったでな。お情けや。」
 「それは複雑だなー。まぁあーしにはいつも付き合ってくれる少年がいるからいいけどさ。」
 「逆に聞くけど、アンタならウチのやる気出させる方法知っとるやろ?させんけど。なんでやらんのや?」
 「妹ちゃんのこと?いやぁ、だってキミ__居た方が強くなるタイプでしょ、カッコつけのお姉ちゃん?」
 「……はっ、それもそうやな。」
 二人は立ち上がり、それぞれ逆の方向に歩み始め__
 「次会う時も、戦場や無いことを祈っとるで、“マスターピース”」
 「次会う時は、戦場であることを祈ってるよ、“ホークアイ”」
 両者対照的な別れの挨拶をしたのであった。

 

余談3:“ホークアイ”と“マスターピース”

 

どんな戦いやったかって?せやなぁ__

 通達された任務はとあるFHセルの撃滅に伴い、逃走経路の一部を遮断すること、及び敵本隊が当の逃走経路を使用した際に全滅させることであった。
 「こっちの準備は終わったよ、お姉ちゃん。」
 「ウチも準備万端や。後はこっちに来るかどうかやけど。」
 そんな会話をしてからものの数分。彼女たちが待ち伏せている暗がりに、一人の少女が現れた。
 「……データには無いね。多分、敵だけど。」
 「ウチが行く。サポートは任せたで。」
 ワーディングはかなりの広範囲に強めに張っている。一般人はもとより、無関係のオーヴァードに立ち入られると作戦行動に支障をきたす恐れがあるからだ。そんな危険な場所を涼しい顔をして歩いて来る人物がいるのならば、最大限の警戒をして然るべきだろう。
 「動くな。ここは行き止まりやで。」
 周囲の環境の変化、目の前の少女の行動、全てを見逃さないよう銃口を向ける。
 「知ってるよ。だからこじ開けに来た。友達のためにね。」
 少女は隙なく重心を落とす。漫画やゲームで良く見るような居合いの体勢。
 (こいつ、ヤバいわ。……クソ、蒼羽に伝える暇も無いか。)
 既に両者は間合いの中。言葉を発するために吐いた息一つが致命傷になりかねない。そして彼女がそう判断した理由が__
 ("銃撃つのに居合いの構え"やと?こういう初見殺しが一番厄介や。)
 見える限りの情報での推測ではそこまでが限界。彼女の能力でも不確定要素が多ければ、一つの答えを出すのは不可能だ。そして、経験上そういう手合い相手に楽に勝てた試しは無い。
 瞬間、一つの閃光が走る。先手を取ったのは少女。最小限の動きで避け、カウンターを図る彼女が目にしたのは信じられない光景だった。
 (一発……やない!六発!?ふっざけんなや!)
 (銃の形状はSAA。っちゅーことはファニングショットか。六発なんて聞いたことないけどな。)
 ギリギリで横に飛び退いた彼女の脳内は急速に冷えていく。目の前の脅威に対する怯えや恐怖。彼女が冷静になるとはそういうことを意味する。
 (リロード……クソ、何丁持っとんねん。)
 終わりの見えない六連射の嵐。どうやら目の前の少女に装弾数の概念は存在しないらしい。そして後ろで響いているのは絶えない跳弾の音。
 (後ろには蒼羽もおる。せやから__)
 「全部まとめて叩き返したるわ!」
 一発、二発。少女の撃つ弾丸に掠らせるように放ち、空中で軌道を変えた弾丸は少女に向けて飛んでいく。少女は銃撃を止めて回避行動をとるが、そこに飛んできたのは__
 「チェックや。」
 少女が放ち、空中で跳ね返り続けていた弾丸の全て。一手、少女の手を止めさせるための牽制。二手、軌道を変えた弾丸による跳弾の主導権を握ること。三手、あえて与えた回避場所への誘導。そして四手。しかし違えず放った弾丸は、少女の一発によって弾き返された。そして周囲にはカランカランと役目を終えた弾頭が地面に落ちる音が響く。
 「……最後だけ五連射やったか。」
 「詰めの一手、だったんだけどねぇ。参ったね、本当に。」
 僅か数秒の攻防が終わり、緊張感がほんの少し緩む。互いに簡単に終わらせられるような相手ではない、と判断したからだ。
 「参った参った。いやぁ、楽しくなってきちゃった♪」
 「付き合う気は無いでな。」
 「……名前は?」
 「“ホークアイ”や。」
 「私は“マスターピース”。後ろの彼女は?」
 「……。」
 「あはは、そんな怖い顔しないでよ。キミと戦る方が楽しそうだし手出しはしない。」
 「何考えとるんや。」
 「今は友だちを逃がすこと。あと、キミと戦うこと。ボクじゃあっちの彼女と相性悪そうだし、今度機会があればかな。」
 「安心せぇ、そんなもん未来永劫ないで。」
 そう言って彼女が放った弾丸が再開の合図。その先は特に語ることはない。威力は“マスターピース”が上、しかし技術では“ホークアイ”に軍配が上がる。どちらも攻め切ることが出来ない以上は千日手となるのは当然の結果と言える。しかし、だ。
 「お姉ちゃん!来るよ!」
 敵のセルリーダーを含む、エージェント多数の本隊。それは均衡を崩すのには十分過ぎる戦力だった。彼女はこの状況を想定していなかった訳では無い。蒼羽を控えさせ一体一で戦っていたのは自分たちの本命はそちらだから。
 (けど、この状況は話が違うんよ。生存確率と成功確率、どっちも50%やな。つまり__)
 負ければ死ぬ。自分と対等な相手を抑えつつ敵本隊を殲滅する。

 

 

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