嘘である。
あいつは魔法少女ではない。災厄である。
吾輩はしがない楽器であった。しかし愛されていた。
昔のご主人にはいつも丁寧に整備してもらったものだ。
そして決まった時間に優しく穏やかな力加減で演奏してくれた。
今でも鮮明に思い出せる。
聞く人を穏やかに、心を落ち着かせる素晴らしい演奏だ、
私という楽器は美しい演奏をする人に弾かれるために生まれたのだ。

そんな時間も長くはなく、ご主人は死んでしまわれた。
酷く悲しみに暮れたものだが、すぐに気持ちを切り替えたのだ。
「いつか、新しい、君に相応しい人に出会えるように」
この言葉を信じて、保管されることを選んだのだ。
そうしてたまたまあいつと出会ったのだ。

超絶ぐっすり眠っている時に、
くっっっっっっっっっそへたっぴ！！！！な演奏で。

我が楽器生で一番と言っても過言ではない。
酷すぎて絶叫したわ。
ここまで楽器下手に演奏できる？
なんか目の前にいたやつ泡噴いてたで？
ぐっすり眠っちゃったじゃないよ？永眠しちゃうよ？
やばいよ？まじ危機感持った方がいいよまじで。
しかも我、ご主人が着ていた服を奏者に着れるようにしていたんだけど、
びっくりしすぎて勢いできせちゃった結果、魔法少女グッズと勘違いしてるし。
思い出の服を自分のお母さんに渡して少女服に変わった時は泣いたよ我。

出来れば一刻も早く逃げたいのだが、恐らくそんな瞬間を見せればやばい演奏してくるだろう。
私の全力の演奏聞けば気持ちも変わるよとかいって弾いてくるとか怖すぎる。
怖すぎてあいつに全力出させないようにしてるもん。
とりあえず我が全力で頑張れば怖い思いしなくて済む。
だから頼む。全力で演奏するなよ。辛すぎて絶叫しちゃうから。