履歴
名前:〈比較〉の獣
シンドローム:ウロボロス
所業:人類の行く末を剪定し、過去現在未来全てにおいて地球上で最も多く人類を殺戮し続ける
愛:人の営みを尊び、善悪すらも肯定し、遍く可能性を尊重する
固有スキル:ネガ・セレクト
「実はね、今も迷っているんだ。
『過去』『現在』『未来』。どれが良くて、どれがより多くの人が「救われる」のだろうか、ってね」
「馬鹿馬鹿しいと思うかい?だけどね、これは私の問いなんだ」
「―――私には、〈比較〉と言う役割があるからね」
―――かつて、人を愛した獣がいた。
人を愛した故に、人の感情を鋭敏に受け取ってしまう。
特に、人の死に関しては人の感情がより頻発に感受した。
生きる事。死ぬ事。残す事。託す事。
生きれた事。死ねた事。残された事。託された事。
そして、それらの狭間にあるものの事。
全てが合わさった人の営み。紡がれていく人理。何と素晴らしい事だろう。
誇っていい人間よ。この世界は斯くも美しい。
しかし、それ故に考えてしまう。人が死んだと言う事実に。
…いや、こう言うべきだろう。私はずっと「イフ」を考えているのだと。
誰かが言っていた。歴史に「イフ」はタブーだと。それはそこで必死に生きて来た人達に失礼だから、と。
誰かが言っていた。この今、一瞬を「大切」にすべきだと。それはここで生きて居る人が持つ権利だから、と。
誰かが言っていた。たかだかこの先数十年の平和に「希望」するのだと。それはいつか生きる人にとってきっと重要な事だから、と。
獣は考える。歴史は「真実」によって生を「証明」し、今は「権利」によって生を「実感」し、未来は「想像」によって生を「形成」していく。
そうして思いは受け継がれていき、人理が紡がれていく。これが素晴らしい事に変わりはしないが、獣はずっと「イフ」を捨てきれないのだ。
別段歴史にのみ唱えたいのではない。全てにだ。
思ってしまったのだ。夢見てしまったのだ。
―――ならば、この気持ちは抑えられないだろう?
ティンダロスとして皆で必死に生きた日々。「助けて」と言った子供を守り切り、感謝された思い出。笑いあって、普通の生活を送れる幸せ。
UGNに潜入し(ティンダロスとしてUGNの情報を入手する事で作戦を練りやすくする為)、色々な人に話を聞く。親友に裏切られた者は過去を懐かしくは思うが、戻りたいとは思わない。多忙過ぎて過労死しそうな者も悔いは数多あるが、その目は常に前を見据えている。若くして重責を任せられた者は普通の子供の生活を羨む時もあれども、これでよかったと胸を張って言い退けた。
―――これは、今を必死に生き、明日(ミライ)を望む、希望を捨てない者達である。
ムゲン団(仮)(名前決まってないから仮でムゲン団と置いてる)として過去を変えようと皆話し合う。皆の過去を聴き、あの時に戻れたら、と思い立つ。
かつて自身が守り切れなかった人々。未来があった者達を思う。
それよりも過去、幾度目かの〈比較〉の時。嗚呼、素晴らしい選択だな、と思えたあの時。
―――これは、明日を捨て、亡くしてしまった過去(ピース)を探し求める者達である。
この幸せな時がいつまでも続いたら、と願う人々。或いは離れたくない、と変わらぬ関係を望む人々。それは罪なのだろうか?
永遠を持たない人々だからこそ願う永遠がある。それは過去に縋る者達であれ。
ムゲン団で共に過ごした仲間達。ある種、同一の目標を持ち、支えあい、充実している者達である。
―――これは、過去のように変わらぬものを求め、今(セツナ)を永遠にしようとする者達ある。
・設定
幾度目かの現界。数え切れぬ程この獣はこの世に出現している。
そして、その度に人類の行く末を剪定してきた。
過去か、今か、未来か。それらを剪定する事で「人類を最も多く殺戮しながら」「人類の進む道を整えている」のである。
それは何百年と言った単位かも知れないし、この刹那の先に再び行われるかもしれない。
そうして獣は人類を愛するが故に何度も顕現している。
人類を愛しているからこそ、人類を管理し、人類の代わりに大量殺戮をしている。
大量殺戮とは、人類が未来に進むとき、その選択に応じて必ず「進まなかった未来」を殺さなければならない。それが大量殺戮であり、剪定と言う事である。
今迄はこれでよかった。進む道は未来だけであり、人類は常に先に進み続ける生き物だからである。その時々に未来を「比較」し、剪定していった。
しかしイレギュラーが起きてしまう。それは「人類のレネゲイドウイルス」の会得である。
獣のように元々がレネゲイドから生まれたものであり、獣の他にも古代種なるモノはいた。獣にとって、今更人類が力を得ようと、ただ生き物が進化したと同じに思うくらいであった。
正確に言えば、イレギュラーなのは「力の使い方」であった。かつてタイムマシンの研究をした人類が有名だが、大なり小なり「時を超える」事をしようとする人類が増え始めたのである。
獣にはわかっていたのである。「レネゲイドウイルス」を上手く使えば過去も未来も変えられ、果ては恒久の今さえも手に入ることも。しかし愛すべき人類は明日にしか進めなかったから、獣が無理矢理過去に連れ戻しても愛すべき人類は喜ばないだろうと考えていた。
だが、出来るようになれば話は別だ。そうなると獣はその役割においてしなければいけない。
―――過去・現在・未来の〈比較〉を。